三井デザインテック 豊かな時間を提案するアイデアのもととは

ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったり。自分らしく、生き生きと働く女性たちの「ハッピーアイテム」を紹介します。

木野田千晴(35)
三井デザインテック クリエイティブデザインセンター・デザイナー

人々の「豊かな時間」を提案するのが、私の目指すデザインです。ホテルを中心にマンション、オフィス、レストランの内装など、さまざまな空間をデザインしています。

今年4月に熊本市内に開業したホテル「THE BLOSSOM KUMAMOTO」も担当しました。デザイン・コンペティションでの受注に始まり、構想から完成まで3年半。実は、ピンチからのスタートでした。

私のハッピーアイテム 三井デザインテックデザイナー、木野田千晴さん 大手小町 読売新聞
三井デザインテックのショールームで照明について説明する木野田さん

コンペの発表日にまさか

コンペのとき、時間が限られる中、ぎりぎりまで根を詰めてデザインを考え続け、寝不足も加わって、発表当日に高熱を出してしまったのです。体調が限界でフラフラの私に、「これでがんばれ!」と上司がとっておきの高価なエナジードリンクを買ってきてくれました。事業主からの質問にはチームのメンバーが答えて、後方支援をしてくれて。本当にありがたかったです。チーム一丸となって勝ち取った受注でした。

熊本地震からの復興を象徴するプロジェクトでしたから、希望や未来への前向きなメッセージを込め、熊本の魅力が凝縮された空間となるように細部にまで気を配りました。内装は、熊本の自然や文化から着想しました。熊本県産の木材や畳、石などの素材を使い、館内に流すサウンドには、葉擦れの音やお祭りの音源を用いました。

ただ、開業直前になっても、達成感を感じる余裕はありませんでした。関係者向けのお披露目のときも、華やかな雰囲気のホテル内を私一人だけ、「まだ何かできないか」「少しでもよくするところはないか」と駆け回っていました。今を大切にすることで未来があると考えているから。あきらめの悪い性格なんです。

いつでもどこでも測っちゃう

お守りのようにいつも持ち歩いているのが、家具などのサイズを測るのに使う「コンベックス」です。仕事を始めた10年前に購入しました。一般的に派手でかさばるデザインが多い中、このコンベックスはシルバーですっきりとしたデザイン。持ち運びしやすく、プライベートで旅行に行くときもバッグに入れて、必ず持っていきます。

旅先でホテルの部屋に入ると、写真を撮って、まずは実測します。家族に入室を少し待ってもらって、通路の幅から、置いてあるデスクや収納の高さ、机の天板の厚み、扉に付いたかわいい取っ手のサイズまで測って、簡単なスケッチに起こすんです。すてきだな、美しい形だなと感じたものは何でも、とりあえずこれで計測します。元々、表面は鏡面仕上げでつるつるだったのですが、使い込むうちにたくさんキズが付いてしまいました。

常に寸法を意識して生活しているのは、設計する時に寸法の感覚が重要で、自分の体でしか会得できないと思っているからです。測らなくても寸法が分かるようになりたいので、これからもこのコンベックスで体にしみ込むように測っていきたいと思います。

アフターコロナのデザインとは

物心ついたときから、絵を描いたり、積み木で遊んだり、思い描いたことを形にするのが好きでした。よく秘密基地を作って遊んでいましたね。大学、大学院で建築を学び、1級建築士の資格を取りました。大学院生の頃、ヨーロッパ中を旅した際、建築からインテリア、プロダクトまで手掛ける海外の建築家の作品に触れ、私も幅広くデザインをしていきたいと思うようになりました。入社後は、イタリアのミラノで開催されるインテリア・デザインの見本市「ミラノサローネ」の視察にも行き、空間デザインのトレンド情報を紹介するセミナーの講師も務めています。

24時間全て仕事のために使い、何でも自分ひとりでやろうとしていましたが、出産で考え方が変わりました。周りには子育て、介護、家庭の事情などいろんな状況を抱えて働いている人がいることに改めて気付かされました。常に時間に少し余裕を持って仕事を進め、家族や仕事で関わる方々を大切に思うからこそ、いざというときには周りを頼ったり、後輩を信頼して仕事を任せたりするようになりました。

今、レストランやオフィスのデザインは、コロナ禍で変化しています。机の天板を無垢むくの木材ではなく、アルコール消毒に耐えられる素材にしたり、座席数を減らしたレイアウトを考えたり。カフェなどの対面で座るテーブルも、サイズが大きいものを選ぶようになっています。変化に柔軟に対応できることが求められています。

今までで一番うれしかったのは、私がデザインを手掛けた施設の利用者の方が、「この空間、すてきだよねー。居心地がよくて大好き」と何気なく言ってくださったのを聞いたときです。使う方が暮らしやすく、笑顔で心豊かになる。そんな空間デザインを追求していきたいと思います。

私のハッピーアイテム 三井デザインテックデザイナー、木野田千晴さん 大手小町 読売新聞

撮影/世良武史氏

(取材・文/読売新聞メディア局 谷本陽子)

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