ラジオDJ秀島史香さん最新刊、相手に伝わる話し方のコツとは?

「どうしたら初対面の人とうまく会話できるの?」「雑談が苦手」――。ラジオDJとして25年のキャリアを誇り、テレビやCMなどでも幅広く活躍する秀島史香さんは、「会話」にまつわる悩み相談をしばしば持ちかけられるそうです。秀島さんは「なぜか聴きたくなる人の話し方」(朝日新聞出版、税込み1650円)を5月20日に発売したばかり。耳で聞くだけでも伝わるように工夫を重ねてきた「話す・伝えるのプロ」に、コミュニケーションの極意を聞きました。

――なぜこのタイミングで話し方をテーマにした本を出したのですか?

初対面で緊張して話が続かないとか、雑談ができないとか、仕事柄、友人やリスナーさんから会話の悩みを相談されることが多いんです。コロナ禍で、その悩みはますます深刻になっていることを実感したからです。

私自身、気軽に人に会うことがはばかられましたし、緊急事態宣言下では、人が集うことも制限されました。FMヨコハマの日曜朝6時からの生放送番組「SHONAN by the Sea」では、イベントが中止となった知らせが毎週入ってきましたし、神奈川・湘南の海水浴場も閉鎖しました。「こんなイベントやっていますよ、面白そうですよね、海に行ってホッとしましょうよ」と話してきたのに、突然逆のことを言わなきゃいけない。つらかったですね。その「ままならなさ」みたいなものを体験した時に、それまで当たり前だった、人と会って話をすることの価値やコミュニケーションの価値を考え直すきっかけになりました。

――ラジオの生放送番組を持つ秀島さんでも話し方に悩むことがあるのでしょうか?

もちろんありますよ。人と自由に会えなかったあの時期を一回挟むと、いざ会ったときに「あれ? 会話ってどうするんだっけ?」と戸惑うんですよね。娘の学校の行事で初対面同士が集まり「お一人ずつごあいさつを」となった時に、「何を話したらいいだろう」と戸惑いました。

――本には、秀島さんのラジオ愛があふれていますね。

コロナ禍でラジオを聴く人が増えたと言われています。クラブハウスなど音声SNSをきっかけに、音声メディアブームも起きています。私自身、おしゃべりができない時期が続いた時、ラジオから聞こえる声にすごくホッとしました。

人の声で元気になったり、気持ちが楽になったりしますよね。朝つけたラジオから聞こえた、誰かの何げない「私もそうなんですよ」という一言が一日の心の支えになる。正体の知れない不安でモヤモヤしていた時期に、「声ってダイレクトに気持ちに響くよね」という気付きがありました。声の持つ力って何だろうと改めて考えました。

ラジオDJの秀島史香さん
「声だけで伝わるというのはどういうことなのか、私自身一人のリスナーとして改めてラジオと向き合って考えました」と話す秀島史香さん

――前作(「いい空気を一瞬でつくる―誰とでも会話がはずむ42の法則」)の発売から5年、ご自身の環境も変わりましたか?

2017年4月から担当するようになった日曜朝の生放送での学びは大きいですね。J-WAVEで夕方の番組は長く務めましたが、日曜日の朝の生放送は初めて。のんびり、ゆったりとした時間を感じていただけるような番組進行を意識しました。

例えば、平日の夕方の生放送なら「時刻は5時48分です」と、時刻を頻繁に言うのも大事な要素の一つでした。でも、日曜の朝に「時刻は7時11分です」と言われても、それ必要ないでしょ、となりますよね。同じラジオというプラットフォームでも、全く違う伝え方が必要でした。そこで考えたのが「声の着替え」です。日曜の朝のリラックスした雰囲気に寄り添うように声を少し低めの穏やかなトーンにしました。発言の間の「余白」を作ることも心がけています。

オンラインはリアクション大きめで

――オンラインでのコミュニケーションに悩む人も多いです。

オンラインは伝わらないことが当たり前、と思うようにしています。実際に対面するより情報量がガクンと下がりますから。見えているけど、見えないものが多すぎる、みたいな。やっぱり不安になりますよ。例えば、普段より表情のリアクションを大きくしてみるのはどうでしょう。

うまく話そうとしなくても大丈夫です。究極のところ、会話やコミュニケーションの目的は、相手とつながった、より心の距離が近くなったと思えることですよね。「自分が、自分が」と思うと、空回りして相手のことを置いてきぼりにしてしまう。相手と少しだけでもフフッと笑いあえたら、それで合格点だと思います。

――話している途中に失敗したと感じたときの立て直しはどうしていますか?

