「黒歴史になってもいい!」卒入学シーズンに蘇る制服の思い出とは

卒業入学シーズンだ。保育園に通う年少の娘は、年長さんたちの卒園を祝う会に参加した。近所に住む、ほぼ親戚のような存在の友達の子供も4月から小学校に入学する。大学を卒業してから縁のなかった、このシーズンのソワソワ感、切ないような、さみしいような気持ちを久しぶりに身近に感じている。

そんな時、気になるニュースが目に留まった。大分県に住む弁護士の父親が、息子が進学予定の公立中学校の身だしなみに関する規定が、生徒の人権を侵害しているとして民事調停を起こしたというものだ。制服は男女別、後ろ髪が襟にかからない髪形、靴は白のひも付き運動靴といった校則で、一般的な公立中にはよくあるレベルではないかと思う。

そのニュースを読むうちに、自分の中学時代の校則にまつわる記憶がよみがえり、胸がキューッと苦しくなってきた。

中学時代は、好きでもない制服を着なきゃいけないのだから、着方や、あわせる小物くらいは自分で工夫して個性を主張したいと思っていた。かといってギャルのような超ミニスカートにルーズソックスだったわけではない。「規則内ギリギリOKかな?」と思われるレベルでスカートを短くしたり、規則がなかった冬のカーディガンやマフラーを好きなブランドにしてみたりしていた。指定バッグにはお気に入りの缶バッジやキーホルダーをつけ、マジックで絵を描いた。白色指定のソックスは、当時好きだった「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のワンポイント刺しゅうがついたものを選んだ。

中学3年になり、ジャケットを着ないで、カーディガンだけで過ごしていたら、「ジャケットを着なさい」だったのか、「スカートが短い」だったのか忘れたが、先生に服装を注意された。

校則に対して初めて、「なんで守らないといけないの?」という疑問がわいて、反抗したら、当時20代だったであろう若い担任の先生が、話し合いの時間を作ってくれた。「これから先も、守らなきゃいけないことはたくさんある」とか、「服装の乱れは心の乱れ」とか、先生はそんなふうに言ってくれたと思う。自分が正しいと思っていたから、泣きながら、理解できないと反発し、話し合いは平行線だった。結局、「なぜこの校則があるのか」「なぜ守らないといけないのか」という疑問に対する納得がいく答えは見つからなかった。

新「ゴシップガール」の制服着崩し

「息子のために行動を起こしたお父さんはすごいな」と感じ、冒頭のニュースの話を夫にしてみた。賛同してくれると思いきや、意外な答えが返ってきた。「そりゃ校則で決めとかなきゃ、どんどんみんな派手になっちゃうじゃん。いきがっていたらヤンキーに絡まれるよ」。ややヤンチャな地域で学生時代を送っていた彼ならではの答えなのかもしれない。

中学時代の私は、別に反抗したかったのではない。好きな格好をしたかっただけだ。それぞれが好きに髪の色を変えられ、制服だって、個人が自由に選択できればいいと思っている。校則に縛られることがなかったら、もっと違った学校生活の楽しみもあったんじゃないか。たとえやりすぎたファッションが「若気の至り」とか「黒歴史」と言われても、経験した方が絶対いい。

昨夏から日本でも配信されているアメリカの人気ドラマ「ゴシップガール」新シリーズの登場人物の着こなしがかっこいい。ニューヨークを舞台にセレブな高校生たちを描いた作品で、女子高生たちは制服を個性的に着こなす。

例えばシャツにタイをしめ、バイカーショーツにウエスタンブーツを合わせたり、超ハイヒールにカラフルなタイツを組み合わせたり。スウェットのパーカとプリーツスカートの足元はコンバットブーツなど、本当に自由で、高校生の制服という枠にとらわれないスタイリングアイデアと個性にあふれている。

日本でも、最近は女子がスラックスを選べる学校が増えるなど、制服の見直しの動きはあるようだ。自分の娘が中高生になるころは、どうなっているのだろう。

ゴシップガールの制服のように自由になっているだろうか。ファッションブランド「ミュウミュウ」の今季のコレクションのように、シャツやニットをカットしている学生とかいたらかわいいだろうな。オーバーサイズのジャケットとスラックスに、シャツにタイをしめて、思いっきりメンズっぽく着て、リップは濃いめの赤にするのもいい。学生からの発信でモードなトレンドも生まれるかもしれない。考えるとどんどんアイデアが浮かんでくる。

オピニオンの執筆者、スタイリスト入江陽子さんによるスタイリング(読売新聞「大手小町」)
ダンス&ボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」を入江さんがスタイリングした「NYLON JAPAN」2021年11月号(NYLON JAPANのインスタグラムより)

そして将来、娘が納得できないことがあったときは、「規則だから」などと言って片付ける親にはなりたくない。どんなに若気の至りや黒歴史になろうとも、娘の好きなことを信じて見守ってあげたいし、そんな環境を作ってあげられたらいいなと思う。

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入江陽子さん顔写真
入江 陽子(いりえ・ようこ)
スタイリスト

1985年、広島県生まれ。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。スタイリスト長瀬哲朗氏のアシスタントを経て2013年独立。「NYLON JAPAN」や「GINZA」、「装苑」などのファッション誌や広告、アーティストのスタイリングなどを手がけている。

入江さんのインスタグラム

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