住友商事 「途上国でインフラ整備」の目標をかなえた後に実現したいこと

ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったり。自分らしく、生き生きと働く女性たちの「ハッピーアイテム」を紹介します。

鈴木里彩(33)
住友商事 エネルギーイノベーション・イニシアチブ

今年4月に新設された組織で働いています。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、カーボンニュートラル社会の実現に向けた次世代事業を創出する組織です。

私が今かかわっている業務の一つが、太陽光を使った電力の普及です。お客さんは民間企業や地方公共団体など様々です。太陽光を使った電気を買いたいという依頼に、パネルの設置や蓄電池の導入など、要望に応じて段階を踏みながら提案します。関連する知識が刻々と変化するため、日々勉強が欠かせません。

タンザニアでのボランティアが転機に

電力に興味を持ったきっかけは、大学3年生の時に東アフリカのタンザニアを訪れたことです。現地で学校の壁の修理や子供たちにスポーツを教えるボランティア活動に参加しました。

アフリカには貧困や紛争といったネガティブな印象を持っていましたが、元気いっぱいの子供たちのパワーを感じました。その中で、でこぼこの舗装されていない道路や度々止まる電力事情を目の当たりにし、途上国でインフラ整備をしたいと思いました。

大手小町の連載、私のハッピーアイテム 住友商事の鈴木里彩さん 読売新聞就職活動でこの思いを伝え、入社後は念願かない、海外の発電所を建設する仕事に携わることができました。担当したタンザニアやモザンビークは国営の電力会社がお客さんで、融資先を探したり、タービンやボイラーなど建設に必要な機器をメーカーから購入したりします。工事の準備に3~4年を費やし、地道な作業を積み重ねていきます。準備から完成まで必ずしも一人がすべてにかかわれるわけではなく、次の担当者へバトンをつなぐようなイメージで仕事をしています。

入社3年目でブラジルに赴任し、ポルトガル語の勉強をする機会に恵まれました。その2年後、ポルトガル語が公用語のモザンビークに駐在することとなりました。それまで、当社ではモザンビークで大きなプロジェクトを行った実績がほぼありませんでした。税金や建築認可に関する問い合わせをしようと公的機関に出向いても、担当者がいないということも。仕事を進めるノウハウがアジア地域や欧米のように蓄積されていない分、苦労はありましたが課題を解決したときは、パイオニアならではの達成感を感じることもできました。

海外駐在で学んだ、相手を尊重することの大切さ

海外で働くとき、バックグラウンドが異なる相手を尊重するということを意識しました。例えば、締め切りを日本では守るのが当たり前とされますが、海外だとそうでないことも珍しくありません。その背景には、大学を卒業しても英語を話せる人材が圧倒的に少ない事情があります。

こちらは、お客さんからの急な依頼であっても素早く丁寧に対応することなどを心掛けていました。そうやって築いた信頼関係に、救われた出来事がありました。

モザンビークの大統領が訪日し、新たな発電所整備のための支援にかかる調印式を行うことが決まった時のことです。急ピッチの契約交渉が続き、何とか契約書の作成までこぎつけました。しかし、日本に出発する直前で契約書に記載された内容が一部、実際とは異なっていることに気づきました。この段階で、分厚い契約書を作り直すことはできません。あってはならないミスに血の気が引き、上司にはものすごく怒られましたが、お客さんには謝って事情を理解していただき、事なきを得ました。

モザンビークの赴任を終えた約半年後、発電所が完成しました。出張して参加した完工式典では、現地の方々に感謝されました。発電所のことなど何も知らなかった私が、わずかでも建設に貢献できたこと、そして、たくさんの人のおかげで自分が成長を感じられたことがうれしかったです。

背中を押してくれた祖父母

祖父母から高校入学祝いで買ってもらった腕時計を常に身に着けています。海外駐在時は治安の心配があり、腕には着けられませんでしたが、お守りとしてポケットに忍ばせていました。

祖父は高校2年の時、祖母は2年前に他界しました。人生で一度も日本を離れたことのなかった祖母は、海外駐在が決まったと報告するたびに、何度も「大丈夫?」と繰り返し、私の身を案じていました。

この時計を見ると、新生活へ一歩踏み出す私の背中を押してくれた祖父母を思い出します。これからもこの時計とともにたくさんの経験を積んでいきたいです。

ブラジルとアフリカでの駐在経験は、日本の優れた技術を海外へ示し、やり切ったという感覚がありました。だからこそ、これまでの取り組みにとどまらず、別の仕事をしてみたいという気持ちが芽生えました。

カーボンニュートラルという視点で、ビジネスモデルを作ることは新たなチャレンジです。自分で考え、学んだことを業務に反映していかないと、あっという間に置いていかれてしまう緊張感があります。

後輩も増え、先輩と呼ばれる立場になりました。自分自身だけでなく、チームとしても成長するためにはどうしたらよいか、考えながら仕事をしていきたいです。

(読売新聞メディア局 バッティー・アイシャ)

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