最近、食品から日用品、サービスまでさまざまなものが値上がりしています。買い物に行ったときに「こんなに高いの!」とびっくりした方も少なくないのではないでしょうか。モノやサービスの値段が上がる「インフレ」(インフレーション)が起きると、生活費がかさんでしまうことに……。これからも続く可能性があるインフレに、家計はどう備えればよいのでしょうか。
インフレになるとお金の価値が目減りする
現在、新型コロナウイルスの感染拡大による流通の混乱、ロシアのウクライナ侵攻による商品価格の高騰、さらには円安による食料やエネルギーの輸入コストアップなど、さまざまな要素が絡み合い、インフレになっています。
日本では長い間、物価がほとんど上昇しなかったので、急激なインフレに慌てている人も多いと思いますが、今後は持続的に物価が上がっていく可能性が高いかもしれません。
インフレになると、物の値段が上がり、毎月の支出が増えるだけではなく、お金の価値が目減りしてしまいます。
たとえば、100円のりんごが200円になったとします。りんごの側から見れば、「値段が2倍になった」ですが、お金の側から見ると、これまで100円で買えたりんごが倍の200円出さなければ買えないのですから、「お金の価値が半分になった」ということになります。
たとえ物価が上がっても、それ以上にお金が増えればよいのですが、それもなかなか期待できません。銀行にお金を預けても、もらえる金利はわずか0.001%。物価の上昇よりもずっと少ないので、お金の価値は目減りしてしまいます。また、お給料も一緒にインフレしてくれればよいのですが、右肩上がりで増える時代ではありません。
つまり、このままインフレが進むと私たちの生活は苦しくなってしまうことが予想されます。
インフレに備える「支出の見直し」と「資産運用」
そこで、インフレが進むなかでも家計を守り、生活していくために、「支出の見直し」と「資産運用」を検討しましょう。
<支出の見直し>
まず取り組みたいのが支出の見直しです。支出の見直しはすぐに取り組めますし、支出を減らした分だけ手元のお金が増えることにつながるからです。
支出はまず「固定費」から見直しましょう。固定費とは、毎月、一定金額かかる費用です。家賃や住宅ローン、スマホ代、生命保険料、自動車の維持費用、サブスク代などが当てはまります。固定費は、1度見直すだけでその後も節約の効果がありますし、削減効果も大きいので、優先して見直すのがよいでしょう。
例えば、現在、賃貸暮らしという場合は、家賃が引き下げにならないか大家さんと交渉してみる手も。最近は新型コロナウイルスなどの影響で経済状況が不安定なこともあり、以前よりも家賃交渉に応じてくれる大家さんが増えているようです。月に3000円でも家賃を下げることができれば、年間で3万6000円の節約に。スマホ代も大手キャリアから格安スマホに乗り換えれば月5000~8000円程度安くなるケースも少なくありません。保険料も、不要な特約などを見直せば削減できますし、都市部に住んでいるならば維持費の高い車を手放す、レンタカーやカーシェアに切り替えることで大きな節約につながります。
固定費が削減できたら、次に無駄遣い、変動費(毎月、支出の金額が変わる費用。食料品費・交際費・日用品費など)の順に見直していきます。
そもそも「毎月の支出がいくらかわからない」という人は、家計簿アプリなどを利用して、大まかでいいので、何にいくらお金を使っているのか、チェックしてみましょう。振り返ってみて、不要な支出を次からしないようにするだけでも、支出は減らせるはずです。
<資産運用>
預貯金にお金を預けていてもお金はほとんど増えないため、インフレが起きると資産が目減りしてしまいます。
例えば、1個100円のりんごがインフレで年1%値上がりすると、5年後には105円になります。しかし、100円を5年間、預貯金にお金を預けていても、金利が年0.001%なら、お金は100円のままですから、りんごは買えなくなってしまいます。
しかし、仮にお金を年1%ずつ増やせていれば、5年後にお金は105円になっているので、りんごを買うことができるでしょう。もっとも、今どき預貯金で年1%も増やせるものはありません。そこで取り組みたいのが資産運用です。
資産運用とひとくちにいっても、株や投資信託、外貨投資など様々な方法がありますが、一般の人が資産形成をする上では、「長期・積み立て・分散投資」を実践することが大切です。
長期・積み立て・分散投資は、昔から投資の王道といわれる方法です。長い期間をかけて、お金を少しずつ積み立てて、いろいろな資産(金融商品)を購入していく方法をいいます。
金融庁のデータによると、国内・先進国・新興国の株式、債券に積み立て投資を20年間続けたときの実績が年2~8%に収まり、元本割れする可能性が低くなるとのこと。もちろん、「今後も絶対に元本割れしない」とは言い切れませんが、堅実にお金を増やす期待ができます。
お金を減らさず増やす「長期・積み立て・分散投資」について、私の著書から図を紹介しましょう。

(金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」より作成、過去の実績をもとに算出したものであり、将来の投資成果を予測・保証するものではありません)
インフレが進むと、生活費が多くかかるようになってしまいます。支出を減らすとともにお金を増やすことで、インフレに備えていきましょう。
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