宇垣美里 誰かに幸せにしてもらおう、なんて思ったことがない

フリーアナウンサーの宇垣美里さんが、「今日もマンガを読んでいる」(文藝春秋、税込み1650円)を刊行しました。「週刊文春」で連載中のコラム「宇垣総裁のマンガ党宣言!」を一冊にまとめたもので、宇垣さん自身が強く心を揺さぶられた計54作品について紹介しています。マンガをはじめとするエンターテインメントへの思いを聞きました。

――連載で取り上げる作品は、どのように選んでいるのでしょうか?

隔週連載なので、2週間ごとに締め切りがあるんです。選書のルールは、3か月以内に刊行された新刊であること。まず2週間で私が読んだ新刊を編集者の方に伝えて、これまで取り上げた作品と重ならず、違いが出るものに絞り、最終的には自分で紹介する作品を選んでいます。

マンガはこの連載があるから読んでいるのではなく、読みたいから勝手に読んでいます。毎晩必ず、日付が変わる瞬間にスマホで電子書籍アプリを開き、新刊をチェックして、気になるものがあれば購入。毎日1、2作品は必ず買っていますね。スマホだとポチっとするだけなので、これまでいくら使ったかわかりませんし、考えたくないです(笑)。

自分が救われたり、ワクワクしたりした作品は、誰かにその良さを布教したくて。この本が、あまりマンガを読まないという方、最近昔ほど読んでないなという方が、マンガを手に取るきっかけになったらうれしいです。

本をむさぼるように読んだ少女時代

――漫画に限らず、幼少期から読書が大好きだったそうですね。

物心がつく頃には、家には絵本があふれていました。むさぼるように読んでいたので、両親は「この子はよほど本が好きなんだな」と思ったそうです。小学校の入学祝いに、「シートン動物記」と「ファーブル昆虫記」をセットで買ってもらったのですが、入学式の前に読み終えてしまって。これはとても追いつかないぞと、毎週末、両親が近くの図書館に連れて行ってくれるようになりました。1週間で10冊まで借りられるのですが、いつもあっという間に読み終えていました。

物語に強くかれていたんです。物語は、自分の生きている世界とはまったく違う世界へと連れていってくれます。そして、孤独感や憤り、説明しがたい感情に苦しんでいた時、同じように苦しみながら困難を乗り越えていく登場人物の姿に何度勇気づけられたことか。外にはこんなに広い世界がある、一つの場所に恋々ととどまっている必要はないのだと気づかされました。

子どもの頃から、かじりつくように本を読んでいましたが、今も変わっていません。仕事をしている時間以外は、移動中も入浴中も、ずっとマンガや本を読んだり、映画を見たりと、常にエンタメを摂取しています。エンタメのために働いているようなところもありますが、結局好きなことが仕事になっているので、うまく循環していますよね。

――少女時代、特に影響を受けたマンガ作品を教えてください。

幼稚園の頃、テレビアニメ「美少女戦士セーラームーン」が放映されていて、園児はみんなセーラームーンごっこをするぐらい流行はやっていました。原作マンガを近所のお姉さんが貸してくれて、どはまり。女の子同士が助け合いながら戦い、大切な人や居場所を守る姿がすごくかっこよかった。誰かの助けを座して待つのではなく、たとえ傷だらけになっても自分の進む道は自分で守る!というメッセージが幼心に刻み込まれました。

最初に憧れを抱いたのが、自分の足で立ち上がる少女たちだったことは、私自身のあり方に強い影響を与えたと思います。今まで一度も、誰かに幸せにしてもらおうと思ったことがないこともその一つだと思います。

書くことで思考を整理する

――新刊には、マンガ評のほかに、局アナ時代に雑誌に連載していた連作短編小説「拝啓、貴方様」も収録されています。

入社1年目から担当していた朝の情報番組を卒業してから、バラエティーなどさまざまな番組に出演させていただき、執筆の仕事も増えていきました。隔月5000字で小説をと依頼をいただいた時、小説は難しいなと思ったのですが、ふと、手紙という形なら書けるかもしれないと思いつき、お引き受けしたんです。手紙のやり取りのみで物語が進んでいく「三島由紀夫レター教室」や森見登美彦さんの「恋文の技術」が大好きで、そういうものを書いてみたいと、かねてより思っていました。

プライベートでも、手紙はよく書きます。季節の折々に手紙を出すことを大切にしている母の影響です。TBSへの入社が内定し、会社の方に落語に招待していただいた時、メールでお礼をお伝えしましたが、母が「必ず手紙を書きなさい」と。絵はがきにメッセージを添えて送ったところ、とても喜んでくださいました。また、入社後に別の方から、「手紙を送った子だね。すごく喜んで話していたから、君のことを覚えたよ」と言っていただいて。文字に思いを込めて送ることの大切さを実感しました。

フリーアナウンサーの宇垣美里さん
文字を書くときは万年筆を使うという宇垣美里さん (c)文藝春秋

自分のために書く時間も大切です。大学生の頃から日記をつけていますが、社会人になってからは3年日記を愛用しています。面白いですよ。いや応なしに1年前の今日の出来事を振り返ることになりますから。1年前の悩みなんて、だいたい忘れていることに気づきます。イヤなこともずっとは続かない、なるほど、と。

かっこいい言葉に感動した時、知らない言葉に出会った時は、すぐにメモを取るようにしています。舞台や映画の感想や思いついたアイデアも、忘れないうちに。外出先ではスマホにメモしておいて、帰宅したら「なんでもかんでも書くノート」「原稿を書くノート」「日記」にそれぞれ書き写していきます。

言語化することによって、頭の中を整理整頓するんです。イヤなことがあったとしたら、なぜイヤだったのかを因数分解するように言葉にしていきます。怖いことや悲しいことを、理由を突き詰めずに曖昧にしておくと、きっと同じことを繰り返すでしょう。

――5年間の局アナ時代を経て、フリーになって3年ほどたちました。今後の目標は?

局アナ時代、雑誌などのグラビア撮影やコラム執筆などさまざまな経験を通じて、世の中にはこんなにいろいろな仕事があるのだと知りました。そして、もっと広い世界を見てみたいと思い、退社を決意したんです。今はコロナでさまざまな制限がありますが、見たいもの、挑戦したいことはたくさんあって時間が足りないくらい。新しいことでも、自分には向いていないのではと考えず、向こう見ずにチャレンジしていきたいです。

(聞き手・読売新聞メディア局 深井恵)

あわせて読みたい

宇垣 美里(うがき・みさと)
フリーアナウンサー

1991年兵庫県生まれ。2014年4月にTBSに入社。アナウンサーとして「あさチャン!」「サンデー・ジャポン」などに出演する。2019年3月に退社後はオスカープロモーションに所属し、フリーアナウンサーとして活動中。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」、BS日テレ「あの子は漫画を読まない。」、音声配信アプリSpoon「宇垣美里の夜ナ夜ナ漫画研究部」に出演中。女優業やコラム執筆など、幅広く活躍している。著書に「風をたべる」「宇垣美里のコスメ愛」「愛しのショコラ」がある。

Keywords 関連キーワードから探す