ヤジ、触る、抱きつく…女性地方議員の6割も被害にあうなんて

「政治分野における男女共同参画推進法」の改正法が6月、施行された。議員や候補者へのセクハラ、マタハラを防ぎ、新たな政治参画を促すため、国や自治体、政党に防止策を求める規定が明記された。ただ、政治分野のハラスメントは企業などと異なる性質もあり、実情に見合った対策を打ち出せるかが問われる。

改正男女参画法施行 国や自治体に政治分野で対策求める

「法案が通ったことを皆さんと喜び合いたい。だが、これは第一歩。女性の政治参加を実質的に増やしていくため、引き続き頑張りましょう」

6月14日、法改正にこぎつけた超党派の議員連盟総会で、会長で衆院議員の中川正春さん(立憲民主)がこう語ると、大きな拍手が湧き起こった。

議連事務局長で参院議員の矢田わか子さん(国民民主)は「女性の国会議員誕生から今年で75年。節目の年にどうしても改正を実現したかった」と語る。

市川房枝記念会女性と政治センター理事長の久保公子さんは「改正により半歩前進したことを評価したい。男性優位の政治を変えるのは簡単ではないが、粘り強く女性議員を増やす取り組みを続けていく」と話す。

これまで女性の政治参画を阻む要因として、地方議員や候補者へのセクハラが問題視されてきた。「性の対象として見られるのは残念で不本意」と話すのは、2019年の統一地方選で初当選した女性議員。ビラ配布中に男性から体を触られたり、陳情に来た男性からデートに誘われたり。情報発信のためのSNSに男性の裸の写真を送りつけられたこともある。

SNSでの被害増える

内閣府の「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究」(20年度)によると、女性の地方議員の約6割が何らかのハラスメントを受けた経験があると回答。防止策として倫理規定や相談窓口を設ける地方議会や政党、会派もあるが、十分ではない。今回の法改正に伴い、地方議会などでは研修の実施や相談体制の整備が図られるとみられる。

セクハラについては07年、企業に防止対策措置が義務づけられたが、被害件数は多いままだ。このため「改正されても被害は減らないのでは」と冷ややかな見方をする女性地方議員もいる。雇用関係や職場の上下関係などを背景としたセクハラと異なり、議員や候補者は不特定多数の有権者から被害に遭うことがある。SNSを通したハラスメントも増えており、対応が難しい。

実効性のある対策を打ち出すには、被害実態を早急に把握し、海外の好事例なども参考にしながら対応を練る必要がある。

地方議会 先駆けて研修

法改正に先駆け、ハラスメントに関する研修などを取り入れる地方議会もある。

「地方議会総合研究所」(東京)は、数年前からハラスメント防止のセミナーを依頼されることが増えた。代表の広瀬和彦さんは「議会改革の一環と捉えられている」とする。

ハラスメントへの理解が足りない議員のため、セミナーでは実際に訴訟になった事例などを挙げて説明している。「議員が自らを律することは住民から評価されにくいと考えられがちで、ハラスメントはこれまで注目されなかったのが実情。法改正で議員自身の認識が変わるはず」と広瀬さんは話す。

埼玉県の川越市議会は、市議からハラスメントを受けた市職員の申し入れを機に19年3月、「市議会ハラスメント根絶条例」を可決した。セクハラ、パワハラ、職員への誹謗ひぼう中傷などをハラスメントと定義。議員への研修の実施も盛り込んだ。

条例制定に携わった市議の大泉一夫さんは「ハラスメントは年々、多種多様になっている。毎年研修を行うことが望ましい」と話す。同条例とは別に「市議会議員倫理条例」の策定に向けた話し合いも進めており、「議員がハラスメントの防波堤になるべく、根絶への強い姿勢を示せるようにしたい」と大泉さんは話す。

公務員のハラスメント問題に詳しい人事院公務員研修所客員教授の高嶋直人さんは「今回の法改正は、議会の健全化を図る点で意義がある」と指摘。「ハラスメント防止の観点から条例制定や議員の研修を重ねることは、新たに参画したい全ての人にとって、議会が魅力的な組織に変わる一歩になるはずだ」と話している。(読売新聞生活部 板東玲子、野倉早奈恵)

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