【国際女性デー】ユニリーバ・島田由香さん「やってみよう。何とかなる」

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス人事総務本部長の島田由香さん(48)は、働く場所や時間に縛られない勤務制度を導入するなどして、注目を集めている。3月8日の「国際女性デー」を前に、30代女性への助言を聞いた。

島田由香さん
吉川綾美撮影

思い込み気づく

人の感情や意欲に興味があり、ずっと人事に関わってきました。

米国企業の日本法人で働いていた時、30歳で息子を出産。それから3年ほどは、子育てと仕事の両立に悩みました。家が散らかっていたり、食事を作れなかったり。仕事に没頭して、保育園のお迎えを忘れたこともありました。その度に、仕事を辞めるか、勤務時間を減らすべきかと迷いました。

幼い息子が夜中に起きて泣き出し、怒ってしまったこともあります。そんな自分にハッとして、「ちゃんとするのはやめよう」と思ったのです。良い妻、良い母、良い社会人――。どれもちゃんとしたかったけれど無理でした。

先輩女性の助言を受け、取り入れたのが家事代行サービスです。「妻としてダメなことでは」と抵抗がありましたが、夫は「いいんじゃない」と肯定的。思い込みに縛られていた自分に気づかされました。

自己表現の場

その後、転職したユニリーバでは2016年に、社員が働く場所や時間を自由に選べる新しい人事制度を導入しました。理由を問わず、自宅やカフェなど会社以外の場所で勤務できるものです。自分らしくいられるときこそ、能力を最大限に発揮できるからです。

島田由香さん
島田由香さん

私自身も、新卒で入った人材会社の新人時代、朝の満員電車が苦痛で、時間をずらして出社してもいいかと上司に尋ねたことがあります。寛容な人で受け入れてくれました。結果さえ出せば、いつ、どこで働いてもいいんだ、という思いを強くしました。

今は、ワーク・ライフ・バランスより、「ワーク・イン・ライフ」を提唱しています。仕事を人生の一部ととらえ、いきいきと働き、人生を豊かにしてほしいという思いを込めています。仕事は、お金を稼ぐ手段として我慢してやるものではなく、自己表現の場なのです。

コロナ禍の影響でテレワークが一気に広がり、働き方や人生を見つめ直した人もいるでしょう。自分はどんな人生を生きたいのか。ぜひ、前向きに考える時間をとってみてください。

何かを我慢するのではなく、好きなことをしている時こそ、能力を発揮できる。その好きなことでお金をもらえたら最高です。「できるかな」と心配事にエネルギーを使うのはもったいない。「やってみよう。何とかなる」と考え、行動してみませんか。

◇  ◇  ◇

【取材後記】

鮮やかな黄色のニット姿で現れた島田さんは、ざっくばらんで快活な語り口が印象的だった。島田さんは、2020年に採用選考の履歴書から性別欄や顔写真をなくすなど、斬新な人事施策を次々と打ち出してきた。いずれも、社員一人ひとりの「自分らしさ」を尊重するという考え方が貫かれている。

「心理学を学んだからですか」と尋ねると、意外な言葉が返ってきた。

中学生時代、同級生からいじめを受け、暴力をふるわれる度に「ごめんね」と繰り返していた。だが、あるとき「悪くもないのに謝るのは、自分に失礼だ」と思い、謝るのをやめた。島田さんの態度が変わると、逆に同級生たちは謝ってきたそうだ。

以来、人にどう思われるかは気にしないという。「我がまま、私のままでいることを大切にしたい。自分が幸せじゃないと、人を幸せにできないから」と、笑顔で語ってくれた。自分らしさを互いに認めることが、多様性を重んじるユニリーバの社風の土台になっていると感じた。(読売新聞経済部 青木佐知子)

「30代へのエール」は、各界で活躍する女性たちにキャリアの転機とどう向き合ったかを、読売新聞の30代の女性記者たちがインタビューする企画です。

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島田由香(しまだ・ゆか)

1973年、東京都生まれ。慶大卒。人材会社パソナを経て、米コロンビア大学院で組織心理学修士取得後、日本GE入社。2008年、ユニリーバ・ジャパンに移り、14年から現職。

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