“優しいママ”でいたいのに…悩んだ時こそ自分にいたわりを

理想は人それぞれと言いますが、10人いれば10人のほとんどが共通に抱き、そして、それがかなわないことで悩み苦しむものがあります。それが“優しいママ”像です。「今日もきつく叱ってしまった」「なぜあんなひどい言い方をしてしまったのだろう」とつぶやき、鏡に映った鬼のような顔にがくぜんとしながら、子どもの心に取り返しのつかない傷を与えてしまったのではないかと不安におののく……。子育て中のママの誰もが一度ならず経験したことではないでしょうか。

でも、どうかそんなにご自分を責めないで。いつ、どんなときでも“優しいママ”でいるなんて、しょせん、無理な話なのです。生まれてきてくれた喜びもつかの間、何が気に入らなくて泣くのか、手のつけようもなく続く夜泣き。レシピ片手に懸命に作った離乳食も、一口食べてベーッと吐き出されてしまう。ちょっと目を離せば、椅子から転げ落ちるか、箱からティッシュペーパーを取り出して部屋中にばらまくか。ヨチヨチ歩きを始めてほっとする間もなく、イヤイヤ期に突入。子育ては、これほどまでに気の休まる暇もない過酷なものだったとは……。

こんな日々を重ねていたら、どんなにかわいいわが子でも、出てくるのがため息ならまだしも、叫び声になったとしても、自然ではないでしょうか。“優しいママ”でいられないのは、それだけ真摯しんしに子どもと向き合い、懸命に子育てを頑張っている証拠だと、胸を張っていいのです。

子育て以外のことを楽しむ時間を

もっとも、“優しいママ”でいたいと思うことは尊いことです。でも、子どもに優しくあろうとする前に、まず自分自身に優しくなることが大切だと思います。怒ってばかりでは、子どもへの影響以前に、ママ自身の心が折れてしまいかねません。

たとえ30分でも、1人でホッとひと息つき、子育て以外の何かを楽しむ時間を持つ工夫をしてみましょう。信頼できる人に預けたり、地域の一時預かりを利用したりすることをためらう必要は全くありません。仮に多少の費用がかかるとしても、それは“優しいママ”でいるための“必要経費”です。

子どもはいつも“優しいだけのママ”を求めてはいません。ときに大きな声をあげて叱ることがあったとしても、自分を愛してくれているかどうかは、分かっています。どんなに幼くても侮れない、それが子どもです。大切なわが子を心からいとおしく思うためにも、まずママ自身がご自分を本当に愛せているかどうか、問い直してみることです。そのために必要なものがあったら声に出して周囲に、社会に訴えていくことが大切です。

今、社会をあげて子育てを応援しようという機運が高まっています。社会保障改革を議論する政府の「全世代型社会保障構築会議」が20225月に出した中間整理では、妊娠・出産・育児を通じた切れ目のない支援への一元的な体制・制度の構築をめざし、「こども家庭庁」の創設を含めた施策の強化が打ち出されています。あなたのせつないつぶやきを社会がしっかり受けとめてくれる、そんな時を迎えつつあります。

◇ ◇ ◇

「子育て応援団」のコーナーでは、子育て支援の専門家や医師、タレントらがリレー方式で、働きながら子育てをするママやパパに向け、元気が出るメッセージや日々の暮らしに役立つ知識を盛り込んだコラムを掲載します。

あわせて読みたい

子育て相談アドバイザーの大日向雅美・恵泉女学園大学長
大日向雅美(おおひなた・まさみ)
恵泉女学園大学長

1950年生まれ。神奈川県出身。専門は発達心理学で、主に母親の育児ストレスや育児不安の研究に取り組んでいる。NPO法人「あい・ぽーとステーション」代表理事、子育てひろば「あい・ぽーと」施設長も務める。著書は「増補 母性愛神話の罠」(日本評論社)、「おひさまのようなママでいて」(幻冬舎)、「『子育て支援が親をダメにする』なんて言わせない」(岩波書店)など多数。2007年に創設された「よみうり子育て応援団大賞」の選考委員を務めた。

Keywords 関連キーワードから探す