男性が家庭進出!10月スタート「産後パパ育休制度」と育休中の本音

育休法の改正によって10月からスタートする「産後パパ育休制度」。より柔軟にパパが育休を取れる道が開かれます。ユニセフ(国連児童基金)は、2021年に発表した報告書で日本の育休制度を「世界1位」と評価しています。しかし、身近に、育休を取得した男性はまだ少ないのが実情ではないでしょうか。

制度は素晴らしいのに、認知や活用に遅れが出ている原因の一つは、経験者の生の声に触れる機会が少ないことだと思います。「類は友を呼ぶ」と言いますが、保育園を運営する会社で働いている夫の周りには育休を取った多様なパパがいて、日頃からたくさんの情報交換をしているようです。

男性育休は、「取る」「取らない」の単純な2択ではなく、「取り方」にも様々な形があります。夫は、今回は「半育休」のような形で、少しだけ仕事をしながら1年間の育休を取得しています。そこで、夫に、男性育休の実態などをインタビューしました。

男性育休のリアル

――男性は育休をどれくらい取ればいい?

家庭や職場の状況によるので、「絶対」や「正解」はないけど、2~3か月取れると、夫婦が共同で子育てをしていく意識の基礎ができると思います。取得期間を迷っている人は、チャート図「パパ育休チャート」(©️ikumado)などを活用してみるのもいいのでは。

職場の内外で似たような境遇の人を見つけ、実際にパパ育休を取得した話を聞いてみたり、「生の声」に触れてみたりすると、モチベーションがぐっと高まります。身近なところにいなくても、SNSでパパ育休の経験を発信している人は多いし、相談すると答えてくれる人もいるので、ぜひ情報収集してみてほしいです。

――育休を取る前にやっておいて良かったことは?

男性の育休の経験者が口をそろえて話すのは、「職場への報告は早ければ早いに越したことがない」ということ。女性の場合は、妊婦健診や見た目の変化で周りが気づいてくれるけど、男性の場合は自分から発信しないと、当然、周りは気づきません。

早々に報告を行うことで、仕事の引き継ぎや、後任の調整などに向けて上司や人事も動くことができるので、できれば出産の半年前(安定期に入る頃)、遅くとも2~3か月前には報告するのが良いと思います。

まだ男性が育休を取得した事例がない会社の場合、上司に伝えても、なかなか動いてもらえない、という経験をしている人も。その場合は、自ら制度を調べて人事部門と調整するなど、能動的なアクションも必要になるので、早めに動き出すことをお勧めします。

――「産後パパ育休」のポイントや「半育休」って?

何か月も職場を離れることなんて無理……と感じている方は多いと思います。でも、今年10月から施行される「産後パパ育休」は、制度的にかなり柔軟な設計になっています。

従来の育児休業とは別に、子どもが生まれてから8週間以内に4週間まで取得可能で、2回に分けて取得することもできるのがポイント。申告は、通常の育休が「原則1か月前までに」が、「2週間前まででOK」なので、多忙な方でも活用しやすいはずです。

また、法律で定められた制度ではありませんが、育休を取りながら、一定程度、働くことができる「半育休」と呼ばれる選択肢もあります。引き継ぎが難しい属人的な業務や、緊急対応が求められる業務を担っている人は、この「半育休」を活用することによって、月10日80時間以内の範囲で働くことができます。

育児休業給付金は、過去6か月間の平均給与の67%(半年以降は50%)と定められていますが、育休中に働くことで80%までは給与として受け取ることができるのは、経済的にも助かりますよね。

※一定時間を上回ると育休の給付金が削減されるので、しっかり制度の内容を理解した上で、労使で丁寧な合意を行う必要があります。(参考)育児休業中の就労について(厚労省)

僕の場合は、月20時間程度、リモートワーク中心で働いています。例えば、職員のメンターのような相談の業務をやったり、定期的に職場の打ち合わせに出たり。第1子の時と比べて責任あるポジションを担っているので、完全に仕事から離れない今回の育休の取り方は、職場と自分の双方にとって利点が多いと感じています。

職場側のメリットは、属人的な仕事や、引き継ぎが難しい案件に関して、育休中の社員に継続対応をお願いできること。僕は、会社全体の動きを継続してキャッチアップできるので、復職がスムーズにできると想像しています。

とはいえ、基本は「育休中」なので、家庭のことを最優先できるよう、バランスの取れた働き方を試行錯誤中。それに、限られた時間の中で働くと決めているので、もう少し深く関わりたいと思ったプロジェクトについてもグッと気持ちを抑えて我慢するのが大変ですね。

――出産直後に気を付けたことは?

