新5千円札の津田梅子もびっくり?男ばかりの「偉人」界に増える女性レジェンド

マザー・テレサ、ナイチンゲール、ヘレン・ケラー、ココ・シャネル……。世界の偉人たちの生涯を漫画で紹介する「漫画偉人伝」。ここ10年ほどで、女性の偉人を書籍にする動きが活発化しています。男性ばかりだった“偉人の世界”で、なぜ女性が取り上げられるようになったのでしょうか。伝記に女性が描かれることについて探りました。

伝記シリーズのうち女性は何人?

集英社(東京都千代田区)が1989年~2003年に刊行した「学習漫画 世界の伝記」シリーズでは、全30巻のうち女性は5人のみでした。具体的には、ジャンヌ・ダルク、アガサ・クリスティー、モンゴメリ、ジョイ・アダムソン、マリー・ローランサンです。

その後、2010年に刊行を開始した「学習まんが 世界の伝記NEXT」シリーズでは、過去のシリーズでは紹介できなかった著名人を紹介。2021年9月までに刊行された39巻のうち女性の偉人は21巻と、5割以上が女性で占められています。オードリー・ヘプバーン(1929年~1993年)や、グレース・ケリー(1929年~1982年)など、近年に活躍した女性の名前が並びます。

ポプラ社(東京都千代田区)では、2011年から「コミック版 世界の伝記」シリーズを刊行し、積極的に女性偉人を取り上げています。これまでの48巻が発刊され、取り上げられた偉人48人のうち、女性は20人です。

マイヤ・プリセツカヤとココ・シャネルの漫画偉人伝の表紙
左:『コミック版 世界の伝記34 マイヤ・プリセツカヤ』 右:『コミック版 世界の伝記19 ココ・シャネル』 ともにポプラ社

人気上位に食い込むロシアのバレリーナ

ポプラ社で児童書の編集に携わる大塚訓章くにあきさんは、「そもそも伝記の読者層は女の子が圧倒的に多いので、女性の偉人だと、共感しやすい。バレエやピアノなどの分野は、習い事として習っている子もいます」と話します。

そこで、女の子の興味をひきやすい分野の第一人者として挙げられる女性を取り上げようと、「シャネル」ブランドの生みの親「ココ・シャネル」や、19世紀のピアニスト「クララ・シューマン」などを刊行しています。

書籍化する偉人が他の出版社と重ならないように気を配っているそうです。例えば、世界にバレエを広めたとして知られる「アンナ・パブロワ」ではなく、20世紀最高のバレリーナと称された「マイヤ・プリセツカヤ」に着目し、2016年に刊行したと言います。同社の売り上げランキングでは、5位と人気です。

ポプラ社・漫画偉人伝の売り上げランキング表
(2016年度~2020年度の販売実績を基に平均値で算出)コミック版世界の伝記シリーズ 人気ランキング(ポプラ社調べ)

「『コミック版 世界の伝記』売り上げランキング」(2021年8月発表)では、刊行された20人の女性偉人のうち、14人がランキング上位20位に入っています。同社児童書編集の鍋島佐知子さんは、「表紙が華やかで、伝記になるような強い女性に引かれるのではないでしょうか」と分析しています。

伝記で女性のロールモデルを

2024年度に発行予定の新5千円札の肖像に決定している近代的な女性教育の先駆者、津田梅子も、集英社から伝記が刊行されています。津田梅子が1900年に「女子英学塾」として創設した津田塾大(東京都小平市)の高橋裕子学長は、「伝記に取り上げられるくらい顕彰に値する女性は多くの分野で存在してきたのに、これまで、ほとんど歴史の教科書にも記述されてきませんでした。女性が伝記に取り上げられるようになってきたのは、女性の社会参画にとって、とても重要なことです」と、力を込めます。

女性史を専門とする高橋さんが、アメリカ留学で初めて女性史の授業を受けた際、「歴史に名を残した女性の名前を10人挙げる」という課題がありました。すると、現地の学生を含め、ほとんどの学生がなかなか10人の名を挙げられなかったそうです。

「伝記に取り上げられることで様々な女性もロールモデルとなり、どのように壁を乗り越えてきたのかなど、多様な生き方を具体的に示してくれることでしょう」

また高橋さんは、「男性の伝記ばかりでは、女性には出る場面がない、力がない、と思い込んでしまう無意識のバイアスが作られてしまいます。女性を取り上げる伝記が数多く出てくると、そういった無意識のバイアスをくつがえしてくれるでしょう。困難を克服し、業績をあげた女性の存在を知ることは、私たち自身の力になると思います」と期待を込めています。

(読売新聞メディア局 渡辺友理)

あわせて読みたい

Keywords 関連キーワードから探す