藤田志穂 19歳で「ギャル社長」若者と農業の懸け橋に

19歳で「ギャル社長」となり、注目を集めた藤田志穂さん(36)。若者と農業に挑む取り組みを経て、今は高校生が地元食材を使ったメニューで競う大会を企画、 牽引けんいん する。農業の未来を見据え、若者と食の懸け橋となって走り続けている。

藤田志穂さん
藤田志穂さん(吉川綾美撮影)

ギャル起業

高校時代は、色黒メイクやつけまつ毛のギャルファッションで、休みのたびに渋谷へ出かけました。好きな格好をしていただけで、学校には真面目に通い、皆勤賞も取ったほどです。

なのに、世間からは偏見の目で見られ、買い物中に万引きを怪しまれたり、自分の自転車なのに警察官に窃盗を疑われたり。アルバイトの面接も、外見だけで落とされました。

「ギャルでも世の中の役に立ってみせる」と、高校卒業後、ギャルに関するマーケティング会社を作り、4期連続黒字経営を達成しました。社長として様々な人と交流する中、農家の後継者不足や耕作放棄地の増加といった問題を知りました。亡くなった祖父は新潟のコメ作り農家でしたが、のちに人に貸すまで田んぼはほったらかし。「身の回りに迫っている問題だ」と実感し、社長業を退任して、23歳でノギャルプロジェクトを始めました。

秋田で若い女性たちと「シブヤ米」作りをしたり、ギャルも着たくなるデニムの農作業着を作ったり。でも、こうした話題作りだけでは根本的な解決にならないと痛感しました。

食の甲子園

そんな中、活動の一環で、熊本の農業高校生と地元のトマトを使った商品開発に取り組んだとき、「地元の野菜の良さを広く知ってほしい」「親の畑を広げたい」といった、彼らの熱い思いに触れました。食に関わる各地の若い世代を後押しすれば、農業や地域の活性化につながるのではと思い、企画したのが「ご当地!絶品うまいもん甲子園」です。

藤田志穂さん
藤田志穂さん(吉川綾美撮影)

大会では全国の高校生が、地元食材を使い、自ら考案した料理を調理。料理に込めた思いなどを発表し、審査員の評価で順位を競います。開催10回目となった昨年は、330品以上の応募がありました。参加者の中には、地元の農協に就職したり、有名ホテルの料理人になったりと、経験を生かす生徒もいて、将来の選択肢を広げられたかなと思うとうれしいです。

出産したのは32歳の時です。育児と大会運営の両立は大変ですが、息子が笑っていればオールOK。最近は、大会に参加する高校生に長男の将来の姿を重ねるようになりました。

「農業を甘く考えるな」といった批判を浴び、落ち込んだこともあります。でも、自分で選択したことは周囲のせいにせず、責任を持つ。そうすることで味方も自然と増えていく。今後も裏方として、若者と食を支える懸け橋であり続けたいです。

◇ ◇ ◇

【取材後記】

「『どうせできない』と頭ごなしに言われると、反発したくなる」と笑う藤田さん。ギャルというだけで偏見を持つ人がいたら、そうした人を、自分の周囲からなるべく排除して生きていく方法もあっただろう。だが、藤田さんは逆で、偏見の目を含む世間に自ら飛び込んでいった。その結果、ギャル社長、ノギャル、うまいもん甲子園と、誰もやったことがないことに次々と挑戦し、やがて世間も巻き込んで、形にしてきた。

19歳からずっと責任ある立場に居続けている。「早いうちに、良いことも悪いことも経験できたのはよかった。悪い経験でさえ生かすことができれば、失敗にはならないとわかったから」。そう語り、活動へのぶれない思いを真摯しんしに表現してくれた。

力を発揮できる場所を自らの手で作り上げ、さらに次の世代の幸せにもつなげてきた。取材を通じて、そんなしなやかな強さを感じた。

(読売新聞地方部 高梨しのぶ)

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藤田志穂(ふじた・しほ)

1985年、千葉県生まれ。一般社団法人「全国食の甲子園協会」会長。読者モデルを経て、2005年に会社設立。若者と食を支援する取り組みを続ける。

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