働く女性の54%「非正規」とは?正社員と比べて待遇面で3つの格差

新型コロナウイルスの感染が拡大してから、非正規雇用で働く人の苦境が伝えられています。解雇されたり、雇用期間満了時に使用者が契約を更新しない「雇い止め」に遭ったりする人が増え、各地の労働相談には雇用や生活に関する深刻な悩みが寄せられています。中でも、雇用悪化の影響を強く受けているといわれるのが女性です。

コロナ禍は、非正規雇用で働く人の生活や、飲食サービスや宿泊などの業種を直撃しました。女性は、雇われて働く人の半数以上(約54%)が非正規です。また、飲食サービス業や宿泊業、生活関連サービス業などで働く人が多くいます。

コロナ禍の影響を受け、「シーセッション(女性不況)」という言葉も聞かれるようになりました。「シー=She(女性)」と「リセッション=Recession(不況)」を合わせた造語です。令和3 年版男女共同参画白書ではこの言葉を取り上げているほか、コロナ禍により、女性の非正規雇用労働者が20203月以降、前年同月差の推移を見ると、13か月連続で減少したと指摘しています。

非正規雇用の「非正規」とは?

ところで、日々のニュースで当たり前のように出てくるのが「非正規雇用」「非正規労働者」といった言葉です。そもそも「非正規」とは、どのような働き方を指すのでしょうか?

実は、「非正規」は法律用語ではなく、法律上の定義もありません。これは「正規」も同じことです。しかし、社会に広く認知されている概念はあります。

一般に〈1〉企業に直接雇用されている〈2〉期間の定めがない〈3〉フルタイムで働く――という三つの要素を満たしている状態を「正規雇用」と呼びます。

これに対して、〈1〉から〈3〉の要素のうち、一つでも欠けている働き方を「非正規雇用」と呼んでいます。パートやアルバイト、契約社員、派遣社員などがこれにあたります。

雇用形態を決める要素には、「労働時間」「契約期間」などがありますが、経済学者の神林龍氏の著書「正規の世界・非正規の世界」(慶應義塾大学出版会)によれば、実態把握には、職場でどう呼ばれているかの「呼称」が最も重要な意味を持つといいます。だから「私はフルタイムで働くパートです」などという、ちょっと首をひねるような働き方も出てくるのです。

非正規雇用労働者の数は、コロナ禍で2020年と2021年に減ったとはいえ、近年、増加の一途をたどってきました。政府の統計(総務省「労働力調査」。正規、非正規などの雇用形態の区分は、勤め先での「呼称」による)を見てみましょう。

1984年に604万人(男女計)、雇用者全体に占める割合は15.3%だったのが、1990年代以降に急増し、2019年には2165万人、割合にすると38.3%にまで膨らみました。雇用されて働いている人の実に4割近くが「非正規」ということになります。

増加の背景には、人件費が安く、雇用の「調整弁」として使いやすい人材を企業が望んだ点が大きいといえます。一方、「都合のよい時間に働きたい」という働く側の希望があるのも事実です。「時間の融通が利く」「家事や育児などと両立しやすい」「体調に合わせて働くことができる」など、高齢化や人口減少が進む日本では、非正規は、魅力的ともいえる多様な働き方の一つといっていいでしょう。

ただし、日本では、単に「働く時間が短い」というだけではなく、賃金や待遇の面で厳しい環境に置かれることが多く、「不安定な働き方」となってしまっているのが現状です。

非正規雇用で働く女性
写真はイメージです

非正規と正規の3つの格差

非正規は正規(正社員)に比べて、主に次の三つの点で待遇面の格差があるといわれています。

【1】賃金の格差

厚生労働省の「毎月勤労統計調査(令和3年分結果確報)」によると、フルタイムで働く一般労働者(男女計)の月間の現金給与総額は419500円なのに対し、パートタイム労働者は99532円となっています(現金給与総額とは、基本給や賞与、手当などを含む税引き前の額を指します)。もちろん、働く時間が短ければ賃金が低くなるのは当然ですが、例えば最低賃金に近い賃金設定をしているなど、労働条件の違いも影響していると考えられます。

【2】教育訓練の格差

厚生労働省の「令和2年度能力開発基本調査」によれば、日常業務に就きながら行われる教育訓練について、正社員に対して実施した事業所は56.9%だったのに対し、非正規雇用労働者の場合は22.3%。業務命令で通常の仕事を一時離れて行う教育訓練については、それぞれ68.8%、29.2%となっています。「職場での教育訓練機会に乏しく、一度非正規になると正規に移りにくい雇用慣行が格差の固定化を生んでいる。社会的な公正性の点から問題だ」と見る専門家は少なくありません。キャリアアップにつながる教育訓練の機会の格差は大きいといえます。

【3】社会保障の格差

厚生労働省の「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、正社員の9割以上が「雇用保険」「健康保険」「厚生年金」に加入しているのに比べ、非正規雇用労働者はそれぞれ約71%、約62%、約58%(パートタイム労働者に限ると、それぞれ64%、約48%、約43%)という適用状況になっています。

これらの格差は、特に男性の場合、有配偶率の大きな違いとなって表れています。総務省の「労働力調査」(2021年平均)によれば、3539歳、4044歳、4549歳の各層で、正社員の有配偶率が約7割であるのに対し、非正規雇用労働者の有配偶率は約3割にとどまっています。

政府は現在、非正規の「正規化」や、いわゆる「同一労働同一賃金」などの政策に基づく非正規の待遇改善、短時間正社員の普及などを進めています。正社員の職が見つからないなどの理由でやむなく非正規として働く「不本意非正規雇用」は、2013年には非正規雇用労働者全体の2割近くいましたが、2021年には約1割にまで減少し、政府目標(2022年に1割以下)に近づいてきています。

より多くの人が、より安定した働き方ができるように、改革を着実に進めていくことが望まれます。

【参考】
神林龍著「正規の世界・非正規の世界――現代日本労働経済学の基本問題 」(2017年、慶應義塾大学出版会)
男女共同参画白書令和3年版
厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題

女性は長生きなのに、低賃金・低年金になってしまいがちです。コラム「働く女性と社会保障」は、超長寿時代を生き抜く上で必要な社会保障の知識や仕組みを、読売新聞の猪熊律子編集委員が解説します。非正規雇用という働き方、出産や育児に関する制度、老後の年金保障など、働く女性に知っておいてほしいテーマを順次、取り上げていきます。

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猪熊律子編集委員
猪熊 律子(いのくま・りつこ)
読売新聞東京本社編集委員

新聞記者になって30年以上。年金、医療、介護、子育て、雇用分野での取材が長く、社会保障部部長を経て、2017年より現職。社会保障に関心を持つ若者が増えてほしいと、社会保障教育にも力を入れている。著書に「#社会保障、はじめました。」(SCICUS、2018年)、「ボクはやっと認知症のことがわかった」(共著、KADOKAWA、2019年)など。

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