星野リゾート 就活もコロナも「ピンチを力に」一人旅で得た強さとは

自分らしく生き生きと働く女性たちが、ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったりする「ハッピーアイテム」を紹介します。

渡辺萌美(29)
OMO5東京大塚 by 星野リゾート 総支配人 

人生を変えた一人旅

大学4年の夏。食品メーカーを中心に100を超えるエントリーシートを出しても内定がもらえず、就職活動は難航していました。「もう駄目だ!」と入った本屋で、最初に目に飛び込んだのが広島・尾道のガイドブック。滞在期間は決めず、片道切符で飛び出した初めての一人旅の経験が、今の私の出発点でした。

宿泊したゲストハウスには、夜になると地元の商店街の方が集まったり、滞在者同士のやりとりがあったり。いい意味でおせっかいな人々と交流があり、いろいろなところを巡っているうちに、気がついたら2週間がたっていました。

その経験をきっかけに、就活は旅行・観光業に方向転換。星野リゾートは、「その土地の魅力を発掘し、滞在を演出すること」を大切にしていて、まさに私が尾道で得た体験でした。

総支配人に立候補

OMO5東京大塚 by 星野リゾートの総支配人・渡邉萌美さん星野リゾートには年に2回、マネジメント職に立候補をする機会(制度)があります。

コロナ禍の2020年4月、OMO5東京大塚 by 星野リゾートは、2か月近く休館となりました。その間、仕事は何もできなかったのに、お給料は振り込まれていました。「私は何も生み出していないのに。何かの形で会社とお客様に恩返しをしたい。チャレンジするなら今だ」と意を決し、総支配人に名乗り出ました。

全社内に中継される25分のプレゼンテーションを経て、2021年3月から総支配人として、OMO5東京大塚 by 星野リゾートの正社員12人、パート・アルバイトスタッフ約50人を、私なりにまとめています。

半年やってみて、良くも悪くも現実が見えてきました。現場で生まれたアイデアの費用対効果を考え、経理などに合意を取らなければなりません。会社のニーズ、社会情勢、マーケティングにちゃんと響いているのか――。それぞれをフィットさせていくために、物事を多角的に見るのが難しいところです。

総支配人になっていなかったらわからなかったことが多々あり、周りの人に助けてもらっていることと、役割に育ててもらっているな、と実感しています。

“友人ガイド”のOMOレンジャー

OMO5東京大塚 by 星野リゾートは、街全体をリゾートとしてとらえ、ぜひ街に遊びに行ってください、というコンセプトで運営しています。街を巡るツアーに同行する「ご近所ガイド OMOレンジャー」は、“その地元に住む友人”ガイドとして、自分の思う街のいいところ、自分の好きなところをお伝えします。

例えば、近所のお店にお連れし、まる2時間、お客様と一緒に席について、裏メニューや店主さんのこだわりを伝えます。「この商品は、実はこういうヒストリーがあって開発された」「こんな面白い名前がついているのは、実は常連さんが名付けたから」など、地元の人とお客様の橋渡し役に徹することを心がけています。

大塚の街は商店街、神社、都電もすてき。観光地ではないけれど、ディープでローカルな魅力はガイドブックに載っていないので、お客様からは「こんなところがあるんだ」と驚いていただけます。

私のハッピーアイテム(星野リゾート)OMO5東京大塚の総支配人・渡邉萌美さん
マップで大塚の街の魅力を紹介する渡辺さん

音楽の街、オーツカ下町DJナイト

大塚には、昔、花街があって芸妓げいこさんがいたことなどから音楽が盛ん。今もライブハウスがすごく多くて、「おおつか音楽祭」もある音楽の街です。私もテクノやハウスなどの音楽が好きで、都電が走るレトロな街の印象と掛け合わせ、80年代のシティーポップや昭和歌謡にこだわった「オーツカ下町DJナイト」というイベントを始めました。私はDJはやったことはありませんでしたが、プロの方に教えてもらいました。今はスタッフのDJは私を含め3人ですが、いつか全員がDJになれたらいいなと思っています。

コロナ以前は、毎週金曜日に開催していましたが、今は再開できる日のために日々、DJの練習をしています。

DJにとって一番大切なことは、空間の演出です。お客様に子どもが多いならわかりやすい曲を、午後11時近くなってくると、カップルが多くなってくるので、終わりはメローな曲で締めた方がいい、など。

参考にもなりますし、コロナ禍前は音楽イベントなどにも出かけていました。父のレコードを祖母の家の天袋から引っ張り出し、スタッフとともに100枚くらいレコードを買いました。山下達郎、ユーミンなど、老若男女問わず、耳なじみのある名曲が多く、お客様の反応はすごく良かった。近所の子どもがお母さんと来て踊っていたり、その後ろで、お茶屋さんのおじいちゃんがホテルの泊まり客の若者としゃべっていたり。お客様の楽しそうな雰囲気を感じるのは、うれしいひとときです。

ポスト・コロナを見据えて

「旅」に移動する距離は関係ありません。たった2駅先の土地でも、行ってみると知らないことや発見がたくさんあります。私は、尾道で地元の方とふれあい、そこでの経験を通して新たな自分に気づく瞬間がありました。観光って面白いなと思ってくれる若い方が増えたら本当にうれしい。

この1年半、コロナ禍で辛抱の時期でしたが、ワクチン接種が進む中で、旅行需要は確実に戻ってきていると感じます。来てくださったお客様には、大塚を100%楽しんでいただきたいし、また大塚に来たいと思ってもらえる仕掛けを、どんどん作っていくのが目標であり、やるべきことだと思っています。

(読売新聞メディア局 渡辺友理)

【あわせて読みたい】

Keywords 関連キーワードから探す