求人情報こんな言葉に要注意…前向きな表現はブラック職場の危険

新卒の就職活動、アルバイト、転職などで仕事探しをするとき、企業がどのような人材を求めているかは気になるところです。ところが、募集要項に「人柄重視」や「人物重視」と記載している企業も少なくありません。「少数精鋭」「幹部候補」「アットホームな職場」などの魅力的な文言も目を引きます。このような求人情報の言葉が何を意味しているのか、採用アナリストの谷出正直さんに聞きました。

不採用は人柄に問題あり?

読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、「人柄重視」と書かれた求人募集を見かけたトピ主の「おはさん」がこんな投稿を寄せています。「不採用になったら人柄が良くないと言われているようで辛いです。協調性ある人とか具体的に書いてくれれば、向き不向きを考えられます」と募集要項の文言に関する疑問をつづり、「人柄重視って何なんでしょうか?」と尋ねました。

このトピをきっかけに、募集要項や求人広告の文言を巡って意見が交わされています。トピ主と同じように、求人広告の「人柄重視」や「協調性のある人」という表現に違和感を覚えるという「弥生」さん。「長くても20分程度の面接で人柄なんてわかりますか? ましてや協調性なんてわかるはずないですよ」と切り捨てます。

企業で採用に携わっているという「とおりすが~り」さんは、面接の場面で、スキルや資格が十分なのに、一緒に働くイメージの湧かない人がいるという採用側のエピソードを紹介。その理由を「社風に合わない」「人柄としか言えない」などと説明しています。

「人柄重視」という文言から企業の体質を怪しむ声もありました。「そんな募集をかける会社は用心した方がいい」と警告する「匿名」さんは、「危険信号ワードだと感じます。突き詰めて言えば、従順なイエスマン募集ってとこでしょうね。離職率が高そう」と推測します。

採用に必要な3つのポイント

それでは、募集要項に書かれている「人柄重視」という言葉は、どのように解釈すればいいのでしょうか。採用コンサルタントの谷出さんによると、極めて専門性の高い職種を除いては、採用する際に人柄や人物を重視するという企業は珍しくないといいます。

谷出さんは、「同じ業界でもそれぞれの企業で、社風や働き方はまったく違います。優秀な人材がほしいからといって、東大出身者ばかりでいいというわけでもありません。人柄や人物が、良い、悪いというのではなく、その企業と、合うか、合わないかという点が判断されるという意味」と説明します。

人材を求める企業と就職希望者のマッチングに必要なポイントとして、谷出さんは次の3つが大切としています。

〈1〉マインド(価値観)
〈2〉ビジョン(将来像)
〈3〉スキル(能力)

「企業が5年後、10年後に目指す姿と、自分が5年後、10年後になりたい姿が同じ方向を向いているか。将来、子育てをしながら働きたいと考えるなら、その環境が整っていて、それが可能な雰囲気があるかということは、マッチングに必要な価値観と将来像です。企業が求める一定レベルの能力がなければ、働く本人が苦労することになります」と、谷出さんは指摘します。

これらの3つが合致しなければ、不採用となるし、たとえ採用されたとしても、「こんなはずじゃなかった」と早々に会社を辞めたり、結婚や出産などのライフイベントを機に離職したりする可能性があります。

「肯定の言い換え」で悪いイメージを変換

「人柄重視」に限らず、人材募集の広告には、「少数精鋭」「幹部候補」「アットホームな職場」といった目を引くフレーズが使われています。やる気のある就職希望者にとっては、やりがいのある仕事というイメージがある一方で、曖昧な表現が怪しいという懸念もあります。

谷出さんは、募集要項や求人情報で注意すべき文言があるといいます。ネガティブなイメージのある仕事や職場について、「肯定の言い換え」が行われている可能性があります。

「肯定の言い換え」で変換された言葉の意味

「少数精鋭」⇒「どんどん人が辞める」
「幹部候補」⇒「責任が重い割に薄給」
「誰にでもできる簡単な仕事」⇒「単純作業」
「実力主義」⇒「成果を出さないと給与が出ない」
「未経験歓迎」⇒「人手不足、すぐに現場へ放り込む」
「将来は独立も可能」⇒「定年までいないで辞めてほしい」
「アットホームな職場」⇒「何もアピールすることがない」
「正社員登用制度あり」⇒「制度はあるけれど正社員になれるかは別」

このような「肯定の言い換え」が行われる背景に、谷出さんは採用活動に構造的な問題があると分析しています。「採用の本来の目的は、その企業が求める人物が応募してくれればいいはずですが、多くの企業で『応募者が殺到した』『就職の希望者が同業他社より多かった』『SNSのイイネが過去最多』といったことが採用担当者の評価につながり、人を集めることが目的となってしまっている」ということです。

人材募集がインターネットやSNSで行われるケースが増えたため、採用したい人物像や企業の理念といった内容よりも、どの求人サイトに出すか、どのような方法で拡散するかということを重視する傾向にあります。谷出さんは「企業の採用活動がルーティン化してしまっており、過去に応募実績のあった文言を使い回しているだけ」と問題視します。

求人広告の人柄重視ってどういう意味?採用面接を受ける女性
写真はイメージです

ただ、職場の雰囲気や労働環境、給与やボーナスなどの実態は、SNSや口コミサイトで広く知られるようになったため、求人情報と大きくかけ離れた悪質な例は減りつつあります。

とはいえ、谷出さんは「コロナ禍で離職を余儀なくされ、働く場がすぐに見つからないという人も少なくありません。そんな求職者の弱みにつけこみ、ブラックと思われる求人が増える土壌があります」と警鐘を鳴らします。

「他と比べて給与が高い」「採用数が異常に多い」などのうまい話は要注意です。面接が「短時間で雑談のようだった」という場合もリスクがあります。「夢」「感動」「成長」「情熱」などの言葉が散りばめられた求人情報を見かけたら、それは怪しい仕事かもしれないと疑ってみたほうが良さそうです。

(読売新聞メディア局編集部 鈴木幸大)

【紹介したトピはこちら】
(求人の)人柄重視

谷出
谷出 正直(たにで・まさなお)
 採用アナリスト・コンサルタント

1979年奈良県生まれ。筑波大学大学院体育研究科を修了後、エン・ジャパンに入社。新卒採用支援事業に約11年間携わる。2016年に独立し、企業への採用コンサルティングや採用アナリストとして活動。企業の経営者や人事担当者向けの講演、学生向けのキャリア支援、メディアへの情報発信を行っている。

Keywords 関連キーワードから探す