職場の雑談、うるさくて仕事の邪魔なのに必要とされるのはなぜ?

複数人でのランチ自粛、出勤人数の削減など、コロナ禍で職場の雑談が消えつつあります。ともすると「返事をするのが面倒」「うるさくて気が散る」などと嫌われがちな雑談ですが、「アイデアが出やすい」「ストレスの解消につながる」といった調査結果もあります。はたして雑談は仕事に必要なのでしょうか。企業や自治体の業務改善や組織活性化を支援するオフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさんに聞きました。

雑談でストレスを解消

サントリー食品インターナショナルが昨年9月に行ったリモートワークでの雑談に関する調査(2069歳男女、回答者200人)によると、「減った」「やや減った」を合わせて71%の人が、雑談が減ったと回答しました。「雑談があるとアイデアが生まれやすい」と答えた人は70%に上り、「雑談で人となりが分かる」「雑談でリラックスできる」などの好意的な意見が多数を占めました。

リクルートキャリアが実施した調査(2060代男女、回答者2272人)では、「テレワークによるストレスを解消できていない」とする人に、仕事中の雑談の有無を聞いたところ、「雑談あり」と答えた人が63%なのに対して、「雑談なし」は77%で、14ポイントの開きがありました。同社は「雑談はストレスを解消する大切な職場コミュニケーション」だとしています。

気になって仕事に集中できない

一方、読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」には、職場の雑談について否定的な意見も寄せられています。

少人数の職場に勤務する「静かに過ごしたい」さんは、「上司がいない時の雑談が多く困っています」と投稿しました。「一度雑談が始まると、日によって違いますが、10分から30分ほど話し続けていて、その内容は主に家庭のこと、他部署の人の批評など」。話し声や雑談の内容が気になってしまい、仕事に集中できないそうです。

「上司の雑談が苦手」と訴える投稿を寄せたのは、20代の「もん」さん。「気を遣って話しかけてくださっているのかなとも思うのですが、こちらの忙しさなどお構いなしに、長尺で話してきます」とこぼします。「ゴルフをしない私に、延々とスイングの仕方を説明してきたときに、『すみません、今忙しくて』と言ったところ、『コミュニケーションの取れないやつだ』と言われてしまいました」と嘆いています。

雑談の3つのメリット

職場のコミュニケーションを改善する支援を行っている沢渡さんは、雑談について次の三つのメリットを挙げます。

〈1〉相互理解が深まり、ヘルプシーキングがしやすくなる

〈2〉問題・課題解決や、新たなアイデアが創出されやすい

〈3〉ガバナンスの向上、コンプライアンスリスクの低減で、「ヒヤリ・ハット」を防ぐ

沢渡さんによると、「ヘルプシーキング」とは、周囲に援助や支援を求める行動や、それらを受け止める行動を指します。テレワークなどで孤立しがちな社員を支える新たなスキルとして注目されているそうです

テレワークでは、悩みや課題を1人で抱え込みやすい傾向があります。仕事の上で何か問題があっても、「おおげさにしたくない」と、上司や同僚に切り出すのをためらってしまうこともあります。共働き世帯が増えた今、「子供が熱を出して、ちょっと仕事を代わってほしい」といった家庭の事情を気軽に言い出せる環境や雰囲気が求められています。

雑談が日常的にできる環境であれば、ちょっとした課題やトラブルを言い出しやすくなるため、問題が深刻化する前に共有化でき、解決に向けた対応を打つことができます。雑談の最中に生まれた思いつきでも、事業につながるアイデアに発展する可能性があります。

また、「なんだか気になる」「ちょっとおかしい」といった不確かな違和感を抱いたとき、それをためらわずに口に出せる雰囲気があれば、重大な問題につながりかねない「ヒヤリ・ハット」を減らし、問題の発生を防ぐ手立てになります。企業や組織のリスク管理やコンプライアンス維持にも有効です。うるさくて仕事の邪魔…なのに職場で雑談が必要とされるのはなぜ?

雑談ができる職場の3条件

もっとも、雑談には「時間の無駄」「仕事に集中できない」などの否定的な見方があるのも事実。沢渡さんは、職場の雑談には(1)仕事にまったく関係のないプライベートな世間話(2)仕事に間接的に関係する話題――の二つがあるといいます。チームや組織のメンバーや特性に応じて、ふさわしい話題を見極める必要があります。そして、職場で雑談が受け入れられる要件として三つのポイントを指摘します。

【1】リーダーの自己開示

組織のリーダーやマネジャーが率先して自己開示をします。「週末、何をしていた?」「どこの出身?」といった内容は、プライバシーに踏み込んでいると嫌がる人もいます。リーダー自ら「昨日、家族で登山をしたら・・・・・・」などと開示することで、メンバーが話しやすくなります。

ただし、メンバーの顔ぶれを見て、プライベートな内容は控えたほうがいいと判断したら、仕事に関係した内容について、自らの課題、弱み、悩みを打ち明けることを勧めます。「取引先からこんな相談を受けている。いいヒントはないか?」「最近の流行やトレンドに疎くて困っている。人気の歌手やドラマを教えてほしい」「オンラインのミーティングが苦手なんだ」など、何かしら仕事に関係する話であれば受け入れられやすく、そこから雑談しやすい関係性が生まれます。

【2】雑談が生まれやすい「場」

何げない雑談を生まれやすくするためには、「わざわざ」ではなく「ついで」に雑談を挟んでみましょう。わざわざメールで時間や場所を予約して行う雑談は、ぎこちなくなり、抵抗感を持たれることも。

例えば、普段行っているオンライン定例会議の「ついで」に、最初や最後の5分を雑談の場とすれば、「わざわざ」雑談の場を設けるよりもハードルが下がります。定期的に11でミーティングをする機会があるなら、「ついで」に最初の10分を雑談の場としてみます。

 【3】雑談が生まれやすい「きっかけ」

「きっかけ」は「テーマ」や「ネタ」と言い換えることができます。チームが抱えている課題や問題に関する話題であれば、共通のテーマとして話しやすいでしょう。また、新しいマーケティングの手法を取り入れるなどのアイデアを披露しあえば、チーム共通の成長につながる話題として歓迎されます。

チームや組織のメンバーが、同じ本やニュース記事を読んで雑談のネタにする例もあります。本や記事を使うことで、役職や立場に関係なく意見や感想を述べることができます。オンラインミーティングの際には、背景などを工夫することでちょっとした雑談を生むきっかけになります。

変化する「職場の雑談」の意義

沢渡さんは「職場の雑談の意義は時代によって変化します。企業や組織に家族のような一体感を求める時代であれば、コミュニケーションも気合や根性、ノリで通用しました。今は、人材の流動性が高く、所属メンバーの顔ぶれは変化していきます。企業単独、チーム単独、個人単独では解決できない課題も増えつつあります。困っているときに、誰かの支援を求めたり、援助の手を差し伸べたりしやすい仕組みが必要です。そのために、職場の雑談も仕事の一つと考えるマインドチェンジが求められます」とアドバイスしています。

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)

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沢渡 あまね (さわたり・あまね)
あまねキャリア工房代表

NOKIOO顧問、なないろのはな取締役、浜松ワークスタイルLab所長 、エイトレッド顧問。作家、コミュニケーション改善士。著書に『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』『職場の問題地図』ほか多数。

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