片づけで世界を救うこんまり「仕事漬けの人生、想像してなかった」

片づけコンサルタントとして1000以上の部屋を片づけてきた、“こんまり”こと近藤麻理恵さんの実体験をもとに、映画プロデューサーで小説家の川村元気さんが紡いだ、片づけとモノと記憶にまつわる共作小説「おしゃべりな部屋」(中央公論新社、税込み1760円)が刊行されました。2010年に「人生がときめく片づけの魔法」を刊行して以来、世界で注目を集める近藤麻理恵さんに、読売新聞での連載時から話題を呼んだ本作のこと、さらに片づけコンサルタントを目指したきっかけや、仕事と子育ての両立などについても聞きました。

――小説「おしゃべりな部屋」の主人公・ミコは、服を手放せない主婦、なんでもため込んでしまう夫婦、好きなものが見つけられない少女など、さまざまな背景のある依頼主の片づけを手伝います。ファンタジックなストーリーに引き込まれました。

「人生がときめく片づけの魔法」を出版してから約12年が経ち、多くの人に「こんまりメソッド」の存在を知っていただけた一方、「メソッドは知っているけれど、まだ片づけが終わっていない」という方も多いのではないかと感じます。

「おしゃべりな部屋」は、片づけと人生に悩む登場人物たちのストーリーを通じて、自然に片づけを学びながら、片づけのモチベーションをアップすることができる一冊です。家で過ごす時間が増えているこの時期に、この本が自分の持っているモノや人生を見つめ直すきっかけになったらうれしいです。

5歳で片づけに目覚めて

――片づけに興味を持ったのはいつ頃からですか?

家事全般にすごく興味があって、母が定期購読している婦人雑誌を5歳の時から愛読していました。一人でお留守番している時も、勝手にキッチンを磨いておくのが好きで。ちょっと変わった子どもだったんです(笑)。料理やお裁縫は母から習い、練習すればするほど上達しました。高校生の時、アニメ「ONE PIECE」に出てくるチョッパーのぬいぐるみを妹に作ってあげたことを今でもよく覚えています。

小学校では片づけ係で、図書室の本を整えたり、教室のロッカーを整頓したりと、友達と遊ぶよりも一人で過ごすことが多かったです。でも、片づけはやってもやってもうまくならなかった。片づけの作業は楽しいのですが、時間がたつとまた散らかってしまうのはどうしてなんだろうとずっと疑問に思っていて。そんな時に目に留まったのが、当時ベストセラーだった「『捨てる!』技術」。実践してみたら捨てることの威力に目覚めてしまい、15歳の時から本格的に片づけの研究を始めたんです。

転機になったのは、高校2年の時。捨てることに必死になりすぎて、片づけノイローゼのようになっていた私は、片づけをしている部屋で失神してしまいます。でも、目が覚めた時、「捨てるモノ」よりも「残すモノ」が大切なのだということが自然と理解できました。それが、手に取ってときめくモノだけを残すという現在の「こんまりメソッド」のベースになっています。

大学進学後、19歳の時に片づけコンサルタントとしての仕事をスタート。と言っても、まずは友人などの部屋を片づけさせてもらうところからで、最初は手探りでしたね。場数を踏んで失敗を重ねる中で、少しずつメソッドが確立していきました。

その後、人材紹介会社の営業職につきましたが、片づけの仕事も平日の出勤前と土日を使って継続していました。会社の上司や、仕事がご縁で知り合った会社の経営者の方などに片づけレッスンをさせていただいていましたが、若くて体力があったからできたのだと思います。それでもかなり無理をしていて、半年くらいで限界を感じました。

心や人生をよりよくする

――2009年に会社を辞めて片づけコンサルタントとして独立、翌年には「人生がときめく片づけの魔法」を出版されました。

幸いなことに片づけレッスンが好評で、予約が取りづらい状態になってしまって。お客様からメソッドを本にしてほしいという要望があったので、本を作るためのセミナーに通い、企画書作り、タイトルのつけ方、メソッドをキャッチーに紹介する方法などを学びました。

