社会人の学び直し「リスキリング」…高度なスキル習得を企業も後押し

知識やスキル(技術)の学び直しが広がる中、より高度なスキルや新たな考え方を学ぶ「リスキリング」に取り組む社会人が増えている。コロナ禍の影響や65歳以降も働き続ける人が増えるなど、働き方が変わりつつあるためだ。「今ある仕事も消滅するかもしれない時代。誰もが学び直しに挑戦する意味がある」と専門家は指摘する。

就業時間に参加

「商品販売だけの営業では展望がないと思っていた。顧客の心理なども学んだことで、顧客と会社双方の長期的な利益を考えた効果的な営業ができるようになりました」

「損保ジャパン大学」での学びを他の社員に伝える中川さんのスライド(提供画像)
「損保ジャパン大学」での学びを他の社員に伝える中川さんのスライド(提供画像)

「損害保険ジャパン」(東京)で、大阪の自動車ディーラー向け営業を担当する中川量智(かずとも)さん(34)は、リスキリングの成果を実感している。同社が2020年に設立した学び直しの場「損保ジャパン大学」で、半年近くマーケティング(市場調査・戦略)の演習にオンライン参加した。受講は就業時間内だが、同社が推奨しており、周囲の理解もあった。「さらに組織運営なども学びたい」

リスキリングは主に現役の社会人が対象だ。コロナ禍でオンラインの業務が増えるなど、社会が大きく変化した。現役社会人にもより高度なスキルや、従来の枠にとらわれない発想が必要だと考えるようになっていることが、リスキリングが注目される要因の一つだ。企業も将来を見据え、従業員の学びを積極的に後押ししている。

特に注目されているのが急速に進むデジタル化への対応だ。日立製作所など日立グループで人材育成を行う「日立アカデミー」(東京)は、業務へのアプリ活用、プログラミングなど、様々なレベルの講座を20年度から本格的に運用する。スキルがレベルアップすると大きな事業に参加する資格が得られるなど、リスキリングの成果が仕事に直結する仕組みもある。

こうした動きはさらに加速するとみられる。転職サイト運営「ビズリーチ」(東京)が21年10~11月に実施した調査で、30代以上の同サイト会員970人のうち、「リスキリングに取り組んでいる」人は55%。企業経営層らへの調査では、今後取り組む予定も含め、半数以上がリスキリングの必要性を認識していた。

中央大学教授(労働経済学)の阿部正浩さんは、「自分自身を常に高め、自律的にキャリアを形成することが求められている。企業側も従業員のリスキリングの成果を報酬アップや待遇改善につなげるなどの仕組み作りが課題だ」と話す。

変わる働き方

今後は長く働くことが当たり前になっていくだろう。働きながら学び直すことは誰にとっても欠かせない。

日本総合研究所の主任研究員、安井洋輔さんは「誰もが高度な情報技術のスキルを身につける必要はない。自分に何が必要かよく考えることが第一歩」と呼びかける。

現在求められるスキルや、それをいかせる仕事について改めて見直してみよう。安井さんが勧めるのが、厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」などを活用して、様々な仕事を調べること。そのうえで、職業訓練の各種給付金を活用すれば、初期投資を抑えて学び始めることができるという。「自発的に学び直しに取り組む環境は整いつつある」と話す。

社会人の学び直しの注意点
・今の自分に何が必要かを最初によく考え、目標から逆算する。
・職業について学べるサイトなどを活用する。変化の大きな時代になり、将来の見通しを知ることが欠かせない。
・学び直しのための国の給付金や補助などもある。上手に活用して自己負担を抑えられると取り組みやすくなる。
(安井さんの話を基に作成)

(読売新聞生活部 福士由佳子)

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