知っておきたい「公的年金を増やす三つのワザ」

前回のコラムで、「ねんきん定期便」の見方についてお話ししましたが、公的年金だけで老後の生活を賄うのは難しいと感じた方も多いことでしょう。でも実は、公的年金を増やす方法があります。今回は、公的年金を増やす方法についてお話をします。

会社勤めの働き女子は、長く働いて年金を増やす

会社勤めの女性の皆さんは、「厚生年金」に加入していると思いますが、厚生年金の加入者は、長く働くことで将来受給できる年金を増やすことができます。

というのも、自営業やフリーランスの方が加入する国民年金は、原則60歳までしか保険料を納めることができないのに対し、厚生年金は70歳まで加入し、保険料を払い続けることができるからです。長く働く分、保険料を払い続けるのだから、多くもらえるのは当たり前と思う方もいると思いますが、公的年金は生涯にわたって受け取れるので、その効果は大きいでしょう。

そもそも、厚生年金加入者が受け取る年金の金額は、厚生年金への加入期間と、給料(標準報酬月額)に応じて納めた保険料とで決まります。

では、長く働き続けると、どれくらい年金が増えるのでしょうか?

【老齢厚生年金額の計算式(2003年4月以降の加入分)】

平均標準報酬額(ボーナスを含めた平均の月収)×5.481/1000×保険料納付月数

仮に、平均月収25万円で60歳から65歳まで働いた場合を見てみましょう。

◇25万円×5.481/1000×60か月=8万2215円

年間で約8万2000円増えることになります。

仮に上記のケースで60歳から70歳まで働いた場合には、

◇25万円×5.481/1000×120か月=16万4430円

年間で約16万4000円も増えます。

ただし、現状は在職老齢年金制度により、一定の収入を超えた場合には、65歳以降の年金が減額されるので注意が必要です。   

若いうちから健康に気をつけて、長く働き続けるスキルを身につけることで、年金を増やすことができるのです。

自営業、フリーランスは「任意加入」と「付加年金」で増やす

自営業やフリーランスの方は、国民年金に加入していると思います。基本的に国民年金は、20歳から60歳までの40年間加入しますが、国民年金に10年間加入していれば、老齢基礎年金を受給することができます。

とはいえ、満額の年金(年額78万900円。2021年度価格)を受給するには、40年間加入することが必要です。60歳前に保険料の免除や未納がある場合には、満額は支給されません。

そこで、年金額を満額に近づけたい時には、60歳から65歳まで「任意加入」することができます。例えば、40年の加入期間まで3年足りないということであれば、60歳から3年間、追加で加入することにより、満額が支給されます。

お金のレッスン 年金
写真はイメージ

また、自営業者やフリーランスだけが加入できる制度で手軽に年金を増やすことができる「付加年金」があります。これは、毎月400円を国民年金保険料に上乗せして納付すると、「付加年金を納付した月数×200円」が老齢基礎年金に増額されます(ただし、国民年金基金に加入している場合には付加保険料は納められません)。

例えば、付加年金の保険料を20年間(240か月)納付する場合、支払総額は、400円×240か月=9万6000円となります。将来受け取れる付加年金の年金額は、200円×240か月=4万8000円です。

この4万8000円が、生きている限り、毎年受け取れますので、2年間受け取ると、4万8000円×2年=9万6000円。この時点で、支払った金額の元が取れ、2年を超えて長生きすればするほど、お得になるということです。

「繰り下げ受給」を活用する

会社員、フリーランスに共通する年金を増やす方法として、「繰り下げ受給」があります。

年金をもらうのは原則65歳からですが、60歳から70歳まで(2022年4月より75歳まで)の間で選ぶことができます。年金の受給開始を早めることを「繰り上げ受給」、遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。

年金の受給開始を1か月遅らせるごとに、受け取れる年金の金額は0.7%ずつ増加します。70歳時点で、受け取れる金額は最大42%(2022年4月より75歳まで繰り下げた場合84%)も増やすことができます。逆に、年金の受給開始を1か月早めると、受け取れる金額は0.5%ずつ減っていきます。60歳から受け取ると、受け取れる金額は最大30%も減ります。なお、申請した後は、途中で変更することはできません。

ちなみに、繰り下げ受給は、老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰り下げることもできますし、どちらか一方だけ繰り下げることもできます。

どの時点で年金を受け取るのがもっとも得かは、「何歳まで生きるか」によります。とはいえ、平均寿命が延び続けていることを考えると、老後を豊かにするためには、少しでも多くもらえる繰り下げ受給という選択肢を考えておくことも必要でしょう。

現在、保険料の負担が重く、支払うのが嫌だなと思っている方も多いと思います。しかし、公的年金は老後の収入の主要な柱です。若いうちから年金の知識を身につけて、将来に備えていきましょう。

高山一恵さん
高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャルプランナー

 慶應義塾大学卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画。2015年から株式会社Money&Youの取締役。結婚、出産、夫の転勤など人生に多くの転機が訪れる女性にこそお金の知識が必要と考え、講演、個人マネー相談のほか、雑誌の記事執筆やテレビ番組出演など精力的に活動している。著書に「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)、「ゼロから始めて2時間で一生困らないマネープランができる本」(彩図社)など。

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