忌引や通院で、ペットのために休める会社があるって本当?

ペットも家族の一員――。愛するペットが死んだ時に忌引休暇を取得したり、一緒に出勤できたりするなど、ペットに関する福利厚生制度を導入する企業が増えつつある。従業員同士のコミュニケーションが活発になるなど、働き方にも良い影響がありそうだ。

福利厚生も人と同様に

「大切なペットと最期まで一緒に過ごすことができた」。ペット関連の保険を扱う「アイペット損害保険」(東京)の山本結衣さんは感慨深そうに話す。飼っていたウサギが2019年に死んだ際、利用したのが、16年から導入された「ペット休暇制度」だ。

一緒に暮らすペットの死に伴い年に最大3日取得できるペット忌引と、ペットと過ごすため同2日取得できるペット休暇の2本立て。イヌやネコはもちろん、鳥やウサギ、イグアナ、カメなど、同社の保険が適用される動物を対象にしている。

山本さんは両方の休暇を連続で取得。「心を整理しながら見送ることができた」と振り返る。現在もウサギを飼っており、病院に連れて行く時はペット休暇を利用する。「専門病院は少なく混んでいるので、休暇だとゆっくり診てもらえる」と笑顔だ。

昨年度までに延べ402人の従業員が制度を利用した。人事総務部長の冨松大介さんは「休暇をきっかけに、同じ動物を飼う従業員同士など横のコミュニケーションも増えている」と話す。

ペット連れ出勤 社員の会話広がる

「エウレカ」ではペット連れで出勤できる制度もある(提供写真)

ペットフード関連企業が10年以上前に同様の制度を導入したが、最近は動物関連以外の企業にも広がる。婚活マッチングサービス「ペアーズ」を運営する「エウレカ」(東京)も16年から、ペットに関する福利厚生制度を始めた。ペットの通院に半休を年3回取得できるほか、ペットが死んだ際は忌引で2日休める。

また「動物が病気で自宅に1匹で置いておけない」「仕事で帰宅が遅くなりそう」などの事情がある場合、ペット連れで出勤できる。同僚らに事前に通知し、社内の一角にペットの居場所を設ける。自然とペットの周りに人が集まり、会話が生まれるという。

山形県天童市で温泉旅館を営む「滝の湯ホテル」は昨年10月、イヌとネコを対象に3日間の忌引休暇を導入した。従業員約90人のうち約15%がペットを飼っており、常務の佐藤伸一さんは「ペットは家族同様の存在。安心して勤務できる環境を整えたい。ペットと最期まで寄り添えると、気持ちを切り替えて勤務に復帰できるはず」と語る。

ペットロス9割経験

イヌに関するウェブメディア「INUNAVI」が7月、愛犬が死んだことがある10~60代の325人に調査したところ、強い喪失感を感じる「ペットロス」を約9割が経験していた=グラフ=。内閣府の動物愛護に関する世論調査(2010年)では、ペットを飼わない理由として「死ぬと別れがつらいから」が37%で2番目に多かった。

獣医師で帝京科学大准教授(人間動物関係学)の浜野佐代子さんは「ペットロスは、家族や友人など大切な人を亡くした悲しみと同じです」と指摘する。

ただ、「ペットが死んだくらいで」と悲しみの深さを理解していない人もいる。浜野さんは「ペットに関する福利厚生制度があることで、ペットロスのつらさを和らげ、社会がペットを家族と同様の存在と認めてくれる実感を持てる。ペットを飼う人も飼わない人も認め合える環境づくりが大切だ」と話している。

(読売新聞生活部 松本彩和)

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