ルブタンは「キュン買い」、履けなくても愛でるだけで幸せ

季節のはざまに一番に買うのが靴だ。春夏の新作が店頭に並びだす頃は、まだ寒い。服を買っても、すぐには着られないなんてことはしばしばある。それでも季節の変化に合わせて、気分を変えたい、新作がほしいという時に、私は靴を買う。

そもそも「靴」というアイテム自体が大好き。「何か魂に訴えかけてくる」「キュンとする」「履くか履かないかは抜きにして造形物としてすてき」なんて思うと、これは買っておかねばなるまい、となる。スタイリストという仕事柄、仕事で使うかもという「免罪符」も使える。

そうやって買った結果、見事にオブジェ化した靴もある。その一つが、独立して間もない、まだお金のない頃に買った「クリスチャン・ルブタン」の靴。いつかは欲しいと思い続け、靴底に裏張りまでしてもらったのに、いざ履いてみると足が痛くて歩けない。それでも、きれいなターコイズブルーのハイヒールは赤い靴底とのコントラストが美しくて眺めているだけで心が満たされる。頑張って買った「ファーストルブタン」という思い入れもあって捨てられない。

スタイリストの入江陽子さんが駆け出しの頃に買ったクリスチャン・ルブタンのハイヒール
クリスチャン・ルブタンの靴は眺めているだけで幸せ(入江さん撮影)

つまり、私の場合、靴を買うときは勢い。手持ちのあの服に合わせよう、なんてスタイリングは考えない。面白い、斬新なデザインの靴は考えてしまうと買えないと思う。スタイリングは買ってから靴に合わせて考える。服に合わせやすい靴という基準で買ったこともあるが、結局たくさん履くのは衝動買いの靴のような気がする。何より、後々まで心に残るのは圧倒的に「キュン買い」の靴だ。

収納との闘い、捨てて後悔も

しかし、靴への愛は収納との闘いでもある。いくらでも収納できるクローゼットがあれば、と思ったことは数知れず。こんな私だが、片づけコンサルタント、こんまり(近藤麻理恵さん)の番組を見て、一瞬だけ「断捨離」に目覚めたことがある。その時、勢いでセリーヌの黒いウェッジソールサンダルを捨てたことを今でも後悔している。

そのサンダルは、ドクターマーチン風の黄色いステッチのおかげか、靴下やタイツを合わせるとブーツのようにスタイリングできて季節も問わず万能だった。何よりすばらしいのが、高さ15センチほどのヒールなのに歩きやすい点。身長は盛りたいけれど、足が痛くて歩けないなんて言っていられない私には重要な要素を兼ね備えていた。毎日のように履いて履き潰して、もう修理できないくらいの状態だったが、あの名作は履けなくても置いておきたかったと今でも思うぐらい大好きだった。

最近の私の靴事情を振り返ってみた。少し前までは、歩きやすいこともあり、厚底やガム(ゴム)ソールのメンズライクな靴を買うことが多かった。私のルールとして、全身フェミニンなスタイルはしない。これは好みの問題なのだが。ここしばらく、ワンピースやロングスカートを着ることが多かったので、足元は必然的にメンズライクなものを意識した。

ところが、今、女性らしい足元にもひかれ始めている。そもそも靴は女性の足を美しく見せてくれるもの。可憐かれんなフラットバレエシューズやピンヒールのハイヒール、華奢きゃしゃなストラップの靴をさらりと素足に履いた足は、とても美しいし、すてきだと思う。

自分の足には似合わないのは分かっているし、きっとそんなに履かないと思いながら、またも買ってしまった。どうにかスタイリングを考えてみた。3センチくらいのキトゥンヒールなら歩けるし、デニムに蛍光イエローのソックスを合わせたら自分らしく履けるな、とか、トラックパンツに華奢なミュールを合わせたら大人っぽくてかわいいな、とか。

要は、どんな靴も自分らしくスタイリングすれば似合うはずだ。何より、靴は体形を選ばない。しかも、すてきな靴は簡単に自分を格上げしてくれるし、テンションも上げてくれる。要は、裏切らない相棒だ。ときめく靴に出会ったら、まず買ってしまえ! これ、お勧めです。

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入江陽子さん顔写真
入江 陽子(いりえ・ようこ)
スタイリスト

1985年、広島県生まれ。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。スタイリスト長瀬哲朗氏のアシスタントを経て2013年独立。「NYLON JAPAN」や「GINZA」、「装苑」などのファッション誌や広告、アーティストのスタイリングなどを手がけている。

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