【SDGsの基礎】男性の家事増えても妻の負担と不満が減らない理由

SDGsは、これからの暮らし方や働き方の指針となる世界の共通目標です。でも、自分がどうやって関わればいいのか分からないという人も多いのでは? 働く女性がこれだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんが解説します。連載8回目のテーマは「女性とパートナー」です。 

【質問】
30代会社員女性。4歳の娘と出版社勤務の夫と3人暮らし。夫は家事や育児に協力的ですが、やることと言えば、「ゴミ出し」「洗濯機を回す」「掃除機をかける」という具合です。実際には、洗濯機のほこり処理、洗剤の詰め替え、排水溝の掃除……、細々としたことが山ほどあります。夫に「もっと協力して」とお願いしたら、「俺のほうが仕事の時間が長いのに、これ以上家事なんてできない」と言われました。どうすれば、家事を分担してもらえるのでしょうか。

複数の人間が一緒に過ごす家庭のなかで、家事の分担をどうするか、というのは永遠の課題ですね。「料理」「皿洗い」「掃除」「洗濯」といった分かりやすい家事の分担もそうですが、「名もなき家事」と言われる細かな作業は誰がするのでしょうか。

家庭内で行う衣食住に関わる用事と、誰かを世話するケアは、総称して「家事・育児・介護」と呼ばれます。「家事」と「育児・介護」を一緒にすることに違和感があるという人もいるかもしれませんが、お金を稼ぐ「仕事」との対比において、これら3つがまとめて語られることが多くなっています。

男女共同参画白書の令和2年(2020年)版では、冒頭の特集に『「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス』が取り上げられました。仕事での働き過ぎだけでなく、家庭内における「家事・育児・介護」での働き過ぎにも目を向けることが、仕事と生活のバランスを考える上で重要だという視点でまとめられています。

増えている夫婦の「家事・育児・介護」

みなさんは、「家事・育児・介護」と「仕事」それぞれに1日どれくらいの時間をかけていますか。

「家事・育児・介護」にかける時間の変化をみると、30代女性は1976年に5時間9分でしたが、2016年には4時間33分に減り、およそ30分短くなりました。

料理や掃除、洗濯などの「時短」がうまくできていると評価したいところですが、40年間でわずか30分ということは、1年にすると1分にも満たない計算になります。

世代別でみると、大きく減少している20代(折れ線グラフの点線部分)で4割台にまで下がっていますが、これは、結婚年齢が上がっているためと考えられます。4064歳は変化がほとんど見られず、65歳以上は増えています。

男性の家事にかける時間が延びていますが、妻の不満はなくなりません。なぜなのでしょうか?
女性の世代別、家事・育児・介護にかける時間(単位:分)(男女共同参画白書令和2年版 I-特-1図のデータをもとに筆者作成)

一方、男性の「家事・育児・介護」にかける時間を1976年と比べると、全世代で24倍に増えており、なかでも30代は4倍超となりました。そう考えると、「男性も家事をするようになった」と喜んでよさそうな結果に見えます。

ただし、30代男性で12分(1976年)だった時間が50分(2016年)になったというのが実態です。確かに、4倍以上増えていますが、1日当たり1時間未満の変化に過ぎません。女性との開きは、まだまだ大きいことが分かります。

また、30代の「家事・育児・介護」にかける時間を男性と女性で足してみると、5時間21分(1976年)から5時間23分(2016年)へ2分長くなっていることが分かります。なぜ、夫婦やカップルの「家事・育児・介護」にかける時間が増えているのか、原因をしっかり突き止める必要があるでしょう。

「家事・育児・介護」と対照的に「仕事」にかける時間は、男性が女性よりも長くなっています。そして、仕事の時間は時代による変化がほとんど見られず、1976年と2016年は30代男性でいずれも8時間20分でした。40年を経ても、1分の違いすらありませんでした。

家事労働が女性に偏る原因は?

家事労働について、SDGsはどう扱っているのでしょうか。5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」の中に、「公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」とあります。

冒頭では、保育所や介護施設などの公的なサービスの充実を促しています。中盤では、各国の文化的な背景を念頭に置きつつも、性的な役割分担を固定しないことを求めていると言えるでしょう。

後半の「無報酬の」というストレートな表現に、筆者は少しびっくりしたのですが、SDGsは、「家族によって無償で行われる家事・育児・介護を減らし、有償の外部サービスを活用して何らかの経済活動に見えるようにせよ」と言っているのではありません。

むしろ、「家事・育児・介護の価値をきちんと認める(評価する)ことが重要で、社会全体での分担も含め、分担の偏りを小さくせよ」と言いたいのではないかと思います。

ユニセフによると、世界で17500万人以上の子供が保育所や幼稚園に通えていないという実態もあります。世界に目を向けると、就学前の子供たちに対する教育やケアという役割について、社会全体の支援が行き届いていない現実があるのです。

女性に負担が偏りがちな「家事・育児・介護」を日々繰り返していれば、身近な夫に「もっと協力してほしい」と思うのも無理ありません。

ですが、「うち以外はどうなっているのだろう?」「社会全体の責任分担ってどうなの?」「海外ではどうやって分担しているのかしら?」と思いを巡らせてみると、負担の大きさの原因が見えてくるかもしれません。

SDGsが掲げる17のゴール
SDGsが掲げる17のゴール

SDGsSustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「飢餓をゼロに」「平和と公正をすべての人に」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「図解SDGs入門」(日経BP)。

 

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