一人でスタバに行けない…なぜって外国人の僕には重要な使命があるのだ

とあるYouTuberとコラボをして動画を撮った時、「怖くなくて安心しました」と言われてショックを受けた。どうやら、メディアで見る僕は辛口のイメージがあったようで、気の強い、怖い人だと思っていたらしい。確かに、顔つきは柔和ではないし、少し荒い口調で話すこともある。けれど、どちらかといえば気が小さく臆病なタイプなので、真逆に思われてしまうとほんのり傷つく。でも、メディアに映る自分のその裏の裏まで視聴者に読み解いてほしいなんてワガママだし無茶だよなとは思う。

「気が小さい」と言っても、人には思ったことはハッキリ言えるし、嫌なことは嫌と言える。大勢の前でプレゼンをすることだってできるし、テレビに出て全国に向けて思っている本音をしゃべることも全然平気だ。

何ができないかというと、一人で行動をすること。

実はつい先日、人生で初めて一人で牛丼屋に入ることに成功した。牛丼屋に入ると言ってもテイクアウトだったが。そもそもこのコロナ禍でずっとテイクアウトをしてみたかったけど、普通のお店に入って「テイクアウトでお願いします」が言えないのだ。もちろん、お店に一人で入って食べることもできないのだが、注文をするというコミュニケーションがどうしても苦手。

今年できるようになったことがもう一つ。ずっと憧れていたコンビニコーヒーデビューを果たした。コンビニで普通に買い物はできるのだが、コップをもらって自分でコーヒーをいれるという応用が必要になると一気にハードルが上がる。コンビニによっては、自分で冷凍庫から氷の入ったカップを取ってこなければいけないパターンもあるし、サイズの言い方もそれぞれの店で違う。間違って注文したらどうしよう。間違ったやり方でもたついたらどうしよう。そんなことを考えてあきらめていたのだ。初めて味わったコンビニコーヒーは格別だった。

コーヒーといえば、カフェなんかも一人では入れない。仮に注文できたとしても、一人で座っている時にどんな顔をしていればいいのか、何を考えていればいいのか分からない。家で一人というならなんだってできるし、鼻くそでもほじって過ごせばいい。けど、カフェってやっぱり人目もあるし、隣の人との距離感も近くて何だか落ち着かない。

僕が外出先で一人になったときに時間を持て余してしまう人間だということは周囲もよく理解してくれている。以前、テレビの仕事の合間にどうしても一人になる時間があった。困ったマネジャーは、僕をドトールに連れていき、代わりに注文と席の確保をして、「ここで時間を潰せば大丈夫!」と暇つぶしのサポートをしてくれた。

さすがにいつまでもこんな状態では周りに迷惑をかけると思い、一度だけ一人カフェに挑戦したが、よりによって、それがあのイケ散らかしたスターバックス。店に入って列に並ぶ。どうやらSサイズのことを「ショート」と呼び、Mサイズのことを「トール」と呼ぶらしい。なるほど、「グランデ」や「ベンティ」というサイズもあるが、ほとんどの客はトールサイズを注文しているので「トールで」と言うのが一番常連っぽくなれそうだ。

スターバックスはおしゃれなカフェ
小原ブラスが「1人で行けない」というスターバックス

そんなことを思案しながら15分ほど列で待ったが、どうやら僕は注文口ではなく、受け取り口に並んでいたようだと気付き、恥ずかしくなって何も注文せずに退散した。一人スタバデビューは、まだまだ遠そう。だいたいメニューにある「なんちゃらフラペチーノ」が何なのか、何も理解できない。

ATMで手こずるおばあちゃんと同じ

なんで、こんなに一人行動ができないのか自分でも不思議だ。おそらくではあるが、僕の中にある変なプライドが原因のような気がする。それは、「外国人だから仕方ないよね」と思われたくないというプライドだ。

例えば、銀行のATM。目の前のおばあちゃんが操作方法に手間取っていたとする。そしたら、多くの人は「おばあちゃんだから仕方ないよな」と思うだろう。そして次回から、同じようなおばあちゃんがATMで自分の前に並んでいたら「これは手こずるかもなー」なんて頭の中で考えるかもしれない。

