発達障がいかも? 受診は支援してくれる仲間探し

日本中に「発達障がいではないかな。どうしたらいいのかな」と我が子のことで悩んでいるお母さん、お父さんがいると思います。病院を受診するのは医師の私でも気の重たいことです。でも、相談することで道が変わるかもしれません。A君もそうでした。

高校1年のA君が家族と外来を訪れたのは3学期に入ったばかりでした。そこには学校の先生もいました。「授業中はボーッとしているし、宿題も真面目にやってこない。成績も悪いので、このままだと退学にせざるをえない」と先生。退学させるにあたり、病気ではないことを確認しに来たとのことでした。話を聞くと、

(本人)非常に努力しているが、集中しようとしても集中できない。それにより宿題に時間がかかり、翌日、提出できない。テストも集中する努力をしても回答に時間がかかり過ぎて点数が取れない。

(家族)幼い時から宿題に時間がかかり、自分の好きなこと以外は集中できなかった。さらに片付けが苦手で忘れ物が多かった。

以上から10分で診断はつきました。「注意欠陥・多動性障がい(ADHD)」の「不注意型」。

冷や汗が出てきました。退学になれば、この生徒の人生を崩壊させてしまう可能性があります。「退学は待ってください! 投薬で必ず改善しますから!」。問題は薬代と薬の調整に時間がかかること。ADHDの薬は月に何万円もするため「自立支援医療」の手続きが必要で、認定されるまで月日がかかります。副作用が出ないように少しずつ増量するので、最低1か月はかかります。

子育て応援団コラム 、淀川キリスト教病院医師谷均史さん 大手小町 読売新聞
(c)いわみせいじ

ADHDで退学に

幸い、最初から少しずつ効果がでてきて、診断も間違っていませんでした。ただ、残念なことに学校側はそれが待てず、退学になってしまいました。お母さん、お父さんは沈んだ声でこう訴えました。「勉強できなくても幸せに過ごしてきたのですが、つらいです。助けてください!」

ご両親の思いを受け止め、私はA君に言いました。「心配するな。絶対良くなるから。来年、もう一度高校受験しよう!」。その後、順調に薬の調整ができて、A君の集中力は人並みになってきました。「先生! 勉強に集中できるのが自分でもわかります。絶対に高校受かりますから」。心強い言葉でした。翌年、同じ高校の別の学科に合格。しかも入学後の成績も常に学年の上位で、部活動も楽しく過ごしました。

子育て応援団コラム 、淀川キリスト教病院医師谷均史さん 大手小町 読売新聞
(c)いわみせいじ

退学という地獄につき落とされながらも、家族とともに見事にい上がったA君。病院に行くのは、診断や治療を目的とするのではなく、「一緒に子どもを支援してくれる仲間探し」と思ってくださればと考えています。最初から相性の合う医師またはカウンセラーなどと出会えなくても、仮に病院をはしごすることになっても、一緒に支援してくれる仲間は必ず見つかると思います。A君が高校1年生で私と出会ってくれたように。

◇ ◇ ◇

「子育て応援団」のコーナーでは、子育て支援の専門家や医師、タレントらがリレー方式で、働きながら子育てをするママやパパに向け、元気が出るメッセージや日々の暮らしに役立つ知識を盛り込んだコラムを掲載します。

あわせて読みたい

子育て相談アドバイザーの谷均史・淀川キリスト教病院医師
谷 均史(たに・ひとし)
淀川キリスト教病院医師

1956年、大阪市生まれ。12歳の時、腎炎で入院中に、小児科がない鹿児島県・徳之島から入院していた5歳児と出会い、医師になる決心をした。新潟大医学部卒業後、徳之島徳洲会病院を経て、91年から淀川キリスト教病院に勤務。現在も徳之島と大阪を行き来し、発達障がいの子どもを支援するボランティアや講演活動に励む。朝日放送のバラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」の医学顧問を務めるなど、テレビへの出演も多数。

Keywords 関連キーワードから探す