【国際女性デー】畑で輝く女性、アイデアと実行力で勝負

3月8日は国連が定めた「国際女性デー」だ。国内外でジェンダー平等への関心が高まる中、男性中心だった分野に風穴を開け、現状を打破しようとする女性が増えつつある。飛躍する女性たちを紹介する。高齢化や担い手不足など課題が多い農業。そんな中、アイデアと実行力を武器に畑で輝く女性がいる。

評判野菜、直売所に行列

ニョキッと土から顔を出す赤紫の大根に、色とりどりのミニトマト――。川崎市の田辺農園5代目、久保美幸さん(35)のインスタグラムには、直売所で販売する迫力満点の野菜の写真が並ぶ。

2016年、急逝した父の後を継ぎ、専業主婦から転身した。野菜作りは初心者。慣れない畑仕事に半年で体重は10キロ近く減り、当時1歳の長男をおぶって畑に立つと、周囲から「本当にできるの」と言われ、悔しい思いもした。

野菜を解説した手作りのカードを手に、「野菜に興味を持つきっかけも作りたい」と話す久保さん(川崎市で)
野菜を解説した手作りのカードを手に、「野菜に興味を持つきっかけも作りたい」と話す久保さん(川崎市で)=米田育広撮影

知識や経験はベテラン農家にかなわない。悩んでいた時、テレビで白いピーマンを見てひらめいた。野菜嫌いの小学生を持つ母としても、「見て楽しい、食べておいしい野菜」作りを目指すことに。生産は16年度の30品種から21年度は160品種に増やし、22年度は200品種が目標だ。

評判が徐々に広まり、直売所にはプロの料理人が訪れ、人気の野菜を買い求めようと行列ができることも。今は、「この大根はおでんが絶対おいしい」などと自信を持って客に声をかけられる。常連の女性(38)は「ここに来ると珍しい野菜が買える。料理の楽しみが増しました」と喜ぶ。

SNSで同年代の全国の農家と栽培方法や種の仕入れ先なども情報交換する。農園は1人で営むが、多くの人とつながり、支えられている。

「お客さんからの信頼がやりがい。次の目標はオリジナルの品種を作ること。田辺農園のあの野菜が食べたいと言ってもらえるのが夢です」

ハウス栽培、1人で挑戦

「私の経験が、女性の就農者が増えるきっかけになれば」。北海道石狩市で約2年の研修を経て、21年3月に独立して就農した廣井佳蓮さん(25)はほほ笑む。

「今年は雪が多くて大変です」と話し、ハウス周りを除雪する廣井さん。
ハウス周りを除雪する廣井さん。「今年は雪が多くて大変です」(提供写真)

長野生まれ、新潟育ちだが、「農業で自立したい」と農業や酪農などを学ぶ北海道の大学に進学した。在学中から女性1人でできる農業の形を模索。小規模でも高単価の作物を栽培できるハウス栽培に照準を定めた。

しかし、新規就農に向けた自治体や農協の研修の多くは単身女性は想定外で、門前払いもしばしばだった。

ようやくたどり着いたのが石狩市農業総合支援センター。大学3年の秋から面談を重ね、就農が決まった。センターの担当者は「廣井さんの熱意が受け入れの理由。担い手不足の中、性別や年齢で断るのはもったいない」と話す。

融資を受けて設備を整え、4棟のハウスでミニトマトを中心に育てる。初年度は6トンの収穫目標をほぼ達成。今春にはもう1棟ハウスを増やす。繁忙期にはパートも雇い、経営者としての自覚も深まった。理想とする先輩のトマトの味に少しでも近付きたい。

「50年農家をやると決めている。石狩のトマトを広めるためには作り手も増やさないと。私も役に立ちたい」

新規の自営就農、女性は7%増加

農林水産省によると、自営農業を行う「基幹的農業従事者」(2021年2月)のうち、女性は4割を占める約51万人だった。ただし7割は65歳以上だ。

新規自営農業就農者全体は20年の調査で前年比6%減だが、女性は同7%増の1万550人。農水省は13年から「農業女子プロジェクト」を展開し、就農女性の増加に向け、企業や教育機関との連携強化などの支援を行っている。(読売新聞生活部 野倉早奈恵)

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