クボタ ボタンひとつでかなう“スマート農業”の普及を目指して

ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったり。自分らしく、生き生きと働く女性たちの「ハッピーアイテム」を紹介します。

北原麻央(34)
機械業務部 渉外課 

私たちの生活に欠かせない「食料」「水」「環境」の課題解決に取り組むクボタで、「スマート農業」の普及に関わる仕事をしています。「スマート農業」とは、ロボット技術やICT(情報通信技術)などの先端技術を活用し、農作業の効率化、生産物の品質向上を目指す新しい農業のスタイルです。カーボンニュートラルや人口増加による食料不足など、世界が抱えている問題解決のための方策の一つとして注目されています。日本においても、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加、食料自給率の低下などの課題を解決していくために、国が中心となって業界全体で推進しています。

人の生活の基盤になることを仕事に

高校2年生の時、家族に勧められて参加した体験入学がきっかけで、北海道大学の農学部に進学しました。大学で研究したのは、北海道十勝地方の輪作をテーマに、農家ごとの最適な作付面積比率を提案するソフトウェアの開発です。

十勝地方では、畑を分割し、数年ごとに異なる作物を育てる「輪作」を行うことよって、特定の病害虫が定着しないようにしています。でも、その面積比率は、農家の長年の経験や勘で決められたもので、どんな面積比率でどれくらいの収量や収益が得られるかがはっきりわかっている農家は少なかったんです。そこで、「輪作は維持しつつ一番収益が高い面積比率にしたい」「収益は確保しつつ労働時間が少ない面積比率にしたい」など、農家の方針に合わせた面積比率を提案できるソフトウェアの研究をしました。この研究を通して、経験や勘ではなく、データに基づいた選択ができるようになれば、農業はもっととっつきやすく、楽になり、さらに儲かる業界になるんじゃないかと思ったんです

昔から料理やフィールドワークが好きだったこと、人の生活の基盤を支える仕事をしたいという思いがあって。さらに学生時代の経験で農業業界に興味を持ちました。クボタは食料生産を支える農業機械のトップメーカーで、水や環境にも力を入れている企業。どの部署でもやりがいを持って働けると思い、入社を決意しました。

クボタで働く北原麻央さん
1890年創業のクボタは、日本で初めて水道管の量産化、農業の機械化を実現。現在は、食料・水・環境に関わる様々な課題解決に取り組むグローバル企業へと成長している

朝から日が暮れるまで農地で試験

クボタは、営農支援システムKSAS(クボタスマートアグリシステム)と、システムと連動する農機の販売を2014年に開始しました。KSASとはICTGIS(地理情報システム)技術等を活用し,農機の稼動情報と農家のほ場・作業・収穫といった情報を連携させ,様々なデータを一元的に「管理・見える化」することで「データに基づいた新しい農業経営の実現」に貢献するシステムです。

最初に配属されたのは、稲や麦を刈るコンバイン(収穫機)の開発部署です。2012年の入社当時、KSASはまだ開発段階でした。私はKSASの核となる、収穫した作物の収量(重さ)や食味(水分値、タンパク値)を刈取りしながら測る機能を備えた「KSAS対応コンバイン」の開発を担当することになりました。食味・収量センサの設計やプログラムを担当し、センサの測定精度を上げるため日々試験を繰り返す毎日を過ごしていました。

開発には現地での試験が欠かせません。まず、5月の佐賀の大麦から始まって、全国の麦前線、稲前線に沿って大きなスーツケースを持って日本中を駆け巡り、朝から日が暮れるまで農地で試験をし、夜はみんなでお酒を飲みながら意見交換。毎日のデータ整理も不可欠で、体力的にも精神的にも大変でした。でも、農機の動きを見ながら畑の横でプログラムを組んだり、改造したりしていると、「ものづくりしてるな!」という感覚があり、楽しくて。また、農家の方々の声を直接聞くという得難い経験もできました。

今も忘れられないのは、2018年にリリースを控えた新技術の試験が大詰めを迎えた201711月のこと。それまでうまくいっていた計算式に大きな誤差が表れました。開発担当としての責任を感じ、とても焦りました。何が原因か頭が煮えそうなほど考えに考え、うまくいっていた時と誤差が出た時の状況の違いに気づき、ふとひらめいたんです。急いでプログラムを書いて上司に提案したところ、「いいね、やってみろ」とアイデアを採用してもらえました。

その結果、業界初の「食味・収量メッシュマップセンサ搭載可能コンバイン」が完成しました。このコンバインは刈りながら収量と食味を測るだけでなく、高性能GPSによってほ場内の食味と収量の分布をマップとして「見える化」します。データに基づき、ほ場内の生育のばらつきに合わせた精密施肥を行うことで、より美味しいお米を安定した収量で収穫できるようになったんです。

データの見える化と蓄積は、農業を戦略的に行うことを可能にすると同時に、習熟に時間がかかるため後継者が不足しているという課題解決にも貢献します。こうしたデータ活用への取り組みを通じて、農家のみなさんを重労働から解放することで若者の参⼊を促進し、日本の農業を儲かる魅⼒的なビジネスに転換させるべく、今後も頑張りたいと思っています。

クボタで働く北原麻央さん
クボタの農機を代表するトラクタとコンバインのミニカーを並べ、それぞれの性能について熱く語ってくれた北原さん

夫と一緒に暮らすために異動を決意

6年前に結婚しましたが、私は大阪、夫は東京勤務だったので、しばらくは遠距離結婚でした。農業機械の開発は楽しい仕事でしたが、自分自身の将来を考え、夫と一緒に暮らしたいと思うようになりました。ちょうどその頃、現在の部署がスマート農業の知識がある人を求めているということで、異動することになったんです。

現在は、スマート農業技術の重要分野である、「農機の自動運転作業」や「データドリブン農業」を進めるためのルールづくりや、規制緩和の推進のために行政・国研に対するクボタの渉外窓口をしています。開発担当の頃は、ただ目の前の仕事に一所懸命でしたが、現在の部署では行政や業界の動きがよくわかり、日本や世界の農業の方向性をダイレクトに感じることができるので、これから弊社が農業にどのように貢献できるのかを日々考えるようになりました。スマート農業技術の発展が世界の環境問題や食料問題の解決に繋がるよう、力を尽くしていきたいです。

アイデアは思いついたらすぐノートにメモ

私の毎日に欠かせないのが、無印良品の「ノート型はがせるルーズリーフ」とジェットストリームの3色ボールペンです。今日すること、気になった言葉、思いついたアイデアなど、どんどん書きます。手書きのほうが、イラストや図を添えることもできて、読み返した時にその時の心情まで思い出すことができるので、議事録なども手で書いたものを後でデジタルデータに起こしています。ルーズリーフだと、後からジャンルごとに分類してファイリングできるのが便利。ノートを使っていた時は、どこに書いたかわからなくなって探すのに苦労していました。

ジェットストリームはどんな体勢で書いてもかすれることなく、入社以来ずっと愛用しています。畑の中でなくしてしまいがちだったので、常に何本も持ち歩くようにしているんですよ。

子どもが生まれ、家族3人で過ごす時間が多くなりました。先日、子どもが初のキャンプを体験。一緒に焚火をしたり、川で遊んだり、とても楽しかったです。社会人として自分に自信を持っていたいのはもちろんですが、妻として、母としての時間も大切にしたいと思っています。

(読売新聞メディア局 深井恵)

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