最近話題のFIRE、女性が目指すメリットとは?

経済的自立を果たし、より早く退職することを目指す「FIRE」の考え方が、ネットや書籍、雑誌で話題となっています。ライフイベントによって働き方などが変化しやすい女性でも実現可能なのでしょうか。専門家に話を聞きました。

FIREは「Financial Independence, Retire Early」を略した言葉で、FIが経済的自立を、REが早期リタイアを意味します。仕事を辞めた後も、資産運用によって得られた収入で生活費を賄っていく生活スタイルを指します。

FIREを実現するための目安として「4%ルール」というものがあります。これは、生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産を目減りさせることなく生活することができるという考え方です。言い換えると、必要な資産は年間支出の25倍ということになります。たとえば、年間支出が300万円だとすれば、300万円×25倍=7500万円を運用に回します。そして年利4%で運用できれば、元本を減らすことなく生活できるということです。

結婚、出産で遠のく可能性も

楽天証券経済研究所のファンドアナリスト・篠田尚子さんによると、FIREの火付け役はアメリカのミレニアル世代です。日本ではおよそ2年前からこの流れを紹介したいくつかの翻訳本が出版され、FIREという言葉を耳にするようになりました。

なぜ、日本でも注目されるようになったのでしょうか。篠田さんは、2019年には老後資金として年金収入以外に2000万円が必要となることが問題になったこと、20年にはコロナ禍で働き方や生活の仕方が変化し、「仕事よりもプライベートを充実させたい」ようになったことなど、生き方そのものを見つめ直す機会があったことを理由にあげます。「社会や会社に依存せず、自分の面倒は自分で見なければならないという考え方が、FIREへの興味関心につながったと考えられます」と指摘します。

ただ、20~30歳代でFIREを実現できる人は限られます。年間支出の25倍といった大金をためるためには、高収入を得られる職業に就くことが必要だからです。また、結婚や出産といったライフステージに変化が起きやすい時期でもあります。結婚生活に伴う支出の増加などにより、FIREは先延ばしになる可能性があります。子供がいれば、習い事や受験にかかる費用をまず用意しなければならず、FIREはますます遠のきます。そもそもライフステージの見通しが立たなければ、必要な資産を算出することもできません。

そのため、日本では完全に仕事をしない本来のFIREではなく、定年よりも早めに退職したり、仕事は辞めないで柔軟な働き方をしたりするなど、ゆるやかで現実的なFIREを目指す人が多いといいます。

経済的自立で不安を解消

どのようなFIREを目指すにしても、お金をためることから始めます。無駄な支出を省くことも大事ですが、篠田さんは「貯蓄や収入を増やすために、30代前半くらいまでは自分への投資に使うことも意識してださい。資格を取ることに限らず、海外に行ってみたり、社外の人と交流したり、自分の将来のキャリアを築くために行動したりしましょう」とアドバイスします。そのうえで、生活費を半年分程度貯蓄出来たら、iDeCоや、つみたてNISAといった非課税で長期の積み立て投資ができる制度を活用し、投資信託を始めてみます。

ただ、FIREの「4%ルール」は米国株を運用することを前提とした数字です。日本の証券会社を通じて米国株を購入することはできますが、為替リスクを負うことなどには注意が必要です。運用には元本割れする可能性ももちろんあります。

若くして会社に縛られず、自由な時間を手にすることは夢がありますが、メリットばかりではないと、篠田さんは警鐘を鳴らします。それまでのキャリアが終わって積み重ねが出来なくなり、社会とのつながりがなくなってしまうからです。最近では、売れっ子芸能人でも住宅ローンを組めないことが話題になりましたが、肩書がないことで子供の進路に影響が出る可能性も否定できません。働かなくなった時間を何に使って生きていくのか、目的を設定することが必要です。

しかし、女性が経済的自立を目指すことには意味があります。男性よりも平均寿命が長いため、年金で足りない分を資産を取り崩して対応するだけでは、いずれ底をつくのではないかという不安が生じやすいからです。

篠田さんは「FIREは誰もが目指すものではありませんが、どのような人生を送りたいか、資産形成をどうするか検討することは誰にとっても役立つことです。FIREの盛り上がりをきっかけに、ライフプランについて考えてみてはいかがでしょうか」と話しています。

ミレニアル世代 1980年代以降に生まれた若者世代。「ミレニアル」は「千年」を意味し、西暦2000年以降に成人を迎えたことに由来する。子供の頃からインターネットや携帯電話に慣れ親しみ、「フェイスブック」や「ツイッター」などソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で積極的に情報発信するなど「デジタルネイティブ」とも呼ばれる。

(読売新聞メディア局 バッティー・アイシャ)

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楽天証券 篠田尚子 大手小町 読売新聞
篠田 尚子(しのだ・しょうこ)
楽天証券経済研究所ファンドアナリスト

慶応義塾大学を卒業後、国内銀行を経て、外資系大手情報企業傘下の投信評価機関リッパーで市場分析などを行う。2013年より現職。投資信託の専門家としてメディアに出演するほか、ファイナンシャルプランナーとしても数々のセミナーで講師を務める。著書に、「貯金も節約もできない人でもお金が増える方法」(かんき出版)などがある。

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