【SDGsの基礎】なぜジェンダー平等と女性の能力強化なのか?

SDGsはこれからの暮らし方や働き方の指針となる世界共通の目標です。でも、自分がどうやって関わればいいのか分からないという人も多いのでは? 働く女性がこれだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんが解説します。連載最終回は「SDGsの役割」について考えます。

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この連載をスタートした1月から4か月余り。この間に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗・前会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という発言をきっかけに、日本ではこれまでないくらいに、女性や社会における多様性に注目が集まったと思います。

「ああ、またこういうことが起こってしまった」「日本だから仕方がない」と、飲み込んでやり過ごすのではなく、「これはさすがにおかしい」「言わなくちゃ」と思って、周りの人と感想や意見を述べ合うことから社会の空気を変えられると、多くの人が気づいたのではないでしょうか。

時を同じくして、SDGsに関する記事や広告も増えている実感があります。なかには、「うちの会社でもSDGsバッジを付けている部長が多いけど、バッジを付けるだけでいいと思っているの?」とか、「なんでもかんでもSDGsに結びつけるのはうっとうしい」といった疑問を感じる人もいるかもしれません。

SDGsに対して、このようにややネガティブな気持ちを抱いた自分を「うがった見方かもしれない」と思ったとしても、やっぱり疑問なのであれば、正々堂々と言ってみることが大事だと筆者は思います。

SDGsの特徴は、「世界ではこんなことが課題になっている」と私たちの視野を大きく広げてくれたり、「世界でも同じように悩んでいる人が多いんだ」と背中を押してくれたりするところです。いろいろな意見を出し合えることは、世界的にみてもとても重要なのです。

もちろん、SDGsとて万能ではなく、「大量生産・大量消費はやめよ」というわりには、別のところで「製造業にシフトせよ」と書いてあるなど、経済的な基盤を作りたい途上国の思いが強く出ているところもあります。

そうした点も含めて、今の日本や世界の状況を理解する手がかりを与えてくれているのだと思います。

地球儀を見つめる少女。SDGsの達成された豊かな未来とは?
写真はイメージです

これから目指す「豊かな社会」とは?

この連載では、女性の仕事や生活に関わる様々な課題に対し、SDGsがどのような見方をしているのかを紹介してきました。

そもそも、なぜSDGsは5番目の目標に「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」としているのか考えてみましょう。

SDGsの17の目標は、2015年9月の第70回国連総会で採択された「2030アジェンダ」と呼ばれる文書の中に書かれています。

アジェンダの前半部分には、これから目指す豊かな社会のイメージについて、「チャンスや豊かさ、力の大きさが誰かに偏っているのはおかしい」という価値観が示されています。

それが是正されていない大きなテーマの一つが、ジェンダー(社会的な観点でみた性差)だということなのです。そういう意味では、人種差別も同じでしょう。

足元に視点を戻すと、新型コロナウイルスの感染拡大は、非正規雇用の多い女性たちの経済状況を悪化させる「女性不況」を招いています。2020年の女性の自殺者数は、2019年より935人多い7026人に増加するなど、女性を巡って厳しい数字が出てきています。

ただ、苦しんでいるのは女性だけではありません。男性の自殺者数は11年連続で減少しているとはいえ、2020年は1万4055人で女性の2倍です。国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、国内のコロナの死者数(4月26日現在)は、男性が女性の1.4倍に上っています。

いろいろなことに挑戦できるチャンス、発言する力、努力に対する報酬・・・・・・、豊かさを測る尺度はいくつもあります。平均寿命も豊かさを考える要素の一つですが、男性よりも女性が長いことはよく知られています。

SDGsは、このように様々な角度から暮らしの豊かさを考えるきっかけをくれていると言えるでしょう。

「働く女性とSDGs」は、今回が最終回です。お読みくださったみなさん、ありがとうございます。「SDGsって実はおもしろい」。連載を通して、そう思ってくれる人が増えるといいなと思います。

SDGsが掲げる17のゴール
SDGsが掲げる17のゴール

SDGsSustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「飢餓をゼロに」「平和と公正をすべての人に」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「図解SDGs入門」(日経BP)。

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