北陸新幹線の延伸を控えた恐竜王国・福井にリケジョが集まる理由

長い歴史の中で定着してきた名所や特産品は各地にいろいろとありますが、なかには、短期間に築きあげられたブランドもあります。「恐竜王国・福井」もその一つです。

昨年12月、大阪本社から福井支局に転任になり、最初に目についたのが恐竜でした。JR福井駅から街に出ると、巨大な恐竜モニュメントが迎えてくれます。鳴き声を上げながら動き、観光客らが写真撮影をしています。

30年前、新人記者として赴任したのも福井でした。福井県東部の勝山市で第1次発掘調査が始まり、恐竜の化石が見つかった時期です。スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ジュラシック・パーク」が公開されて「恐竜ブーム」になり、注目を集めました。とはいえ、他にも化石が発見された地域があり、福井と恐竜は今ほど強いつながりではありませんでした。

私が福井を離れたあとも調査は続き、新種の恐竜が次々に見つかりました。現在は第4次調査中です。2000年には発掘現場の近くに県立恐竜博物館が開館し、コロナ前は年間94万人が訪れていました。
恐竜博物館外観

雪国の中でも山間部にある勝山市は特に雪深いところです。3月初め、福井市中心部から電車とバスを乗り継いで博物館に向かいました。雪景色の中に銀色のドーム形の建物が浮かんでいます。恐竜の卵のような館内に入ると、展示室に福井を含め、世界で発掘された恐竜の全身骨格が並んでいました。コロナで完全予約制となり、入館者は年間36万人ほどに減少しましたが、家族連れのほか、若い男女や女性のグループも目立ちました。

研究者や学芸員の中にも女性が増えてきたといいます。静谷あてなさん(32)は宮城県出身。東北大院で地球化学を研究し、2018年から同館の研究員を務めています。約1億2000万年前に恐竜がどんな気候や環境の中で生きていたかが気になるといいます。「背景こみで生き物としての恐竜の姿を想像すると楽しい」と話します。

恐竜博物館
恐竜博物館で働く(右から)蘇さん、静谷さん、小泉さん

学芸員のりょうさん(33)は台湾出身で、幼い頃から恐竜に憧れていたそうです。「子どもにとって科学の入り口の一つが恐竜。恐竜に関心をもつと、科学への関心が高まる」。福井出身の学芸員・小泉早千穂さん(26)は県外の大学院で地質学を学び、昨春、同館に就職しました。子どもたちが対象の工作教室などを運営しており、女児が半数近くになることもあるといいます。「みんなに興味を持ってもらえるよう、恐竜の面白さ、奥深さを伝えたい」

人口減少が続く地方で観光客を集め、若い人材も引き寄せる恐竜。「パワーがあるから。地元の財産であり、観光やまちづくりに役立つといい。そうなることで研究もまた進む」と、静谷さんは言います。

今、福井では、東京から金沢まで走っている北陸新幹線が県内に延伸される2024年春に向けて、様々なプロジェクトが進んでいます。県立大が恐竜について学べる国内初の恐竜学部を25年に新設し、博物館の横に新キャンパスを設ける計画もあります。この30年の間に築かれた王国は、さらに多くの人を引きつけ、人材を育てることができるのでしょうか。福井支局の記者たちと取材をしていきたいと思います。

いま気になっているモノ、ヒト、コトを取り上げ、時代や社会を読み解く「オピニオン」は、30代の俳優、タレント、起業家、スタイリストらが執筆しています。

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沢田泰子編集委員
沢田 泰子(さわだ・やすこ)
読売新聞大阪本社福井支局長

1968年、大阪生まれ。91年に読売新聞大阪本社入社。福井支局、京都総局、大阪本社社会部、東京本社教育部を経て、2016年より大阪本社生活教育部・編集委員、21年12月より現職。主に行政や教育分野を担当してきた。誰もがのびのびと力を発揮できる社会になるのが夢。女性を含むマイノリティーの生き様に日々、勇気づけられている。

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