保活「日本死ね」から5年…1園希望や見学ナシは不利って本当?

「保育園落ちた日本死ね」という言葉が話題になってから約5年。2022年4月の入園に向け、多くの自治体で認可保育園の申し込みが始まっています。保護者が子どもを保育園に入れるために行う「保活」は、ほとんどの人が初めての経験です。現状や課題と、疑問について、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんに話を聞きました。

待機児童は減少したが・・・

厚生労働省が公表した2021年4月1日時点の全国の待機児童は5634人で、前年より6805人少なく、統計を取り始めた1994年以降で最少でした。「保育園落ちた日本死ね」という過激なタイトルのブログが話題となった2016年の前年、2015年は全国の待機児童は2万3000人を超えていたので、大幅に減少しています。普光院さんは、「自治体が保育の受け皿整備を進めてきた成果と、新型コロナウイルスで子どもを預けることへの不安が増すなどしたため、利用控えもあったようです」と分析します。

しかし普光院さんは、「真の待機児童問題は解消されていない」とも言います。実質は「待機児童」であるのに、自治体の基準でカウントされない「隠れ待機児童」がいるからです。例えば、自宅から通常の交通手段で30分以内の保育園(通園可能な園)を自治体から提案されたとき、「ちょっと遠いので」といった理由で辞退した場合、自治体は「特定の保育園などを希望する者」とみなして「待機児童」にカウントしません。

さらに普光院さんは、結婚・出産のために仕事を辞め、非正規などで再就職をしようとする「再就職希望の人」の存在も指摘します。子どもの体調不良やコロナ禍のため、「ハローワークに一定以上行っていない」などと評価されると、就職の意思はあるのに「就職活動をしていない」とみなされ、これも待機児童にカウントされない場合もあるそうです。

都市部では、依然として入園の必要性を点数化した利用調整の指数の低い世帯が利用しにくかったり、年度の途中からの入園は困難になったりしている現状があります。「待機児童はゼロ」と報告している自治体でも、「入園できない不安はまだまだ大きい」と普光院さんはみています。

出産で仕事を辞める女性

国立社会保障・人口問題研究所が2015年に実施した「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」の結果報告書(確定値)によると、子どもを持つ予定のある女性の雇用形態は、「就業」(77・7%)が、「無職・学生」(22・3%)を大きく上回っています。しかし、出産後となると「就業」が52・7%と大きく下がり、逆に「無職・学生」が46・3%と上がっています。この数値の変化から、出産を理由に仕事を辞める女性が多いことがわかります。

普光院さんは、「出産でいったん仕事を辞めた女性も、保育園に入れられるならなるべく早く働きたいと思っているケースは多い」とし、女性活躍の場を広げるために保育園の存在が必須だと言います。

これ本当?保活で気になるあのウワサ

第一子のママ・パパにとって、保活は初めての経験。これから保活に臨む人のために、世間で噂されている、ちょっと気になる疑問を普光院さんに聞きました。

保活で保育園を見学する親子のイメージ写真
保活で保育園を見学する親子(写真はイメージです)

Q 希望する園の記入欄が複数あるのに、一つの保育園名しか書かないと不利になりますか。「本気じゃないんでしょ」とみなされそうです。

A 不利にはなりません。一方で、認可保育園などの利用調整において、「熱意を示すために1園しか書かないほうがいいのか」と考える人もいるようですが、全く関係ありません。認可保育園等の利用調整では、保護者・子どもの状況によってつけられる「指数」が高い順に入園が決定します。ただ、認可外保育施設には「うちを単願(専願)にするなら席を確保できる」というところもあります。しかし、そのために認可保育園の入園申請を出さないのはもったいないと思います。

認可の入園申請で1園しか希望を書かなかったら待機児童数にカウントしないという自治体もありますが、それもおかしな話です。「遠いところには通いたくない」「園庭のあるところに通いたい」「保育の質で選びたい」などの家庭の希望は尊重されるべきです。

Q 利用調整の指数(点数)では、何が優先されますか?

