現在、ロシアのウクライナ侵攻で世界経済は大打撃を受けています。いまだに収束のめどが立たない中で、先行き不安から世界的に株価は大暴落。最近、積み立て投資で投資デビューを果たしたという方の中にも資産がマイナスになってしまい、投資へのモチベーションが下がっている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、積み立て投資を実践している投資初心者の方に向けて、相場が悪い時でも覚えておきたい投資の三つの基本についてお話しします。
下落相場でも覚えておきたい投資の三つの基本
つみたてNISAなどで投資デビューをしたものの、最近の株式市場の不調で資産はマイナス……。「やっぱり投資なんてやめた方が良いのでは……」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
つみたてNISAなどの積み立て投資は、基本的に投資信託を活用して中長期スタンスで行う投資ですが、長い間には、リーマンショックやコロナショック、ウクライナショックのように、世界中の経済を揺るがすような危機が訪れ、株式市場が大きく暴落するという局面がほぼ間違いなくやってきます。このような危機が訪れた時に慌てないためには、投資の三つの基本をしっかりと理解しておくことが大切です。
<1> 長期
長い期間、投資をすることで複利の効果が得られます。複利とは、運用で得られた利益を再び投資することで、利益がさらなる利益を生むことです。例えば、元手100万円を投資して年3%のリターンがあった場合、単純に計算すれば運用益は3万円になります。複利運用の場合、次の年からはこの3万円を元本に組み入れ、103万円を運用していく形になります。つまり、運用期間が長くなればなるほど、利息がどんどん元本に組み入れられて、利益が膨らみやすくなるのです。
また、投資をする期間が短いと、その都度「買いどき」「売りどき」のタイミングを計らなければなりません。するとどうしても、利益や損失のブレ幅が大きくなりがちです。一方、長期にわたって投資をしていく場合は、一時的に損失を被っても、その先の運用期間中に回復する見込みがあります。過去の相場の推移を見ると、上がり続ける相場も下がり続ける相場もありません。
<2> 積み立て
積み立て投資は、一定額を定期的に投資していく投資方法です。投資信託などの値動きのある商品を、「毎月1万円ずつ」などと一定額ずつ購入すると、商品の価格が高いときには少ししか買えず、逆に安いときにはたくさん買えることになります。このような方法を「ドル・コスト平均法」といいます。
積み立て投資を活用して、ドル・コスト平均法を生かしていれば、商品の平均購入単価は徐々に下がっていきます。これによって、値上がりに転じた際に利益が出しやすくなるのです。
現在のように価格が下がっている時には口数が多く買い付けられているということ。つまり、積み立て投資は相場が悪いときこそチャンスだといえます。
<3> 分散
一気にお金を増やしたいという場合、値上がりしそうな資産に集中投資をする方が効率は良いのですが、ウクライナショックのような事態が起こると、ダメージも大きいため、複数の資産に分散して投資しておくことが大切です。特に今のように世界全体が先行き不透明な時期は、どこの国の株価が上昇するのか予測するのは困難でしょう。
例えば、国内外の株や債券に投資している投資信託であれば、株の値下がりリスクを債券の上昇でカバーできる可能性があります。また、円相場が下落した場合にも外貨の上昇でカバーできる可能性があります。国も地域も資産も分散投資をすることにより、全体的なリスクを減らすことができます。
相場が悪い時でも慌てて売らない
では、実際に、相場が悪い時でも長期・積み立て・分散投資を続けていたら資産がどうなったのかを見てみましょう。
下図はリーマンショックが起こった2008年9月から2022年2月まで、S&P500に毎月1万円積み立てた場合の推移です。※S&P 500(スタンダード・アンド・プアーズ500種指数)は、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数です。
リーマンショックでは、米国の投資銀行が破たんした影響が世界中に飛び火し、株価下落や経済危機を引き起こしました。しかし、そんなときから月1万円ずつ積み立て投資をしていたとしても、2022年2月末時点で積み立て元本は162万円に対し、資産総額は479万円になっている計算。実に3倍程度に増えているのです。○をつけたところがコロナショックの影響のあった2020年3月で、確かに資産総額は一時的に減っていますが、それでもすでに積み立て元本より多い状態。しかもその後、資産総額はさらに大きく増えています。
上記は、過去のデータですから、もちろん、今後も同じように値上がりを続けると断言することはできません。しかし、市場の一時的な値下がりを乗り越えて資産を堅実に増やせる可能性がある投資方法だということは、お分かりいただけたのではないでしょうか。
相場が悪い時には、今回お話した投資の三つのポイントを思い出し、淡々と投資を続けましょう。
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