全て結果オーライかなと思っています。失敗しちゃったと思うのであれば、次に生かせばいいだけの話。私も失敗ありますよ~。どれをご紹介しようかな(笑)。

番組のエンディングって色々小さくやらかすんです。プレゼント当選者の発表とお誕生日コールをやるのは毎週決まっている流れなのに、お誕生日コールを全部忘れて……。終了後にディレクターさんの指摘で気付いて真っ青に。すぐさま番組ツイッターで「豪快にすっとばしました、ごめんなさい」と謝まったら、それはそれでウケていました。

神奈川のよこすかカレーフェスティバルの紹介をした際は、「事前予約制で3部制です。午前1時から3時までの枠はまだ空いています」と紹介したら、ディレクターさんが慌てて「午後だよ、午後」と耳元で訂正してくれて。「わわっ、ごめんなさい、正しくは午後1時です!」と。どんな深夜にカレー食べるんだと(笑)。このときも、皆さんにも笑ってもらえたようですが、こんなことばっかりです。

そこで本人がドヨンと落ち込んで、その後も「バカバカ、何であんな失敗を」と自分を責めても誰にとってもいいことはないですよね。特に生放送では失敗した時こそ、意識して明るく振る舞うことが大切。それができる人って一緒にいて楽しいな、一緒に仕事しやすいなと思います。もちろん謝ることは大前提ですが、失敗した時こそ、一人で勝手に落ち込まない、引きずってまわりを暗い空気に巻き込まない、と言い聞かせるようにしていますね。

秀島さんお勧め「伝わる話し方」三つのポイント
(1)好意は先に伝える

「あなたのこと、とても尊敬しています」「あこがれています」「好きです。お会いしたかったです」なんて、言い慣れないうちは恥ずかしいかもしれませんが、その恥ずかしさを乗り越えて口にできる人はすてきだと思いますよ。後出しでも、時間差があってもいいです。言葉にして相手に伝えるのは、お互いにとって良いことしか起きません。「この雰囲気で、態度で察して」というのは甘えです。ここはさぼらず、ぜひ言葉にしていきましょう。

(2)一緒にいて疲れない人に

私の中でここ数年、夫に対して心がけていることです。つい前のめりになって、相手の様子を気に留めず、バーッと話しかけてしまうところがありまして。夫はというと、疲れているけど、頑張って聞いてくれている感じです。でも、明らかに興味がないときの相づちが出てくるんですね。「へー」「ふーん」「そうなんだー」「おもしろいねー」の四つ。これがきたら、「あっ、私グイグイ行きすぎちゃってる。今はやめておこう」となります。

そもそも、今話したいか、話したくないかという「温度」は人それぞれ、体調や状況でも刻々と変化していきます。「人は人、自分は自分」。残念ながら必ずしもぴったり合うものではありません。その大前提を頭に入れておきましょうね。自分のペースでしゃべりすぎず、相手のためのスペースをちゃんと残しておくことで、お互いに一緒にいても疲れない、居心地の良さが生まれます。

(3)「優雅な大人」のフリでいい

忙しいとトゲトゲ、イライラしがちですが、そんな時こそ、「フリ」でもいいから、あこがれの誰かになったつもりで、「私はあの人のようなゆったりした余裕のある大人なんだ」と自分に言い聞かせるようにします。自分のありたい姿を思い出せて、気持ちが楽になります。失礼な人に出くわしたとしても、「私は巻き込まれませんから。イライラしてもしょうがないし」と無駄に心を疲れさせず、軽やかにスルーできるようになります。「フリ」として意識するだけでも行動が変わりますよ。(取材・読売新聞メディア局 野倉早奈恵)

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秀島史香 (ひでしま・ふみか)
ラジオDJ、ナレーター

1975年、神奈川県生まれ。大学在学中にラジオDJデビュー。NHKラジオ「ニュースで学ぶ『現代英語』」などに出演中。ハスキーで都会的な声質と温かな人柄が人気で、テレビやCMなどでも幅広く活躍している。

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