ファッション武器にできたのは、ダイエットできなかったから?

小学4年生の頃だったと思うが、近所に住んでいた女の子がすごく細身で、特に手足が長くて華奢きゃしゃだった。彼女がある日、なんてことないストレートジーンズをはいてきた。特別におしゃれなわけでも、ワイドシルエットのデザインでもない。それでも彼女がはくと、ほどよくゆとりが生まれて、後ろ姿が不思議とかわいく見えた。シンプルだけど、それだけでオシャレに見えた。洋服の見え方は体形で変わるんだと子どもながらに悟った瞬間だった。

小学6年生の時、同じクラスで仲良くなった友達は、お互いにファッションが好きで、お小遣いをためては一緒に服を買いに行くようになった。私は低身長でしっかり体形(濁していますが察してください)だったが、彼女はすらっと身長が高く、手足がきれい。その頃流行していたミニスカートを一緒に買ってはいても、彼女はシンプルにサラッとかわいく着こなしているのに、私はなんだかかわいく見えない。好きな服は着たいし諦めたくないから、どうやって着たら自分にしっくりくるのかを考えた。何を着ても「かわいいねー」と褒められた幼少期を卒業して、自分に似合うスタイリングはどういうものか、長い試行錯誤の旅はその頃から始まった。

はやりのダイエット、ことごとく挫折

多様性とか自分らしい体形とか言われている時代に、こんなことを言うのは古いのかもしれないと思うけれど、私の中の理想体重は基本的に、常に今のマイナス10キロだ。そのくせおいしいものが大好きな食いしん坊でもあるので理想体形にはほど遠い。思春期から、「やせたい」が口癖で、ご飯を食べずに野菜ジュースだけを飲むとか(2日目で挫折)、キャベツだけとか、リンゴだけとか、体に悪いダイエットに手を出したこともあったがもちろん続かない(むしろ続かなくてよかった)。野菜スープのみ食べ続けるとか、ジュースで必要な栄養素を補う「ジュースクレンズ」、プチ断食……。その時代にはやったダイエットには一通り手を出してきたが、結果が出たのは産後に増えた10キロを減らした韓国の韓方薬のみ。ただし元に戻っただけで、理想体重はここからさらに10キロだ。

自分的ベスト体形ではないけれど、服は好きだし、おしゃれしないわけにはいかない。自分にしっくりくるシルエットを追求しつつ(体形カバーともいう)、ファッションを楽しむ方向性にシフトしていった。

読売新聞 大手小町 オピニオン スタイリスト 入江陽子さん
本日の装い。ウエストシェイプされたボリューム袖のニットに、フィービー時代のセリーヌのパンツ(入江さん提供)

体形って、ある程度は服でごまかせる。普段ごまかしているので本当はあまりバラしたくないけれど、例えば私は下半身しっかり体形だが上半身には肉がつきにくい。だから、ボトムは体のラインが出にくいワイドパンツやスカートにして、上半身はすっきりタイトにまとめたり、ウエストマークしたりすると対比で細く見えやすかったりする。足を少しでも長く見せられるように、高さのあるプラットフォームシューズも鉄板アイテムだ。

ベストな自分じゃなくて自信がなくても、すてきな服は自分に自信とパワーをくれる。多くの女性たちから熱狂的な支持を集めたデザイナー、フィービー・ファイロ時代の「セリーヌ」や、「ドリス・ヴァン・ノッテン」のパンツはやせて見えるのにモードなシルエットが作れるのでほれ込んだ。そして、デザイナー、黒河内真衣子さんが手がける「Mame Kurogouchi」の服は、特に日本人の体をきれいに見せてくれる。黒河内さんがブランドコンセプトを「女性が現代社会で強く生きるための戦闘服」と言っていて、すごく共感した。

自分自身にコンプレックスがあるからこそ、ファッションを武器に戦うようになったし、その武器のおかげで今の仕事がある。スタイルが良かったら、Tシャツとデニムを何も考えずにサラッと着るだけで(それはそれでかっこよくて好きなスタイルだけど)、スタイリングや体形についてあれやこれやと熟考しなかったかもしれない。

完璧なモデルさんのコンプレックスって?

スタイリストになって、いろんなモデルさん、タレントさんとお仕事するようになった。こちらから見たら完璧なスタイルだと思っても、細すぎるのを気にしている人は結構いて、手足を出したくない、体に厚みがあるように見せたいと言われることがある。私がその体形だったら毎日キャミソールとショートパンツで過ごしたい。胸が大きいのを気にして、さらしでなるべく平らになるように見せたいという人もいる。そばから見たら、細いのに出るとこ出ていて完璧なスタイルだ。コンプレックスを持っていない女性なんていないと感じる。「どんな人にもその人の良い部分があって、すてきな個性でいいじゃん!」と他人に対しては思うが、ジャッジするのは、結局自分自身。自分の理想があるのだ。

小さい頃から試行錯誤してきたおかげで、様々な体形コンプレックスに対応してスタイリングできるようになったし、気持ちに寄り添うことができるようになったのかなと、今ではプラスにとらえられるようになった。でも、「あと10キロやせたい」はこれからも言い続けると思う。

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入江陽子さん顔写真
入江 陽子(いりえ・ようこ)
スタイリスト

1985年、広島県生まれ。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。スタイリスト長瀬哲朗氏のアシスタントを経て2013年独立。「NYLON JAPAN」や「GINZA」、「装苑」などのファッション誌や広告、アーティストのスタイリングなどを手がけている。

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