「テレワーク難しい」出勤者増える背景に在宅勤務させない上司

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で、企業などはテレワークの徹底による「出勤者の7割削減」を求められています。昨年4月の緊急事態宣言以降、大手企業を中心にテレワークの導入が広がったものの、生産性の低下などを理由に取りやめた企業もあります。在宅勤務を厳しく監視する上司への不満で、「テレワーク難しい。在宅勤務やめる」という声も。テレワークの定着が難しい企業社会の実態が浮かび上がります。

会議のためだけに全員出社

IT企業に勤める神奈川県の女性(45)は、昨年4月の緊急事態宣言からテレワークを続けています。出社は原則禁止という徹底ぶり。通勤の煩わしさから解放されたメリットがある一方、「学校から帰宅した子供に声をかけられ、業務を中断してしまうこともある」と、仕事がはかどらない苦労を語ります。夫も在宅勤務の日があるため、「夫のオンライン会議、子供の塾のオンライン授業、私の取引先とのオンライン会合が重なってしまうと、家の中で場所の取り合いになります」と話します。

昨年3月からテレワークが導入された都内の大手製鉄会社に勤務する女性(28)は、「突然、テレワークが始まって戸惑った社員が多かったと思う」と振り返ります。テレワークが導入されたばかりの頃は、「顔を合わせないと、話が進まない」というテレワークさせない上司がいて、会議のためだけにメンバー全員が出社することもありました。

最近でも、リモート会議の準備に手間取ったり、メンバーの招待漏れがあったりし、業務に支障が生じています。「いつになったら、ちゃんとしたテレワークができるようになるのだろう」と女性は漏らします。

緊急事態宣言で出勤者7割削減が難しい事情
写真はイメージです

「テレワークやめた。もう二度とやりたくない」

東京商工会議所が昨年9~10月に行った調査では、テレワーク経験のある都内企業788社のうち、約3割にあたる232社が「現在は取りやめている」と回答しました。取りやめた理由(複数回答)は、「生産性の低下」(46%)や「機器やネットワークの整備が進まない」(40%)が多くを占め、「セキュリティー面の不安」や「オンラインでは業務が困難」という声もありました。

「テレワークはやめました。もう二度とやりたくない」。都内の事務機器メーカーの営業職の女性(27)は、テレワークについて不満を口にします。昨年4月にテレワークが導入されると、上司からパソコンのカメラを常時中継するように指示がありました。在宅勤務で仕事をしている様子を、ずっと監視されている状況だったそうです。「家にいれば仕事をさぼるに決まっているという考えの上司なので、しばらくして『テレワークやめます。これから毎日出社します』と申し出たら、喜んで承諾してくれました」と呆れた様子です。

上司の機嫌をうかがって出社する社員

ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員の金明中さんは、「政府は出勤者数の7割削減を目標に掲げていますが、簡単ではありません。会社にも働く人の側にも意識改革が必要です」と指摘します。

金さんはその理由として、特定の業務を1人ではなくグループで担当するために、コミュニケーションが頻繁に求められる日本企業ならではの働き方があるとしています。実際は、在宅勤務ができる業務なのに、「上司の機嫌をうかがって出社する社員がいれば、部下の働きぶりを目の前で確認しないと不安だと思う上司もいるのが実情」と言います。

「テレワークを上手に活用すれば、通勤時間が短縮され、育児や介護などとの両立がしやすく、働く人の満足度が高くなるメリットがあります。テレワークを定着させるには、会社と社員の信頼関係がカギとなります」と金さんは強調しています。

(メディア局編集部)

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