A 利用調整の指数には、保育の必要性の事由や勤務時間などでつけられる基準指数と、家庭や子どもの状況によってつけられる調整指数があり、自治体によって基準は少しずつ違っています。勤務時間が長いなど、「より必要性が高い」と判断されるほど点数が高くなります。

調整指数では、ほとんどの自治体が、きょうだいが同園になりやすいように加点を設けています。また、これまで認可外保育施設に有償で預けられている場合にも、加点される場合が多いです。

これらの合計が同点になった場合にも、優先順位というのがあります。これは自治体によってかなり違いますが、「所得の低い人が優先」としている自治体が多い印象です。「総合的に判断する」と書き添えている自治体もあります。

Q 自治体の人に、希望する保育園を見学したかどうか聞かれました。見学の有無は、調整に影響しますか?

A  関係ありません。ただ、自治体が入園決定の連絡をしたら、「そこは行きたくない」と辞退をする人が一定数いて困っていると聞いたことがあります。自治体側からすると、見学してしっかり選んでもらうことで辞退を減らしたい考えがあるのではないでしょうか。

調整には影響しませんが、見学はとても重要です。我が子が毎日生活する場所ですから、質を見極めてほしいと思います。また、実際に園に行くことで保活に重要な情報が得られます。例えば、「うちは待っている人が多い」「引っ越す予定の人がいて、近々欠員が出る」などの話が聞けて、入園の難易度がわかることもあります。認可保育園に落ちた場合の対策をどの程度広げるか、などの判断につなげられ、保活で失敗するリスクを減らすことができます。

Q 見学のポイントは?

A  保育士が子どもと接する姿勢が優しいか、子どもを尊重しているかなどは最重要です。余裕がなくバタバタしているとか、子どもへの当たりがきついなどの様子が見られた場合は心配です。コロナ禍なので園内の見学は不可でも、見学に代わるような案内をしているかどうか聞いてみましょう。その対応の仕方でも判断できることがあると思います。

見学ができなくても現地には足を運んだほうがいいです。園庭があるなら、外で遊んでいる子どもの様子が見られます。園と家との距離、通園しやすいかどうかも忘れず確認してください。

見学や説明会などで話を聞いた時は、「英語をやります」「体操をやります」などの保護者ウケを狙った内容ではなく、「この時期の子どもの発達や成長はこうなので、こういう力が育ってほしいと思っています」などといった、子どもの気持ちや発達に沿った内容を話せるかどうかといった点を判断材料にしたほうがよいです。

Q 預かり保育のついている幼稚園が増えています。利用する場合の注意点は?

A  幼稚園は行事やPTAの集まりが平日になっているところもあり、「PTAに出られなくて肩身が狭い」「行事のお手伝いができなくて心苦しい」という声を聞きます。幼稚園が働く親の応援をしてくれているかどうかは要チェックです。

また、子どもの生活パターンに配慮しているかも大事なポイントです。年少組くらいでは、お昼寝がないとやっていけない子どもも多いです。内容が長時間の保育に配慮されているかもポイントです。

「いつでも、どこでも、何歳でも」

女性の育児休業取得期間は伸びている傾向にあります。厚労省のデータによると1年以上育休を取得した女性は、2012年度には29・6%だったのが、2018年度には38・4%になっており、2~3年取得した割合も1・6%から倍以上の3・3%になっています。

「2歳まで育休を取ったほうが自分の子育てがうまくいく」「安心して仕事と子育ての両立ができる」という人は少なくありません。しかし、「0歳児クラスじゃないと、保育園に入れなくなるから」との理由で、本来の希望より早く保活を始める人がいます。

普光院さんは、「理想は、年度途中でも何歳のクラスでも、入りたいときに入れる保育園の整備です。いつでも保育園に預けて働けるという安心感があることは、大きな子育て支援になりますし、ママ・パパの仕事・子育ての両立支援、少子化対策にもつながります」と話しています。

(読売新聞メディア局 渡辺友理)

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普光院亜紀
普光院亜紀(ふこういん・あき)
保育園を考える親の会代表/ジャーナリスト

出版社社員時代に育休を取得。子どもは保育ママ、私立認可保育園に預けて働き続け、第1子の学童保育卒業を機に独立。国や自治体の保育関係の委員会、保育施設評価業務などにも携わる。著書「後悔しない保育園・こども園の選び方」(ひとなる書房)など、他多数。

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