総裁選と総選挙、働く女性が政治について考えるとこうなる!

自民党総裁選は929日に投開票が行われ、菅義偉首相の後継者が決まります。その先には、10月21日に任期満了を迎える衆院議員の総選挙も控えています。新型コロナによって、私たちの暮らしが政治と深くかかわっていると感じた人も多いでしょう。働く女性が政治や選挙とどう向き合えばいいのか、自分らしい働き方や生き方の実現に向けて何ができるのか、署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」日本版代表、武村若葉さんに聞きました。

――自民党総裁選は、派閥の動きや選挙情勢が注目を集めていますが、具体的な政策ではどうでしょうか。

今回の自民党総裁選で、候補者4人のうち女性が2人いるというのは特筆すべきことです。政策議論では、子ども庁の新設、同性婚、夫婦別姓、女性活躍など、これまでよりも多様性や福祉に関する内容が目立ちます。国会をはじめ、意思決定を行うほとんどの組織で、メンバーは男性で高齢の健常者に偏っています。世代、性別、障害の有無など、もっと幅広い人材が集まれば、もっと多くの課題を拾い上げることができ、社会の変革につながると思います。

総裁選は誰でも投票できるわけではありませんが、政治や選挙は社会課題を解決するための重要なプロセスです。無関心でいるのは、もったいないことです。特に女性は、大学受験、就職、結婚、出産、復職などのライフイベントで、性別によるハードルや不利益を経験します。「医者になりたいのに、医学部に受からない」「仕事復帰しようと思っても、子どもを預けられる保育園がない」……。身の回りで生じた困難は自分の責任で何とかすべきと思っていたことを、実は社会構造上の問題と捉え直すと、次期首相や衆院総選挙の見方も変わるでしょう。河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子

――女性議員や女性リーダーを増やそうという動きがあります。

組閣では、入閣した女性の人数が話題になります。これまでよりも女性閣僚の人数が大幅に増えれば、それは変革へ向けた力強いメッセージになるでしょう。

もちろん、女性の数や割合が増えればいいというわけではありません。意思決定のメンバーに女性が加わっても、反対意見を述べ、問題を提起し、「わきまえない女」と糾弾されてしまうようなら何の意味もありません。企業や組織の評価システム、労働環境、価値観・ルールといった点で、多様性を尊重する仕組みがきちんと機能することがもっと大切なのです。

――新型コロナウイルスで仕事や生活に困難を抱えている人は少なくありません。特に収入の低い女性への影響は大きく、「女性不況」という問題も指摘されています。

働く女性の中には、在宅勤務になって育児、介護、家事の負担が増えたという声があります。パート勤めだったシングルマザーが、働く場を失って生活に困窮するケースも報道されています。

家事労働の夫婦差やシンママの貧困は、コロナ以前から存在していた問題です。コロナの影響で、格差はさらに広がり、しわ寄せがより強く表れたと考えられます。シングルの女性が働きやすい社会、男性が育休を取得しやすい職場環境といった政治の課題は、いまだに解決されないままです。

2018年に国内での販売が解禁となった乳幼児用液体ミルクは、2014年に1人のお母さんが日本での製造・販売を求め、「Change.org」で呼びかけた署名活動がきっかけでした。災害時にお湯の出ない避難所では、ほ乳瓶の消毒や調乳が困難です。液体ミルクがあれば、男性の育児参加につながるという期待もありました。集まった署名は42000筆を超え、厚生労働省の省令改正、メーカーの製造販売へと変化をもたらしました。

当たり前のように過ごしている日常に、その困難や苦労を経験しなければ気づかなかった課題が実はたくさんあります。リーダーがそのすべてを知っている必要はありません。むしろ、困っている現場の声が速やかに伝わるコミュニケーションプロセスや、その困難を解決すべき課題と判断できる人材や組織が求められます。

Change.org日本版代表の武村若葉さん
Change.org日本版代表の武村若葉さん

――社会を変えるために、私たちは何ができるのでしょうか?

短期的な成果を求めるのではなく、自分が気づいた課題について、できる範囲で声を上げるなど、行動することが大事だと思います。例えば、職場で男性社員が保育園へ子どもを迎えに行けるような制度を要望するなど、そのときすぐに実現できなくても、その後の制度見直しの機会に取り上げられるかもしれません。

「自分なんかが声を上げても、どうせ何も変わらない」と卑屈になってしまう女性は少なくありません。でも、行動や発言の一つひとつは周囲に何らかの影響を与えています。仕事や育児などの場面における、あなたの意見や決断は、誰かが何かを動かすきっかけになり得るのです。だから、女性たちには自らの言動に自信を持ち、チェンジを実現してほしいと思います。

(聞き手・読売新聞メディア局 鈴木幸大)

あわせて読みたい

武村 若葉(たけむら・わかば)
Change.org日本版代表

1983年、東京都出身。慶応大環境情報学部卒業後、パリ大学大学院でMBA取得。2009年からPR会社に勤務。20133月からフリーのPRプロデューサーとして活動を開始、Change.org Japanに参加。2017年秋からChange.org Japan 広報ディレクターを務め、20196月からカントリー・ディレクターに就任。

Keywords 関連キーワードから探す