寺田倉庫 映像や音楽を保存、アーカイブで未来へ可能性をつなぐ

ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったり。自分らしく、生き生きと働く女性たちの「ハッピーアイテム」を紹介します。

星彩子(29)
アーカイブ事業グループ ソリューションチーム

寺田倉庫と聞いて、天王洲アイルのアートギャラリーをイメージする人もいれば、ソムリエが常駐するワインセラーを思い浮かべる人もいるでしょう。預けたアイテムをWEB上で管理できる宅配型トランクルームの「ミニクラ」を利用したという人もいるかもしれません。

所属するアーカイブ事業グループは、主に映像や音楽を扱う企業を顧客とし、映像作品や音源資産を後世に引き継ぐため、主に三つのサービスを提供しています。

〈1〉 映像や音源が収録されているフィルムや磁気テープの空調管理・セキュリティー・災害対策を備えた保管
〈2〉記録媒体の変化に伴う再生機の生産終了や経年劣化などで、再生できなくなる映像や音楽のデジタル化
〈3〉容量の大きい映像データなどのバックアップを含めた安全な保管管理

さらに、預かった素材をただ保管しておくのではなく、貴重な過去の映像や音楽の活用・活性化にも取り組んでいます。過去に制作されたコンテンツの新たな価値を探り、再び活用する可能性を見いだしていきます。

ドラマの撮影が困難となったコロナ禍は、「再放送」に注目が集まり、懐かしい「過去コンテンツ」の発掘も話題になりました。素晴らしいコンテンツだから、残す意味も活用できる可能性も十分にあります。寺田倉庫の星彩子さん

活用される過去コンテンツ

ある美術館が企画展でアーカイブを活用したこともありました。過去に講座の様子を記した速記簿が残されており、企画展で展示する計画を立てました。実際に手でめくるのは汚損のリスクがあり、速記簿をスキャンしてデータ化することに。企画展の会場でモニターに映し出された速記簿を、美術館の歴史として興味深く眺める来場者の姿に、地道な作業を積み重ね歴史を残す大切さを実感しました。

音楽系の会社がYouTubeチャンネルを開設した際には、アーカイブとして保管していた人気ミュージシャンの過去のミュージックビデオやライブ映像が配信されました。往年のスターやアイドルの映像のデータ化や編集に携わると懐かしさで心ときめくこともありますが、なによりもうれしいのは、それらの映像が再び活用され、多くの人へハッピーが広がることです。YouTubeには、国内外のファンからの熱いコメントが寄せられ、どんどん伸びていく再生回数を興奮気味に見入ってしまいました。

過去の映像や音楽が、必ずしもこのようにアーカイブとなって日の目を見るとは限りません。多くの企業は、過去の作品をアーカイブしていくことの優先順位は低く、予算がつかないという担当者の苦労も耳にします。

過去素材のアーカイブのために、一度に100万円単位の予算を組むのは難しくても、月に数万円なら出せるという場合は、保管している素材を選別しながら、毎月、順番に少しずつ取り組んでいく提案をします。

コンテンツの内容次第では、文化庁などの補助事業として採択されることもあり、常にアンテナを高く情報収集するように意識しています。アーカイブにかかる費用を捻出するため、クラウドファンディングに取り組んだ事例もあります。

映画や舞台の鑑賞は“一石三鳥”でハッピー

お客さまへアーカイブの必要性や意義を説明するのですが、どうしても専門用語が多く、うまく伝えられず、悩み落ち込むことがあります。気分転換にも映画や舞台を活用。その世界に没入して、いやな気分を遠ざけるようにします。

映画や舞台の鑑賞は、気分をリフレッシュし、仕事をする上で勉強になり、そして、仕事のモチベーションを高めてくれ、“一石三鳥”でハッピーにしてくれます。

アーカイブの仕事は、制作のような花形ではありません。コンサートやライブのように強い熱量を感じることもありません。でも、まったく違う角度から文化やエンターテインメントに関わることができ、素晴らしいコンテンツが再び活用される様子を目の当たりにできます。

アーカイブとして残されるコンテンツの中には、8Kで収録した舞台作品や熟練技術者のノウハウを収めた映像など技術継承を目的とするものもあります。伝統や特殊技術、文化、芸能を未来へつなげ、新たなコンテンツを生む可能性を秘めた資産。その価値を広く知ってもらうため、啓発活動にも取り組んでいきたいと考えています。

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)

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