2010年に初の書籍を出した時、私自身は海外進出なんてまったく考えていなかったのですが、出版社の方が熱心に翻訳を勧めてくださったおかげで、2014年には英訳版が出版され、ニューヨーク・タイムズ紙で70週連続1位を獲得。以来、40か国以上で翻訳版が誕生しています。

これほどの反響を呼んだのは、私の力というよりも、片づけの力です。本を読んで片づけてみたら本当に人生が変わったと、口コミで広がったことがヒットの理由ではないでしょうか。「こんまりメソッド」が単に物理的な収納テクニックではなく、心や人生をよりよくするための一つの手法であり、精神的なものであるということを理解していただけたと実感しています。

新刊「おしゃべりな部屋」を刊行した近藤麻理恵さん
「目標は世界の片づけを終わらせること」と語る近藤麻理恵さん

3人の子育ても夫婦共通のビジョンで

――2019年、Netflixで「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~」が世界配信され、片づけることを表す「Kondoing」という新語まで誕生。現在は日米2拠点で活動されていますが、仕事と家庭の両立は大変では? 

もともとは主婦になると思っていたので、こんな仕事漬けの人生は想像していませんでした。海外での本のヒットを受けて出張が多くなり、子どもを預ける時間があまりに長くなってしまって。2016年に家族全員でアメリカへ移住することを決めたんです。

6歳、5歳の娘2人と、来月1歳になる息子がいますが、子育てで忙しくて寝る時間も少なく体力的に楽ではありません。公私ともにパートナーである夫の存在は大きいですね。今は2人とも疲れていて目がうつろですが(笑)。

仕事とプライベートのバランスは状況に合わせて常に変えていくべきだと思っています。今は意識的には家庭中心。家族のための時間を確保した上で、仕事の調整をしています。ずっと忙しくて、大事なものを置き忘れてきてしまいました。もっと子どもたちに本を読んであげたいし、お裁縫も教えてあげたい。最近はお料理も一緒に作っています。

――夫婦で家事分担などは決めているのですか?

新婚当時はかっちり決めていました。夫がエクセルで家事一覧表を作って、どちらが何をどれくらいしているかを可視化。何がお互いの強みを生かせるのかをすり合わせました。お風呂掃除が終わったら印をつける、やってもらったらありがとうとメッセージを入れる。ゴミ箱にゴミ袋をセットするなどの小さなことでも。

その作業を経て、どれくらいの家事があり、どういうバランスでするべきかがわかったので、現在は特に分担は決めなくても、子育ても家事もとてもナチュラルに自分事としてできています。お互い手伝うという感覚は皆無ですし、ジェンダーもまったく意識していません。お母さんだから、お父さんだからこれをする、ということはないです。夫婦で一緒に仕事をしながら、「家庭のバランスを保てるようにしよう」という共通の目的とビジョンを持てているのがありがたいですね。

――お子さんたちも片づけは自分で?

私が片づけるのを見て、自然に一緒にやるようになりました。お姉ちゃん2人は、洗濯物を自分で畳んで引き出しにしまいますし、着るものも毎日自分で決めています。こちらが手をかけずにいたので自分で選ぶしかなかったんでしょうけど。びっくりしますね、子どもの成長には。 

子どもたちには、自分のことを自分で決められる人になってほしいです。片づけをすることで、判断力、決断力が磨かれていると思います。それぞれが自分の好きなものを見つけたら、どんなことでも後押ししたいです。

(聞き手・読売新聞メディア局 深井恵 撮影・八木沼卓)

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近藤 麻理恵 (こんどう・まりえ)
片づけコンサルタント

幼少期より片づけ研究を始め、独自の片づけ術「こんまりメソッド」を確立。2010年に出版した著書「人生がときめく片づけの魔法」が世界40か国以上で翻訳出版され、1300万部を超える大ベストセラーに。2015年、米「TIME」誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選出される。2019年、Netflixで「KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜」が配信され、同年エミー賞2部門にノミネート。2021年には新シリーズ「KonMari〜“もっと”人生がときめく片づけの魔法〜」の配信がスタート。プロフェッショナル育成にも力を注いでおり、「こんまりメソッド」を習得した850人以上の「こんまり流片づけコンサルタント」が世界60か国で活動している。

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