産後2か月は「産褥さんじょく期」と言われる大事な期間(産後、女性の心身がゆっくり回復していく期間)だから、育休を「取ってよかった」というより「取らなければいけない期間だったな」という感覚に近いかな。

産後、ママの体力はすぐに戻らないし、ホルモンバランスの変化もあるから、気分が落ち込みやすくなることもあります。赤ちゃんが夜中に何度も起きたり、2~3時間おきに授乳をしたり、とにかく睡眠不足との戦いです。

我が家では、母乳とミルクの混合にしたから、ママに母乳をあげてもらっている間に僕がミルクを調乳。バトンタッチすることで1分でも多くママに休んでもらうことを心がけて動いていました。

働きながらサポートできることも多々あると思うけど、育休を取っていることで、ママも気を使わずに、安心して家事・育児を全て任せてもらえたのではないかな。

――日々、どんなことをしていますか。

「授乳以外、全てやる」マインドでやっています。「名もなき家事」と言われるような細かい部分にも目を向けて取り組むきっかけになりました。

とはいえ、全て完璧にできるわけではないし、至らぬ点も多々ある。産後の女性は、周囲に対して攻撃的になりやすい時期でもあるから、小さなことで衝突することもありました。僕も寝不足で気持ちに余裕がないけど、「これはホルモンのせいだから、仕方ないね」と思えると、無用な対立を避けられました。

――パートナーシップの観点から、育休を取って良かったと思うことは?

産後は、一生涯にわたるパートナーシップの土台を築くための、大事な時期だと考えています。

妻から夫への愛情は、産後は一気にガクンと落ちます。家庭内で疎外感や孤立感を経験したことのあるパパは多いのではないでしょうか。産後の女性を気遣ってくれる人はいても、育休を取っている男性のことを気にしてくれる人はほとんどいませんから(笑)

でも、パパが育児や家事にコミットすることで産後クライシスを避けることができますし、長い目で見ると、妻から夫への愛情曲線も回復していく傾向にあるそうです。夫婦ともに、「子育て」プロジェクトの共同経営者になれている感覚があります。

元官僚で起業家の小林味愛さんの夫・中西信介さんは、現在2回目の育休中。赤ちゃんと長女のお世話に奮闘中。長女と散歩している写真(立川市で)
長女と散歩している写真(立川市で)

男性の家庭進出が当たり前の世の中に

約3年ぶりの出産でしたが、こうやって振り返ると、やはり産後の日々(特に2か月間)を、夫のサポートなしに乗り切ることはできませんでした。この期間の男性育休は必須にしてもらいたいくらい。

夫が育休を取得して私が痛感しているのは、「男性にとって育休という新しい経験は、その人の人生や家族への影響のみではなく、会社や社会にも新しい価値観や気づきが生まれ、男女ともに互いを尊重してより生きやすい社会につながる可能性がある」ということです。

家で、職場の同僚や社長と話しているときの夫はとても楽しそうで、居場所が家庭だけになって孤立せず、このように少し仕事ができる制度や環境があるのは、ありがたいなと感じています。

育休制度の改正を機に、男性の家庭進出も当たり前の世の中になり、社会に新しい、優しい風が吹くことを願っています。

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小林味愛プロフィル写真
小林 味愛(こばやし・みあい)
起業家

1987年東京都立川市生まれ。慶應義塾大学を卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向、日本総合研究所を経て、福島県国見町で株式会社陽と人(ひとびと)を設立。福島県の地域資源をいかして、農産物の流通や加工品の企画販売など様々な事業を展開。あんぽ柿の製造工程で廃棄されていた柿の皮から抽出した成分を配合した国産デリケートゾーンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」を立ち上げた。現在、3歳の娘と0歳の息子を育てながら福島県と東京都の2拠点生活を送る。

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