青木水理 赤ちゃんを撮影する「おひるねアート」でママを笑顔に

寝転んだ赤ちゃんの周りにおもちゃなどを置いて撮影し、遊び心のある作品を作る。日本おひるねアート協会代表理事の青木水理みのりさん(37)は自身の子育てをきっかけに、母親が撮影を通じて元気になることを目指します。

子育てが転機に

寝転んだ赤ちゃんに小物や背景をつけて撮影するおひるねアート(日本おひるねアート協会提供)

我が子が宇宙飛行士や魔女に――。おひるねアートはテーマに合わせて作った背景を使い、赤ちゃんとじっくり向き合いながら撮影するものです。この楽しさを知ってもらおうと、講師を育ててイベントなどに派遣しています。

しかし、まさかこうした活動に携わるとは思ってもいませんでした。専門学校でトリマーの技術を学んで2年間働き、2007年、長女の妊娠を機に退職しました。関心が一気に娘に向かい、一眼レフカメラを購入。5年後に長男が生まれた頃、小物を使って子どもを撮影する、海外の写真をネットで見つけました。

撮影で深まる愛

吉川綾美撮影

折り紙や皿、ボールなどを用いて作品を作ってみたところ、息子がますますかわいく見える。すっかり夢中になりました。自分のブログに載せると次第に反響が大きくなり、テレビ局の取材が来るようになりました。書籍の出版も決まるという思いもよらない展開になったのです。CMや撮影会など仕事の依頼も増え、個人では手が回らないほどに。

そこで考えたのが組織化です。子育てに関することなので、より公益性の高い社団法人という形をとることにしました。子育ては大きな転機になりました。

ただ事業の運営に悩みました。社会人としての経験も少なく、柱となる理念がなかった。頼りない私を見て、不安に思ったスタッフや認定講師が何人も辞めたがっていると聞いたときは落ち込みました。楽しいからという理由だけでは、周囲が仕事に意義を見いだせなかったのです。

必死の思いで、イベントの参加者に、おひるねアートに夢中になる理由を尋ねて回りました。「ママ同士が集える場所が欲しかった」、「育児で悩んでいたけれど、撮影することでまた子どもがかわいいと思えるようになった」――。育児に苦しむ母親たちの救いの場になっていると気づかされました。

産後のママが笑顔で子育てできる場所を作りたい。活動の目的が明確になりました。これまでに講師は600人以上誕生し、常時約200人が活動しています。

コロナ禍でイベントが減り、これまでのペースで活動できず、歯がゆい思いです。今年6月、写真があれば簡単に作品が作れるオンラインサービスを始めました。今後は、アジア圏にもおひるねアートを普及させ、多くの人に楽しんでほしいと思っています。

◇ ◇ ◇

【取材後記】子どもとの思い出作りだった趣味を仕事にすると決めた時、不安はなかったのか。青木さんから、こんな答えが返ってきた。「やると決めたからには協会を絶対つぶさないという覚悟がありました」 。周りからついていけないと言われた時に諦めなかったエピソードと合わせ、芯の強さを感じた。

また、仕事を好きだと思う気持ちが、最大の動機付けになったという。そこから好きなことがどうしたら人のために役に立つのかを考え抜いて答えを探したことは、そうまねできることではない。青木さんはおひるねアートの参加者を喜ばせるだけでなく、講師にも子連れ勤務を提案するなど、母親の気持ちに寄り添っている。

好きなことを突き詰めれば、人生が彩られたり、周囲の環境を変えたりすることができるのかもしれない。青木さんに会ってから、自分の好きなことは何だろうかと考え始めている。

(読売新聞メディア局 バッティー・アイシャ)

「30代の挑戦」は、各界で活躍する女性たちにキャリアの転機とどう向き合ったかを、読売新聞の30代の女性記者たちがインタビューする企画です。

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青木 水理(あおき・みのり)
日本おひるねアート協会代表理事

1984年、神奈川県生まれ。2013年、日本おひるねアート協会を設立。昨年から、家族の記録を残す習慣作りを目的とした「家族写真プロジェクト」にも力を入れる。協会サイト(https://www.ohiruneart.com)。

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