主張したら疎まれ、同調すれば疲弊…「職場の人間関係」ストレス対処法は?

自分らしい働き方や生き方を考える「キャリア小町」。キャリアコンサルタントの土屋美乃さんが仕事の悩みや転職の不安などについて、働く女性にアドバイスします。

「職場の困った人間関係」を考えるシリーズ2回目のテーマは「人間関係の作り方」です。間もなく新年度を迎えるこの時期は、組織改編や採用・退職などに伴う人事異動の季節でもあります。

どこかの組織のように、ある日突然、トップが変わってしまうこともあるでしょう。幹部の女性比率が注目されるようになったため、新年度から部長クラスに女性が増えるなんてこともあるかもしれません。もちろん、自身の転職や異動で新たな環境へ飛び込むというケースもあります。

いずれの場合でも、気になるのは職場の「人間関係」です。どんな人たちと働くのか、同じ年代の同僚はいるのか、上司になる人はどんな性格か……。新しい職場では、仕事に必要なスキルや手順を一から教えてもらう必要があります。自らの業務をスムーズに行うためにも職場の人間関係はとても重要です。

あなたはどっちのタイプ?

人付き合いが下手だと思ったり、気を使いすぎて疲れてしまったり、人間関係を築くのに苦手意識を持つ人は少なくありません。人間関係を構築するには、「自分のことを知ってもらう」「相手のことを知る」という相互理解が必要なのは言うまでもありません。ところが、自分の意見を言うと疎まれ、周囲に同調ばかりでは不満が募ります。

人間関係を築くには、自分が「意見を主張することが得意なタイプ」なのか、「周囲の意見を受け入れることが得意なタイプ」かによって気をつけるポイントは変わります。具体的な状況で考えてみましょう。例えば、新しい職場で、上司や先輩がこんなふうに声をかけてくれたとします。

「仕事のやり方などで気が付いたことがあれば、ぜひ言ってください」
「もし、何か分からないことがあれば、いつでも聞いてくださいね」

こんな時、自分だったらどのような返答をするでしょうか。

正しくても受け入れられるとは限らない

働いた経験のある人なら、新しい職場に数日いれば、組織の弱点や働き方の課題に気づくと思います。自己主張タイプの人はこのとき、それまでのキャリアや経験を生かして、問題点の指摘や改善策の提案をするでしょう。

「この仕事の進め方は古いと思います。こうしたほうが良いのではないでしょうか」
「このやり方では時間の無駄です。もっと生産性を上げる方法があります」

自己主張タイプの人は、常に問題意識を持って物事を見る傾向がありますから、会社や組織にとって良かれと思って意見を言います。

ただ、それぞれの職場には、「無駄」「非効率」「時代遅れ」などと思えるような慣習や文化があります。それらが作られ、今なお残っている理由や経緯も何かしらあるものです。だから、新しい手法や考え方を一方的に主張されれば、長くその職場にいる人たちにとってはおもしろくありません。

たとえ、その主張が正しく、賛同を得たからといって、必ずしも取り入れられるとは限りません。「やせたいなら、毎日の運動と食事制限をしましょう」というアドバイスにだれもが共感するはずです。しかし、これを受け入れて、実践するかどうかは別の話なのです。

人間関係で自己主張タイプの人が気をつけるポイントは、「まずは受け入れる」という姿勢を見せることです。新しい職場のやり方を否定せず、肯定と承認をしてから、自分なりの意見を伝えるという順番でアプローチすることが大切です。

自分を押し殺して人間関係が悪化

一方、周囲の意見を受け入れるタイプの人は、「もっと良い方法があるのに」「こんなのおかしい」という気持ちをぐっと押し殺している可能性があります。受容力の高い人は、すぐに新しい職場に溶け込み、仕事への対応力に長けているように見えます。

ただ、人間関係も円滑に築けているかは疑問です。自分とは違う考えに同調しすぎることで、気がつかないうちにストレスをため込んでいるでしょう。職場の抱える課題に無頓着な上司や同僚らに「疲弊」し、徐々に「不満」や「怒り」を感じるようになります。その感情は、次第に「諦め」「絶望」、そして「無関心」へと悪化していくかもしれません。

自分の心に芽生えたざわつきを、しっかりとキャッチすることが大切です。これまでに培われた職場の文化、働き方を尊重すると言えば聞こえはいいですが、自らの意見を言わないでいることは、職場の一員として労働環境の改善を怠っているとも言えます。

異なる意見や反論を恐れず、勇気をもって自らの主張をすることも忘れてはいけません。

キャリアカウンセラーの土屋美乃さんが働く女性にアドバイスする「キャリア小町」。職場の人間関係が苦手という人へ対処法を示します
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人間関係を円滑にするコミュニケーションとは?

では、相手の立場を尊重しながらも、自分の意見をしっかり伝えるにはどうしたらいいのでしょう。円滑なコミュニケーションを行う方法に、「アサーション」もしくは「アサーティブ・コミュニケーション」と呼ばれるスキルがあります。

「アサーション=自己主張」と訳されることもありますが、コミュニケーションにおけるアサーションは「自分も相手も大切にする」といったニュアンスが含まれます。

つまり、相手に対して自己主張を押し付けすぎず、かといって自らを妥協することなく、その場にふさわしい表現で行うコミュニケーションスキルです。職場で率直な意見を交わすことができるだけでなく、職場の人間関係を構築する方法としても効果があります。

なぜ意見をすると攻撃的に聞こえるのか?

すぐに実践できるアサーションの方法は、「Youメッセージ」を「Iメッセージ」に変えることです。

例えば、あいさつをしない同僚に注意をする場合、「あなたは、ちゃんとあいさつをした方がいい」と伝えるのではなく、「私は、あいさつをお互いにした方が気持ちいいと思う」という言い方にしてはどうでしょう。

相手を主語に意見をすると、どうしても攻撃的な印象を与えてしまいます。

「君のやり方はおかしい」→「私は違うやり方のほうがいいと思う」
「そんなこと言っても無理です」→「そんなふうに言われると、戸惑ってしまいます」
「何を言っているかさっぱり分からない」→「私は、もう少し分かりやすく説明してもらいたい」

このように「私」を主語にしてみると、相手を責めるような言い方にならず、自分の主張や気持ちが伝わりやすくなります。このように、コミュニケーションを見直してみるだけで職場の人間関係はぐっと良くなるでしょう。

もちろん、このスキルは職場だけでなく、夫婦、親子、恋人同士にも活用できます。春は、別れと出会いの季節。新しい環境に尻込みせず、自分らしく人間関係を築いてください。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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