玄理、衝撃占い体験とメンタルケアのすすめ

コロナ禍がこんなにも長く続くと誰が予想しただろうか。ようやく最近になって、政策を「ウィズコロナ」にかじを切る国も増えてきたが、2020年の頭からおよそ2年近くを人類はコロナとの闘いに費やしている。この闘いは肉体的なものだけでなく、確実に私たちの心もむしばんでいるのだろう。

昨年、緊急事態宣言が続く中、明らかに電話口の声が暗くなっていく知人が多かったし、元気そうにしていても今年久しぶりに会ったら「実はこの数か月病んでいて……」という人に何人も出くわした。遅かれ早かれこの長すぎる非常事態に心も身体も、そして多くの人が経済的に疲弊している。

こういう時に人が頼りたくなるものの一つが占いではないだろうか。友人に占い好きが何人かいて、仕方なく、時には好奇心でついて行ったことが複数回ある。その中に忘れられない衝撃体験があるのだ。

アパートの一室で出迎えてくれたのは2人のおばちゃんだった。片方が確か「霊を呼ぶ&おはらいをする人」、もう片方がその呼んだ霊を「憑依ひょういさせる人」とのこと。友人は、先祖代々や家族の情報、過去の恋愛遍歴など個人情報を果敢にばらまきながら、時に思い当たることを言い当てられて泣いていた。まあそもそも泣きたいようなことがあるからここに来るわけであって、私も話を聞きながらちゃっかりもらい泣きしたりしてね。

そうしているうちに興に乗ったおばちゃんが、ついでに私のおはらいもしてくれるという。「あ……じゃあお願いします」と言って両親の名前とか誕生日とか色々書くうちに「おばちゃんズ」が私の祖先は韓国人であることに気付いた。果たして私の先祖を憑依させた日本人のおばちゃんは、何語で語りかけてくるのか。ここでいきなり流暢りゅうちょうな韓国語をしゃべり出したらマジで鳥肌ものである。本物、というやつだ。占いの後半、先祖の素行の悪さを散々責められた友人も、「これで真偽を確かめられるぞ」という感じで固唾かたずを飲んで見守っている。

「おばちゃんズ」占い師の伝言とは

そうしたらこの「おばちゃんズ」、奇策に出た。私にはばっちり守り神がついていて心配ないというのだ。ただ伝言がいくつかあるので、日本の神様から韓国の神様にバトンタッチの儀式をせねばならぬという。何やら壮大な儀式だ。私一人のためにそんな国をまたいでの儀式をしてくれるのか。そして正直私は日本で生まれ育っているので、「はぁ……預かり知らぬところでそんなに韓国の神様が守ってくれているとは」といった感じで早々にリアクションに困っていると、なんともアットホームなバトンタッチの儀式が始まった。

田舎のおばあちゃんが、隣の家に余った野菜か回覧板を渡す感じというのだろうか。「それではよろしくお願いしますよお~」「はいはい、承りましたぁ~」と言ったテンションで平和そのものである。ちなみに、霊が憑依している人は1人だったはずなのに、いつの間にか霊を呼ぶ人も日本の神様になりきっていた。両国の神様とも言語は日本語オンリー。戸惑いと「さっきまで泣いていた我らは何」という気持ちと、面白すぎるんだけど笑っちゃいけない、という緊張感でその後の記憶があまりない。肝心の神様からの伝言も忘れた。

というあまりにばかばかしすぎる思い出のおかげで、占いというものは個人的にあまり信じない。いや、良いことだけ信じがち。霊的なものや人智じんちを超えたものは確かにこの世にあると思うし、あんなにカラッとしているロサンゼルスにだって、東京のドラッグストアばりの数でサイキック(霊能力者)のお店がある。ただ、高額な料金を請求するものや、何度も金銭を請求するものには皆さん十分に気をつけてほしい。

大手小町の人気連載「オピニオン」玄理さんの癒しの存在愛犬モモ
玄理さんの癒しの存在、愛犬のモモ(玄理さん撮影)

悩み一人で抱え込まない

他人に関心を持ちすぎる故に息苦しい今の時代、生きていると心が苦しくなるときが多分にあるだろう。自分一人の力じゃ変えられないような環境や大きな壁にぶつかる時もあると思う。そういうとき、どうか一人で抱え込まずに誰かに話を聞いてもらってほしい。そんな相手いないからつらいんだよ、という人はカウンセリングや心療内科・精神科に足を運んでみてはどうだろうか。欧米ではカウンセリングに通っているということは恥ずかしいことでもなんでもなく、自分の精神衛生をきちんと管理している人という評価につながるが、アジアの国ではまだ偏見を持っている人が多いと思う。

私が最近著書を読み、お話をした中でとても印象に残ったのは臨床心理士の、みたらし加奈さんだ。彼女は臨床心理士ではタブーとされている自分のプライベートな過去を話すことをためらわず、自分のアイデンティティーのこと、ご家族のこと、自傷経験などをある考えがあった上でシェアしている。彼女は「風邪をひいたら病院に行くように、心の不調を感じた時には心療内科や精神科に行ってほしい。メンタルケアも気軽になれば」とも言っていた。

とにもかくにも私たちはがんばりすぎなのだ。自分を追い込むんじゃなくていたわること。私も上手になりたい、と思うことの一つである。

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俳優の玄理さん
玄理(ヒョンリ)
俳優

1986年、東京生まれ。中学校時代にイギリスに短期留学。大学在学中、留学先の韓国の大学で演技を専攻。日本語、英語、韓国語のトライリンガル。2014年、映画「水の声を聞く」に主演し、第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞などを受賞。17年にソウル国際ドラマアワードにてアジアスタープライズを受賞。近年の出演作に映画「スパイの妻」、「偶然と想像」、ドラマ「君と世界が終わる日に」などがある。ラジオ番組「ACROSS THE SKY」(J-WAVE)でナビゲーターを務めている。

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