ロングボトム駐日英国大使、ジェンダー平等へ日本に足りないもの  

2021年3月から駐日英国大使を務めているジュリア・ロングボトムさんは、160年超の日英の外交史上で初めての女性大使です。1990年代、2010年代に続き、3回目の日本での駐在です。4月19日に読売Bizフォーラム東北で講演したロングボトムさんに、日本の女性の活躍についてインタビューしました。

――日本の女性活躍は進んでいると思いますか。

確実に進展していると思います。

最初の赴任は1990年代前半でした。政治担当の書記官だったので、ジャーナリストとの飲み会もありました。けれど、メンバーは男性ばかり。なぜ、女性はいないのかと尋ねると、「女性は子育てなどがあり、長時間働けないから」と言われました。でも、ワーク・ライフ・バランスを考えたら、長い時間働くのは男性にとってもよくないことです。当時は、能力とは関係なく女性はコピー取りをさせられていて、「OL」と呼ばれていました。

次に2012年から16年に公使として日本に駐在したときは、当時の安倍首相が、女性活躍を進めた時期でした。ダボス会議でもアピールしていて、指導的地位に占める女性の割合が設定されました。政府が行動し、ジェンダー平等に取り組むという変化を感じました。
ロングボトムロングボトム駐日英国大使

そして今。日本の女性たちがソーシャルメディアを通じて声を上げ、具体的な行動を起こしているのが印象的です。日本の人たちはおとなしいイメージがありましたが、21年の森元首相の発言(「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言し、国内外から批判を浴びた)を巡っても、ここがおかしいと声を上げ、署名を集めて抗議していました。

大企業が注目し始め、社会課題として女性活躍が進んでいるとはいえ、政治の分野ではまだまだです。人口の半分は女性なので、もっと女性の政治家が増えないと。男性の政治家ばかりでは、国民を代表していると言えません。興味や利益は異なるので、もっと女性が増えるべき。欧州の若い女性政治家たちは、自分らしく活躍していて、すごく感謝します。そういう人たちが登場することで、私たちの暮らしが変わってくると思います。

ほんの少しの勇気でキャリアは開かれる

――キャリアを積むために大切なことは何ですか。

自分がやりたいと思うことを周囲に明確に伝えて、いろんなことにチャレンジしてください。少しくらい失敗してもいいのです。

私には3人の子供がいますが、娘2人は日本での任期中に出産しました。赴任地で出産して、そのまま赴任先で外交官を続けるのは難しいと考えていました。私の場合、英国人の夫が日本で仕事をしており、産休をとった後もフルタイムで働ける状況にあったので、上司に許可をとり、夫や同僚のサポートで復職が実現できました。少し勇気のいることですが、そのときの私の提案は正しかった。これがロールモデルとなり、今では、駐日英国大使館では、ほとんどの女性外交官が出産後も継続して働いています。

私も初めは、大使に赴任することなど考えていませんでした。でも、能力があれば、誰にだってキャリアは開かれているのです。英国では、外交官の4割が女性になりましたし、G7(イタリアを除く)、ウクライナ、国連、中国、ロシアに駐在する英国大使は、全て女性です。男女問わず、海外転勤が多くても、キャリアを築くことは可能なのです。

――ジェンダー平等が進むために必要なことは。

今年の国際女性デーのグローバルテーマは、「Break the bias」(バイアスを打ち破る)でした。無意識のバイアスを取り除くことが大切です。例えば、家事という無償労働を女性は男性より多く担っています。ジェンダーによる賃金格差も重要な問題です。ともすると、女性の問題ととらえられがちですが、男性の問題でもあるのです。男女が互いのキャリアを尊重し、無意識のバイアスをとり除く必要があります。

(聞き手・読売新聞メディア局 小坂佳子)

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