産休・育休からスムーズに復職…先進企業パナソニックの工夫

妊娠や出産、育児など社員のライフイベントを後押しする産前産後休暇制度や育児休業制度。いずれの制度も法律で定められたものですが、企業が「もっと制度を使いやすくしよう」と独自に工夫しているケースもあります。これから年度替わりには、産休・育休が明けた社員を再び迎える職場も多いでしょう。社員が不安なく産休・育休に入り、スムーズに復職するための施策に力を入れている企業の一つ、パナソニック システムソリューションズ ジャパン(本社・東京)のケースを取材しました。

まずはおめでとう!を言いたい

油田さなえさん(右)と佐藤真理さん(パナソニック システムソリューションズ ジャパン本社で)
油田さなえさん(右)と佐藤真理さん(パナソニック システムソリューションズ ジャパン本社で)

「部下が妊娠報告してきたとき、まずは『おめでとう』と言える上司であってほしいですね」。そう話すのは、パナソニック システムソリューションズ ジャパン(略称・PSSJ)の人事部部長、油田あぶたさなえさん。システムエンジニア出身の油田さんは、2017年に人事部に異動して以来、数々の制度改革を手掛けてきました。

同社の社員の男女比は、現在84:16。油田さんが人事部に異動したばかりのころには、女性の部下を持ったことがないという管理職も少なくありませんでした。そこで油田さんは、管理職向けのダイバーシティ研修で、部下から妊娠報告を受けたときの振る舞い方について説明しました。

「まず初めの一言では『おめでとう』と祝福の気持ちを伝えることが大事です。産休や育休をどういう形で取ろうとしているのか、妊娠に伴う体調への配慮がどの程度必要なのかなど、聞きたいことはいろいろあると思いますが、それらは後日、面談形式で具体的な制度について説明しながら、しっかりと情報共有していったほうがいいです」

きめ細かい面談は上司主導で

同社では、妊娠報告をした女性社員については、時期を4回に分けて、直属の上司が人事部の作った面談シートに基づいて個別に面談を行っています。

<1>妊娠報告後(報告を受けてから3週間以内)
<2>産前休暇に入る前(1か月程度前には)
<3>保育園など子どもの預け先が決まったころ(復職1~2か月前)
<4>復帰後(復職後2~3か月)

<1>の面談は、出産までの不安や、出産後のキャリアイメージと働き方について上司と部下が対話することを目的にしています。

面談シートの各項目には、体調や出産予定日、産休に入る時期、育休の予定の有無を確認することのほか、妊婦健診の際の休暇制度や、昼食休憩のほかに補食(おやつ)の時間を設けられる制度、医師の診断に基づく妊産婦短時間勤務制度など、同社にはさまざまな制度があることが書かれています。

制度の活用について、上司と部下に共通認識を持ってもらい、本人が望まない形でキャリアを中断することのないようにするためです。面談を行った上司には、部下と後任体制や引き継ぎ計画を打ち合わせるように促しています。

<2>の面談は、業務の引き継ぎ状況や休業中の連絡先、復職に対する不安などについて、上司と部下が対話することを目的にしています。

あらためて出産予定日や産休開始日を確認したうえで、さらに年休取得の予定や里帰り出産の有無なども聞きます。復職後にどんな働き方を希望するのか、復職後の昇格やキャリアプランについて、今の時点でどんなイメージや希望を持っているかも確認します。上司には、次の面談に備えて、本人に連絡を取る場合の手段を確認するように促す一方で、休業中に仕事の指示・連絡は行わないことなどを注意喚起しています。

<3>は、復職後の業務内容や働き方について話し合い、スムーズな復職を目指すために行います。

面談は、場合によっては子連れで実施するなど、本人の状況に合わせて柔軟に対応します。保育園など子どもの預け先は確定したのか。結果待ちなら、いつごろ結果が出るのか。育児の分担やサポート体制についても具体的に聞き出し、最終的に復帰の日程をいつにするのかを話し合います。復帰後の働き方については、休業前と同じでいいのか。「ワーク&ライフサポート勤務(時短勤務)」制度を利用するのか。時間外業務、深夜業務、休日出勤、出張などについて配慮が必要かどうかなども聞き出すことにしています。

<4>は、復職後の働きについて上司と部下が相互にコミュニケーションをとり、その後に生かすことを目的にしています。

部下にとっては、復職してみて初めてわかることも多い時期。仕事と育児との両立で困っていることはないか。復職後の働きぶりについて上司がフィードバックしながら、担当業務や昇格・働き方について、本人の意思を確認していきます。上司としての期待や育成計画などを共有するように促しています。

ダイバーシティ推進課のメンバーも同席

面談のイメージ
面談のイメージ

妊娠、出産、復職。それぞれの時期によって、不安に思っていることや職場に知らせておきたいことなどが変わってくる可能性もあります。4つの時期に分けた面談のうち、<2><3>の面談には、ダイバーシティ推進課のメンバーが必ず同席し、具体的なアドバイスを行っています。「保育園の慣らし保育がどんなものかなど、仕事と育児の両立や復帰時期について具体的に相談できる機会にもなっているようです」とダイバーシティ推進課の佐藤真理さん。

「健康状況や家族のサポートの度合い、希望する働き方、今後のキャリアへのイメージは、個々に違います。きめ細かい面談を実施するようになって、育休取得後にフルタイムで復帰する女性も出てきました。いろいろな選択肢の中から、最適なものをそれぞれに選び取ってほしいものです」と油田さん。上司の方からも「面談の目的がよくわかる」「聞きにくいこともさらりと聞けるようになった」といった声が上がっているそうです。

男性の育児休業も推進中

同社では、男性社員の育児休業も推進しています。子どもが生まれてから1年間に、2週間以上の休暇を取ることを職場・上司に“義務化”。給与面でも、最初の休業期間のうち、開始から30日間(暦日)は出勤扱いとして、収入が減らないように制度を変更したところ、2017年度までほぼ0だった取得率が、18年度に22%、19年度には一挙に74%に上昇しました。

同社のイントラネット上には、育児休業を取得した男性のインタビュー記事も掲載されています。たとえ休業期間は1か月未満と短くても、事前に仕事の引き継ぎをして円滑に休業できた体験談など、制度変更の反響は大きいそうです。

「病気やケガを含めて、だれもが人生のステージでいろいろなことが起きます。産休や育休は『この時期、休みます』とあらかじめわかっている分、職場内の準備はしやすいわけで、もし複数の部下が休業して、その部署だけで補えなかったら、他部署と融通し合うなど、柔軟に構えるべきだと思います」と油田さんは強調します。

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今年1月にTBS系列で放送されたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!」では、主人公・みくり(新垣結衣さん)の妊娠と、夫の平匡(星野源さん)の“育休宣言”が一つのテーマでした。ドラマの中では、男性部下の育休を嫌がる上司が登場。その上司に、元の上司で今は別の会社を経営している男性が「育休でなくても急病やケガで休むこともある。誰が休んでも仕事が回る。帰ってこられる環境を普段から作っておくこと。それが職場におけるリスク管理でしょ」と言い返すのが印象的でした。

こうしたセリフが視聴者の心をつかむのも、多くの職場で、戦力である社員の産休・育休について悩んでいるためかもしれません。男女を問わず、一定期間、抜けてしまった穴をどう埋めるか。復帰した社員の戦力化をどう図るか。先進例に学びながら、工夫していきたいものです。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

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