障害児の育児、家族だけでは無理…自治体支援にも課題

待機児童対策などの両立支援が進み、子育て世代の共働きは珍しくなくなったが、病気や障害を持つ子どもの親の就労にはまだ様々な壁がある。障害児を育てながら働く親の現状を考える。

受け皿小さい、公的サービス

川崎市の森田晃将さん(36)と智子さん(38)夫婦の長女成南せなちゃん(2)は、先天性の病気で呼吸の力が弱く、酸素吸入が必要になることがある。鼻から管で栄養をとる「経管栄養」や、血中の酸素濃度を測る装置の装着も欠かせない。日常的に医療的ケアが必要な「医療的ケア児」だ。

夫婦はともに東京都内の会社に勤める。在宅勤務を週2~4日ほどしながら、市内の認可保育園に通う長男(4)と、同市や隣の横浜市の療育施設3か所を日替わりで利用する成南ちゃんを育てる。療育施設とは、未就学の障害児の発達支援を行う施設だ。

智子さんは「娘の預け先があるのはありがたい」と語る一方、「本当は息子と同じ園に通わせたい」と打ち明ける。だが、川崎市の認可園が受け入れる医療的ケア児はたんの吸引や導尿、経管栄養に限られ、成南ちゃんは対象外だ。

成南ちゃんの通う療育施設は利用希望者が多く、施設側から利用日を減らすよう言われたこともある。

夫婦とも実家は遠方で頼れない。成南ちゃんの通院のため、定期的に仕事を休まなければならない。長男の送迎も含め育児や家事は、夫婦で協力してこなす。「職場に理解があり感謝しているが、もっと働きたいし、同僚らに申し訳ない気持ちもある」と晃将さん。智子さんは「この先、仕事を続けていけるか不安。子どもに障害があっても、親が就労を諦めなくていい社会になってほしい」と話す。

医療的ケア児  10年で倍

厚生労働省によると、医療的ケア児は2020年の推計で全国に約2万人おり、10年間でほぼ倍増した。昨年9月には医療的ケア児支援法が施行され、適切な支援の実施は国や自治体の責務と明記された。保育園や学校の設置者に看護師の配置などを求め、家族の離職防止も掲げる。

川崎市保育指導・人材育成担当課長の児川薫さんは「医療的ケア児も原則、保育が利用できる。だが、人材の確保などの課題があり、希望者全員の受け入れができていない」と説明する。

自治体「人材確保に課題」

小学生以上の障害児を放課後や長期休みに預かる放課後等デイサービス。働く親にとっては欠かせない存在だが、保育園などに比べ親の就労支援の位置づけがあいまいで、預かり時間が短いなどの課題が指摘されている。

埼玉県和光市のシングルマザーの女性(45)は、小学6年生のダウン症の長男(12)を育てながら、スポーツクラブでダンスを教える。

学期中は長男がデイから帰る午後6時頃に合わせ、仕事を調整する。だが、長期休みはデイの時間が午後4時まで。実家は遠方なので、近所のママ友に夕方、長男をみてもらっている。仕事柄、日曜日も働くが、市内に適当な施設がないため、市外の施設を利用する。

女性は「友人がいたから働き続けられた。本当はもう少しサービスが利用しやすくなるといいのだが」と話す。

同市社会援護課統括主査の浜口裕也さんは「運営日や時間は、人繰りなどを考えて事業所が判断する」と説明する。

厚労省の資料によると、放課後デイの平均支援時間は、平日は「2時間超3時間以下」の事業所が55.8%と最多で、休日は「5時間超6時間以下」が30.9%で最も多い。

茨城キリスト教大教授の江尻桂子さんは「介護に近い障害児の育児を家族だけで担うのは無理があり、保育園も福祉施設も必要なインフラだ。サービスの提供は自治体の裁量だが、もっと利用者に寄り添った支援を考えてほしい」と話している。

急増する利用児童数

厚生労働省によると、医療的ケア児を受け入れる保育施設は2019年度、695施設で全体の2%に満たない。受け入れゼロの自治体は多い。

障害児サービスの利用児童数

療育施設の利用児童数は15年度の約7万4000人から19年度の約11万2000人へ増加。放課後等デイサービスも約11万2000人から約22万7000人へと増えた。

一方、19年度の児童1000人当たりの放課後デイの事業所数は、沖縄県が2.06、北海道が1.93か所と、いずれも全国平均(1.19か所)を大きく上回ったが、東京都は0.76か所で、地域間格差が目立った。(読売新聞生活部 矢子奈穂、樋口郁子、伊丹理雄)

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