妊婦のおなかを触る男性社員…祝意のつんつんがアウトな理由

働く女性が増え、妊婦がいる職場も珍しくなくなりました。子供を授かった仲間を祝福したくて、ついおなかを触ってしまう人もいるかもしれません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、妊娠中の女性が「男性の先輩がおなかを触ってくる。『触らないで』とも言いにくく、いつも我慢しています」と打ち明ける投稿が寄せられています。妊婦のおなかを触ることの是非について、専門家に聞きました。

触られたくない、でも言えない

妊娠して安定期に入り、先日、職場に報告をしたトピ主の「さき」さん。その日から、年配の男性社員が、トピ主さんのおなかを触ってくるようになったそうです。ただ、触り方は「なでる」というより「指でつつく」感じ。他人に体を触られるのは抵抗がありますが、悪気がないと思うと「触らないで」とも言いにくく、いつも我慢しているそうです。「相手を傷つけずに、触らないでほしいと伝えるにはどうしたらいいのでしょうか。それとも、指でツンツンされるくらいのことに過剰に嫌がる私がおかしいのでしょうか……?」と、トピ主さんは意見を求めています。

「人間は面白いもので、丸いものだと不思議と触りたくなるようです」と話すのは、三鷹レディースクリニック(東京・三鷹市)院長の天神尚子医師。以前は、妊娠中の女性のおなかに触ると、「宝くじがよく当たる」「武運を授かれる」と言われるような時代もあったとか。天神さんは、「ちょっとくらい触ったところで大丈夫ですが」と前置きしたうえで、「あまりにも頻繁に触られたり、こすられたりするとよくない」と注意を促します。

触りすぎると、おなかが張る

妊娠5か月(16週)くらいになると、胎盤が出来上がるため、「安定期」に入ります。ただ、安定期に入っても、ゴシゴシこすったり、つんつん突いたりといった外的刺激は、子宮を収縮させてしまうことがあるそうです。これを「おなかが張る」と言い、おなかの張りは早産の兆候となる可能性があるため、「安定期に入っても気を付けたほうがいい」と天神さんは説明します。

初めての妊娠の場合、おなかの張りの感覚も初めての経験。“張っている”状態がわからない妊婦さんもいます。おなかの張りを確認するためには、装置をおなかに着け、子宮の収縮を計測します。収縮の状態が波形状に表示されるので、それを見せて「おなかの張る感覚」を覚えてもらうそうです。

「1日数回の短い張りくらいなら大丈夫ですが、頻回に張ったり、横になっていたら治まるが、起き上がるとすぐ張ったりする状態だと、病院に相談したほうがいいでしょう」と天神さん。特に、やせている妊婦さんは子宮を守る脂肪が少ないため、おなかを触ると直接子宮の筋肉を刺激してしまうので、張りやすいそうです。おなかの中の赤ちゃんとコミュニケーションを取るような優しい触り方でも、おなかが張ってしまうなら要注意です。

妊婦のおなかの音を聞く男性
おなかが張るなら、触りすぎには気を付けて

職場で増える働く妊婦

現在、来院する妊婦のほとんどが働いていると天神さんは言います。もしも職場に妊婦がいて、おなかを触ったら、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)に当たるのでしょうか。

インテグラル法律事務所(東京・千代田区)の西山温子弁護士は、「妊娠を理由に配置換えを命じたり、妊娠したことに文句を言ったりするのがマタハラ」と説明します。「おなかを触る」という体に接触する行為は、マタハラというよりセクハラの対象になります。といっても、接触と一緒に「こんなおなかになったら、もう働けないなぁ」といった言葉が伴うと、マタハラの対象にもなるそうです。

もし、触られたくないなら、「まずは、軽いノリで『それ、セクハラです』と言うのも一案です」と西山さんは言います。「ノー」という意思表示をしたにもかかわらず、相手が執拗しつように繰り返すと、悪質性が認められることになります。西山さんは「職場で波風を立てたくない気持ちと、やめてほしいという気持ちのバランスを取るのは難しいですが、『ノー』であることは伝えてみたらいいと思います」と話します。

天神さんは「『おなかが張り気味だから、医者にあまり刺激しないでと言われている』と、やんわりと断ったらいい」とアドバイス。「妊娠はおめでたいことで、仕事仲間のみんなに『赤ちゃんを元気に生んでほしい』という気持ちがあるのでしょう。働く妊婦さんは頑張り屋さんが多いので、優先順位を考えて、無理しすぎないことが大切ですね」と話しています。

(読売新聞メディア局 渡辺友理)

【紹介したトピ】
妊婦のおなかに触ってくる男性の先輩について

あわせて読みたい

Keywords 関連キーワードから探す