「HSPだから何?」職場の言動で気をつけたいこと

「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」。周囲の刺激や人の気持ちに人一倍敏感な特性を持つ人を指す言葉で、“繊細さん”の愛称も手伝って、最近、よく耳にするようになってきました。読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」には、会社の同僚から「私はHSPだから」とアピールされ、面倒で仕方ないという投稿が寄せられています。どう考えたらいいのでしょうか。また、自身でHSPと思った時、職場で「面倒な人」や「甘え」と思われないためにはどうしたら良いのか、専門家に聞いてみました。

生まれ持った感受性豊かなHSP、2割近くに傾向あり

そもそも、HSPとは何なのでしょうか。

「HSPレッスン~繊細な人の対人関係の磨き方講座」を主催する心理カウンセラーの坂本純子さんによると、「HSPとは、生まれ持った気質で、光や音、人の表情などの五感の刺激に敏感で、影響を受けやすい感受性豊かな人たちを指します」。さらに「統計的には、2割近くの人がこの傾向があると言われており、逆に言えば、8割の人が気にならないのだから、『何が問題?』と言われてしまいがち。繊細な人の中には、この言葉が登場したことで、『私の生きにくさの正体はこれだったのか』と気づいた人は多いのです」と話します。

自称HSPにうんざり なぜアピールする?

発言小町に投稿してきたトピ主の「ザラ」さんは、会社の同僚である30代女性からの「私はHSPだから」というアピールに困惑しています。休憩時間に女性上司の話になった時、その同僚は「上司が冷たいので悲しくなる」「私がHSPだから、嫌っているんだ」と言って譲らなかったそう。その同僚は、医師やカウンセラーに相談したわけではなく、本を読んで自分に当てはまることが多いと気づいたそう。トピ主さんから見た彼女は、内気というより、周囲の女性と普通に話し、男性社員に“ぶりっ子”をしていることも。「『HSPだから傷つけないで』『HSPだから優しくして』と強要されているようでうんざりしています」「でも、迂闊(うかつ)なことを言って逆恨みされたくない。恨まれずにさりげなく距離を置きたいのですが、どうしたらいいのか……」と相談しています。

この投稿には、約40件の反響(レス)がありました。

HSPの傾向野ある人(イラスト)
画像はイメージです

「最近多いですよね。HSPだから……、自己肯定感低いから……などなど、それを何かの免罪符のようにアピールする人。しかもネットの簡易診断で都合よく思ってるだけで。私もだから何?って思います」と書いたのは、「匿名」さん。

「大変ですねー(棒読み)で対応」のタイトルで書いてきたのは、「豆乳ぷりん」さん。「最近自称HSPっていますよね。単なる“かまってちゃん”なんだろうとは思いますが、周りの人は大変ですよ。これからはあまり相手にしなくてもいいんじゃないですか? 何か言われたら『大変ですね』の一言だけでいいと思います」とトピ主さんに対応法を伝授します。

本当のHSPは周囲に特別な配慮は求めない?

「私もHSPです」と書いてきたのは、「はな」さん。「初めてこの言葉を知った時は、今までの自分の感じ方に納得がいき、なにかスッキリしたし、特性として向き合うことが出来るようになりました。でも、周囲の人に特別な配慮を求めたことはありません。むしろ、『HSPだから』なんて言ったら、相手には迷惑じゃないか、気を遣わせたら申し訳ないと思ってしまいます」とコメントしました。

ほかにも、「大抵の日本人はみんなHSP気質です」(「えま」さん)、「自称HSPは偽物では?」(「まどか」さん)など、いろいろな書き込みがありました。

五感の繊細さは人それぞれ 「何でもかんでも配慮して」は無理

前述のカウンセラー、坂本さんは、HSPの人が、その気質や能力をビジネスで発揮するためのアドバイスをしています。HSPには、音に疲れる、光をまぶしく感じる、自分への叱責(しっせき)でなくても上司の表情に過敏に反応してしまうなど、いろいろなタイプがありますが、自分がHSPだと気づけば、対処法も発見しやすくなるそうです。

「HSPについては、さまざまなチェックリストが出されていますが、私は『自分にあてはまるな』と思うこと自体は、とても良いことだと思います。どこまで可能なのかは職場の状況にもよるとは思いますが、例えば『光がまぶしいので、席を替えてほしい』と申し出ることもできるでしょう。具体的に伝えて改善できることがあれば、相談してみても良いと思います」と坂本さん。「ただし、職場は、職務を遂行するためにそれぞれ役割をもって働いているので、何でもかんでも『私はHSPだから』と配慮を求めるのは無理があります」と続けます。

坂本さんがこの投稿の中で注目するのは、同僚が「上司から嫌われている」としている点。「HSPの中には、人の表情に敏感すぎるタイプの人もいます。この同僚の場合は、上司の表情を見て、何かを感じ取り、自動的にマイナスの解釈をしているのかもしれません」と指摘します。

坂本さんがカウンセリングをするときには、「こんなふうに感じていたんだ」と自分でいったん気持ちを落ち着かせてから、「それで自分はどうしたいんだろう」と切り離して考えることを提案しているそうです。「感じ取ることと、思考パターンは別です。大切なのは、自分の本音を知ること。表情に敏感なタイプの方の場合は、相手の望みを察することができて優秀な営業マンになることもあります。個性を輝かせることもできるのです。もっとも、この投稿の中で相談されているのは本人ではなく、周囲の方なので、単なる愚痴だと思って聞き流してあげるのもいいと思いますよ」とアドバイスします。

トピ主の「ザラ」さんは、「彼女が『いやになっちゃうわ』とか『HSPのこと、わかってもらえないみたいで』とか言ってきても、それは相談事ではなく、ただのおしゃべり、雑談のたぐいなんだと思って、受け流すようにしています」と2度目のレスで書き込みました。

職場の状態によっては、「甘え」や「面倒くさいことを言う人」と受け取られかねないHSPという言葉。どっちの立場もわかったうえで、使った方が良さそうですね。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】
HSPだから何なんだ?

坂本純子さん
坂本純子(さかもと・じゅんこ)
心理カウンセラー・セラピスト

 1967年生まれ。全国に展開しているクッキング・スタジオに勤務し、新規出店、採用・社員教育、売上管理を担当。その後、インターネット広告代理店などを経て、心理学、カウンセリング、セラピー、気功を学び、2009年からIT企業の専属カウンセラーになり、同時期に個人向けのカウンセリング・セラピーも始める。現在、無料メール講座「とても繊細なあなたが安心して自分の人生を生きる7つのヒント」を実施中。HPは、https://j-method.com/

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