モデル牧野紗弥 旧姓に戻るための事実婚、嫁の役割からの解放

モデルの牧野紗弥さん(37)は、新しい家族の形を模索している。それぞれが自分らしく、対等な関係でいられるように。その一つの方法として、法律婚から事実婚に切り替える準備を進めている。

役割に疑問

25歳で結婚し、出産後、29歳でモデルの仕事に復帰しました。この数年は3人の子どもの育児と家事で手いっぱい。子どもたちは6~11歳。保育園や小学校、習い事のスケジュール管理や持ち物の準備、送迎など……。一人で抱えきれなくなっていました。

夫もできる範囲でかかわっていましたが、どうしても私が中心。「私のしていること、全部やってみてほしい!」。ついに限界がきて、夫に1週間、全てを任せました。すると、夫は「こんなに大変だったんだね」と理解して、自ら期間を延長してくれました。

読売新聞夕刊OTEKOMACHI面「30代の挑戦」でインタビューに応える牧野沙弥さん
吉川綾美撮影

育児と家事の分担は進みましたが、モヤモヤが消えませんでした。そんな時、モデルを務める雑誌「VERY」で、社会学者・上野千鶴子さんのジェンダーに関するインタビューを読み、モヤモヤの原因がわかった気がしました。

ジェンダーとは、社会が作った男女の役割や、男らしさ・女らしさのこと。「夫は外で働き、妻が家庭を守る」「母親が子どもの世話をする」といった考えが私にも根付いていた。自分で自分を追い込んでいたのです。

事実婚を決心

結婚して夫の姓になり、夫の家に入ったという意識がどこかにあり、「嫁として」「妻として」という役割を自分に課すようになったのでしょう。姓を変えたことで思い込みに縛られていた部分もあったと気付いたので、夫婦のジェンダー意識を対等にする一つの取り組みとして旧姓に戻したいと思うようになりました。

今は、夫婦で離婚について弁護士に相談中です。旧姓に戻すための離婚なので、生活自体は変えません。ただ、日本では共同親権が認められておらず、親権を持たなくなる側のフォローをどうするか、慎重に話し合っています。

子どもたちにも離婚の意向を伝えました。最初は戸惑っていたけれど「生活は変わらない」「離婚ってそもそもマイナスなこと?」とじっくり話し合いました。

読売新聞夕刊OTEKOMACHI面「30代の挑戦」でインタビューに応える牧野沙弥さん
吉川綾美撮影

私は、家族といっても個人の集まりだと捉えています。子どもたちにも、先入観や立場にとらわれず判断できる人間になってほしい。それを体現できる母親になりたいと思っています。

私は30代で気づき、踏み出す決心をしました。そこに至ったのは、家族を優先して過ごした日々があったからこそ。事実婚に切り替えることでどんな変化があるかは、実現してみないと分かりません。ただ私自身、これからは自分が選択肢を持ち、そこから答えを見つけていける自立した存在でいたいと思っています。

◇ ◇ ◇

【取材後記】撮影の合間も、家族とのエピソードを楽しそうに話してくれた牧野さん。ジェンダー意識を変革する取り組みとして離婚する意思を伝えてから、子どもたちとも「親だから」「子どもだから」という意識を取り払って話せるようになってきたという。

「私が『いつか海外で生活してみたい』と話したら、小学生の娘から『ママの人生と私の人生はそれぞれだから』という言葉が自然と出たんです」。お互いの人生を尊重しあえるように、子どもたちが成長していることを喜ぶ姿は、自然体の親だった。

違和感を放っておかず、当たり前を疑う。牧野さんが取り組んだのは、とても勇気とパワーが要ることだと思う。
30代に至るまで、いくつもの場面で自ら何かを選んできたが、「自分の人生の選択が間違いではなかった」と思いたくて、多少のズレやモヤモヤは、ついやり過ごしてしまう。

ただ、とことん向き合ってみたら、新しい世界がひらけそうだ。未来を語る牧野さんの輝く笑顔を前に、そんな気持ちがわいてきた。(読売新聞社会部 大石由佳子)

「30代の挑戦」は、各界で活躍する女性たちにキャリアの転機とどう向き合ったかを、読売新聞の30代の女性記者たちがインタビューする企画です。

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牧野 紗弥(まきの・さや)
モデル

1984年生まれ。愛知県出身。「VERY」(光文社)など多くのファッション誌のモデルのほか、テレビやラジオなど多方面で活躍している。

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