副業・兼業を認めている企業は22%、メリットや今後を専門家に聞いた

本業以外の会社や組織で、スキルや趣味を生かして副業や兼業をする人が増えている。なぜ今、こうした働き方が注目されるのか。副業が社会に与えるメリットや、今後広がっていくのかなどを、労働経済学が専門の中央大学教授、阿部正浩さんに聞いた。

中央大教授の阿部正浩さん
中央大教授 阿部正浩さん(佐藤俊和撮影)

兼業や副業は昔からあります。農家は兼業が多いし、自営業も副業の多い分野です。

最近、注目されている背景には、2017年に政府が働き方改革の一環として、兼業・副業の普及促進を掲げたことがあります。その結果、これまで副業に制限をかけてきた企業が社内規定などを見直し、会社員も副業しやすい環境が整いつつあります。

本業にも刺激

《厚生労働省は18年、副業・兼業の指針を作成。企業には自社の業務に支障がない限り、原則、これらを認めるよう促し、働く人には秘密保持義務への注意などを呼びかけた。経団連も21年、副業・兼業の促進に向けた報告書をまとめた》

もともと日本の職業訓練はOJT(職場内訓練)が中心でした。しかし、最近は経験や勘より、専門知識が必要な仕事が増え、学校などで行う研修や教育が重要になっています。ところが、厚労省の能力開発基本調査をみると、社外での研修に費用を出した企業の割合は10年以上、50%ちょっとで横ばいが続いています。企業に余力がなくなっていることがうかがえます。

そこで、労働者に副業を通して新しい考え方や知識を学び、スキルを高めて成長してもらう。そこから本業の成果につなげたり、新たなビジネスが生まれたりする――。それが、政府が新しい働き方として進めようとしている副業・兼業の姿なのでしょう。

こういう働き方を突き詰めた会社に、アソブロック(東京)があります。ここは社員が経験を積んで成長するために兼業を「必須」にしています。出社時間は自由で、何をしてもかまわない。企画や出版、研修など多様な事業を手がけていますが、社員が自分で課題を見つけてきて事業を生み出しているんです。

ただ、副業・兼業が好循環を生むためには、労働時間も含め、社員の自由度をかなり高めないとだめでしょう。本業での縛りがあると、働き過ぎなどの問題も起きがちです。

所得不足補う側面も

《パーソル総合研究所の「第2回副業の実態・意識に関する定量調査」(21年)で、副業している正社員男女1703人に動機を聞くと、「副収入を得たい」が70.4%で最多。「本業の収入だけでは不十分」も59.8%で3番目に多かった》

副業が注目されるもう一つの背景が、長期的な所得の伸び悩みです。コロナ禍では、仕事が減って生活が苦しくなった人も多い。同時に、在宅勤務になって通勤時間が浮いたといった事情もあり、家計を補う副業が増えているのではないでしょうか。

今、30分や1時間といったすきま時間のアルバイトが注目されています。スマートフォンの位置情報を使って、ちょっとした空き時間に働きたい人と、その時間にできる仕事をマッチングする。商品を並べるなどの単純作業が中心ですが、人手不足で需要が高い。政府が目指すパターンではありませんが、こういう副業も増えていくと思います。

《経団連の20年の調査では、副業・兼業を認めている企業は22%と多くはない》

今後、副業が本格的に普及するかどうかは、起業や転職のしやすさによっても変わってくると思います。副業で経験を積んでから起業・転職する人がもっと増えれば、副業の意義が理解されていくでしょう。

職場の意識も影響します。本業を定時に終えて副業した場合、周囲の目にはどう映るでしょうか。長時間働くことが評価基準になっているような職場では、副業の時間を作ることは難しい。制度が整うことのほかに、こうした意識の問題も大きいと思います。

副業や兼業に積極的に取り組むかどうかは個人の考えにもよります。新しいことを始めるのは簡単ではありません。ただ、副業なら失敗しても本業があります。やれる土壌はできつつあるので、今とは違う仕事にチャレンジしてみるのもいいかもしれません。(聞き手・読売新聞生活部 樋口郁子)

兼業・副業の制度の効果は?

リクルート(東京)が20年12月~21年1月に行った調査で、「兼業・副業の人事制度がある」と回答した人事担当者396人に効果(複数回答)を聞いたところ、「従業員のモチベーション(意欲)が向上した」が47.5%で最多だった。「従業員の収入増につながった」(44.4%)、「従業員のスキル向上や能力開発につながった」(33.8%)、「働き方改革が促進された」(30.8%)などが上位にあがった。

リクルートが調べた兼業・副業の効果の結果を示すグラフ。モチベーション向上が約48%

阿部 正浩(あべ・まさひろ)
中央大教授

1966年、福島県生まれ。電力中央研究所社会経済研究所主任研究員、独協大教授などを経て2013年から現職。専門は労働経済学、経済政策論。著書に「日本経済の環境変化と労働市場」「職業の経済学」「多様化する日本人の働き方――非正規・女性・高齢者の活躍の場を探る」など。

聞き手から 政府が目指す副業・兼業を実践できる人は少数派だろう。とはいえ、自分のスキルを「社外でも通用するか」という視点で見つめ直してみることは悪くない。昔から「新聞記者は潰しがきかない」(他の仕事で通用しない)と言われるけれど、何かできることはないか考えてみようか。

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