メンズ脱毛の流行でツルツル男子増加は「男らしさ」の危機か?

日本に来た外国人のカルチャーショックといえば、「コンビニが多い」「街がきれいだ」「接客サービスが良い」など“あるあるネタ”が豊富だが、その中の鉄板ネタとして「毛の処理完璧すぎる女性多い問題」がある。

飲みの席で、外国人男性が「日本の女性は体毛が生えないようだ」と言うことがあるが、そのくらい「体毛がない」ことが日本人女性の“常識”のように受け止められている。

一方、日本人からは「海外の人って、下の毛ツルツルなんでしょ?」と聞かれることが多いので、日本ではむしろ欧米人の方が毛の処理をしているイメージがあるのかもしれない。確かに、下の毛の処理をしている女性は欧米で多いと聞くが、全身の毛にフォーカスを当てると実態は真逆だ。

下の毛を処理している欧米の女性の中にも、腕や脚の毛を処理していないことがある。顔の産毛も日本の女性ほどきめ細やかに処理している人は多くない。

知り合いの日本人女性に聞くと、中学生や高校生の頃に腕や脚の毛が気になって、むだ毛処理を始めるようになり、そのうちに全身脱毛をしてしまう人が多いのだとか。「なぜ、そんな若い時期に脱毛したの?」と尋ねると、「皆やっているから」と言う。深い理由があるというより、やって当然という意識があるのだろうか。

とはいえ、欧米の女性がズボラなのかと言われるとそういうことではない。体質的にそれが難しいからでもある。

脱毛は、一般的にニードル脱毛、レーザー脱毛、光脱毛の3種類の方法がある。ニードル脱毛は、名前の通り、針を毛根に入れて電気を流すという方法。確実に毛根を焼くことができるので効果が高いと言われているが、毛根一つひとつに電気を流す方法は時間と労力がかかる。それに比べ、レーザー脱毛と光脱毛はどちらも、黒い色素に反応して熱を生むレーザーを照射して毛根を焼くため手軽だ。

全身脱毛はレーザー脱毛か光脱毛が主流なのだが、色素が薄い体毛には脱毛効果が低く、金髪や白髪に対しては反応しにくい。肌の色が濃い場合は、肌トラブルを引き起こす可能性があるそうだ。

このため、欧米ではブラジリアンワックスや剃毛ていもうを選ぶ人もいるが、チクチクが不快だったり、体毛が逆に濃くなるというウワサがあったりして、「だったら生やしてしまえ!」という女性も少なくない。周囲の外国人女性で、むだ毛の処理をしていないことも珍しくなく、脱毛が当たり前ということでもない。

脱毛している男女
写真はイメージです

ところで、最近の日本における脱毛トレンドは、ここ数年、その対象が女性に限らず、男性にも急速に拡大している。YouTubeやInstagramでもメンズ脱毛の広告がやたらと目につく。宣伝文句の多くは、女性にアンケートをしたところ「毛のない男性が良い◯%」といったように、脱毛をしない男性は女性に嫌われるなどとあおる。なんだか一昔前の雑誌の裏にあった包茎手術の宣伝を思い出す。

女性にもてたい心理なのか、周りでもひげや体毛を脱毛している男性が本当に増えた。短パンをはいている男性の脚を見てみると、まあ見事にツルツルが多いのだ。一昔前だと、ここまでツルツルだと逆に恥ずかしいという気持ちもあったけれど、今やボーボーの方が少し恥ずかしい。しばらくしたら男性も脱毛が当然の時代になるのだろうか。

とはいっても、やっぱり男性のひげって大事じゃね?と思うようになったのだ。確かに、剃髪は肌荒れのリスクはあるが、逆に肌荒れをひげで隠すこともできる。それに、僕の場合、顔の特徴として、鼻の下が長い。それがコンプレックスだったので色々調べると、鼻の下を短くする人中短縮術という整形の方法があることが分かった。知り合いの整形外科の先生に相談すると、「そんなことしなくても鼻の下にひげを生やせば雰囲気短くなる」と教えてくれた。男性にとって、ひげは使い方によっては整形に匹敵する美容アイテムなのだ。

そして、これは僕個人の趣味の問題。ここ最近よく見る、肌が陶器人形のように滑らかでとにかく美しい男性たち。たしかに、魅力的なのは分かる。でも、なぜだろう。ゲイである僕からすると、そこにエロを感じないのだ。美しすぎる!!

やっぱり野性っぽさ、細かいむだ毛を気にしないワイルドさ、ひげのジョリジョリ感・・・・・・。こういったものは男性を感じさせてくれる要素だと思う。周囲には、「ツルツルの男性がいい!」という女性は多いが、「絶対に毛が生えていてほしい!」という女性もいる。「ツルツルが好きだったら、ゲイにならねーよ!」という冗談も鉄板ネタだ。僕もどちらかというとそう。だから、ツルツル男子が増えることが少し残念。

「男らしさ」や「女らしさ」をことさらに言うことが疑問視され、ジェンダーフリーを目指す社会の流れに共感しつつも、なお、「男とはこう」「男の魅力はこう」という「男らしさ」を求めている自分に気がついてしまう。

いわゆる「男らしさ」や「女らしさ」は果たして本当に悪いことなのだろうか。ゲイである僕が“本能”を語ることはおかしく聞こえるかもしれないが、それでも本能的な「男らしさ」や「女らしさ」を排除して、ふたをしてしまうことは不可能だと肌で感じる。

もちろん、将来の介護のことや、衛生面を考えると体毛はないほうがいいと言うのは、合理的な意見だけれど、毛の濃さだって人それぞれ個体差があって面白い。脱毛するのは自由だけれど、知らぬ間に同調圧力で毛深い人が肩身の狭い思いをする社会になるのなら、ギリギリまで争う覚悟でいる。

マイノリティー問題というと、LGBTQ問題を思い浮かべる人が多いけれど、毛を生やす生やさない、メイクするしない、右利き左利きなどあらゆる少数者の不都合に当てはまる。誰だって何かしらのマイノリティーに属しているはずだし、マジョリティーにも属しているはず。

毛の生えてる人も毛の生えてない人も美しい、だけど自分はこっち派だ。男らしい男性も男らしくない男性もすてきだ。でも自分はこっちが好き。そのくらいで良いのではないだろうか。「男らしさ」や「毛」を取り除く必要はない。

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小原ブラス顔写真
小原 ブラス(こばら・ぶらす)
タレント・コラムニスト

1992年、ロシア・ハバロフスク生まれ。6歳から兵庫県姫路市で育つ。「見た目はロシア人、中身は関西人」として、テレビのバラエティー番組やYouTubeで「ピロシキーズ」として活躍。コテコテの関西弁で政治や社会問題を鋭く斬るコメントで注目を集める。コラムニストとして様々な媒体で執筆、ロシア人の目から見た日本の疑問点や違和感を率直につづる。

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