それと同じことが、外国人でも意外と多い。役所に行けば職員の何とも言えない表情から「うわ、外国人だ。説明に手こずりそう」、レストランではウエイトレスさんの不安げな目から「うわ、あそこのテーブル外国人だ。英語で注文されたらどうしよう」という心の声が漏れ聞こえてくる気がする。僕の勝手な被害妄想かもしれないけど。

そんなわけで、自分でも気づかないうちに、ある種の使命のようなものが芽生えた。それは「外国人でも手こずらないぞ!スムーズに対応できるぞ!というのを自分で示す!」という責任だ。これで、外国人というだけでおじけづいてしまう人が減ればうれしい。だから、僕はATMやお店で決して手こずってはいけないのだ。

最初は、「店頭で絶対に失敗してはいけない」という重責から一人行動を避けるようになっていたが、それが、気がついたときには、外出先で一人のときにどんなことをしていればいいのか分からない、一人で行動できない小心者になってしまった。

そんな僕がここ最近影響を受けているのは、アマゾンプライムのおすすめに出てきた「ソロ活女子のススメ」というドラマだ。テレビ東京で今年放送されたドラマだが、正直「◯◯活女子」という単語がそんなに好きじゃない。「パパ活女子」とかも、昔からそんなジャンルの人はいたのにそう呼ぶことで、まるで何か最先端の人たちみたいな空気感になるのも苦手。「ソロ活女子」だって、きっと積極的にひとり時間を楽しむ女子のことなんだろうけど、女子が一人で行動するのがそんなにおかしいのかよと思ってしまう。

あまり好きなジャンルのドラマではなかったのだが、主演が大ヒットドラマ「半沢直樹」で国土交通大臣役を演じた江口のりこさん。女性としての強さと弱さを併せ持った自然な演技が好きになり、兵庫県姫路市育ちの同郷ということもあり、彼女の出るドラマは全てチェックしている。

ドラマは、主人公の五月女恵が、好きな時に好きな場所で、ひとりでしか味わえないぜいたくな時間を追い求める“ソロ活”を楽しむ。一人焼き肉、一人リムジンパーティー、一人遊園地や一人バーベキューなど様々。それぞれをどのように楽しむべきか、頭の中の恵の声で徹底的に解説してくれるのだ。

恵に言わせると、多くの人は「焼き肉は皆で食べるからおいしい」と言うが、そんな馬鹿なことがあるか!それは肉を楽しんでいるのではなくてコミュニケーションを楽しんでいるだけだ。コミュニケーションを楽しむのはいいことだが、肉のおいしさだけを楽しむのであれば、一人で全集中する方が圧倒的にいい!というのだ。焼き肉に限らず、あらゆる場面で一人でしか味わえない世界は広がっている。それを知らずに生きることほどもったいないことはない。

夜中にハイボールのつまみとして見たドラマだったが、男や周りの目にこびることなく、自分は何が好きで何が嫌いか、と向き合いながら、自分だけが最高に楽しめる時間を追い求める恵の姿はかっこいい。「何のために生まれてきたのだろう?」と悩んでいる人に「自分が楽しむためだろ!」と答えていたが、まさにそれを体現していたのが、この五月女恵、そしてこのドラマだと思えた。

よく分からない使命を勝手に自分に課して、よく分からない誰かの目を気にしているほど人生は長くない。早くこの小心者の柵から自分を解放したい。まずは、スタバに一人で行くところから再チャレンジしよう。

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小原ブラス顔写真
小原 ブラス(こばら・ぶらす)
タレント・コラムニスト

1992年、ロシア・ハバロフスク生まれ。6歳から兵庫県姫路市で育つ。「見た目はロシア人、中身は関西人」として、テレビのバラエティー番組やYouTubeで「ピロシキーズ」として活躍。コテコテの関西弁で政治や社会問題を鋭く斬るコメントで注目を集める。コラムニストとして様々な媒体で執筆、ロシア人の目から見た日本の疑問点や違和感を率直につづる。

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