白目むくほど大変な子育てをマンガに 心理士と二足のわらじ

子育て生活の苦労や悩みをユーモアあふれるマンガに描いた「脱力系育児マンガ 日々白目むいてます」(SBクリエイティブ)が、このほど出版されました。著者の白目みさえさんは、臨床心理士として病院の精神科に勤務しながら、幼い年子の姉妹を育てるお母さん。2年ほど前、自らの体験をマンガにしてインスタグラムで公開し始めたところ、同じく育児中の女性たちからの支持を集め、書籍化が実現しました。白目さんに、マンガに込めた思いなどを聞きました。

育児中の女性たちから共感の声

早朝5時、みさえさんが眠っている枕元で「かくれんぼしよ」と声をかけてきたり、店のレジで会計の順番が回ってくる直前に「おしっこ」と告げたり、「水筒持っていきや!」と何度も注意したのに、結局玄関に水筒を置いたまま登校したり。そんな思いもよらない娘たちの言動や、子煩悩だけれど「3人目の子ども」のような夫の振る舞いに、つい白目をむいてしまうみさえさん。本書には、子育て経験のある女性なら思わずニヤリとさせられるようなエピソードの数々が収められています。

「インスタで見てくださった方から、『私だけじゃなかったんだ』というコメントをいただいて、さらにそのコメントを見た方から共感のコメントをいただく。そうやって共感の輪がどんどん広がっていったのが、うれしかったですね。心理士として患者さんと向き合う時も、共感が一番大事だと言われているので」。みさえさんはそう話します。

とりわけ反響の大きかったのが、就寝時のあるエピソード。「娘を寝かしつける時、私の方が疲れてついウトウトしていると、娘が急に『お茶くださーい!』って(笑)。『夜中にお茶を飲みたがるのは、うちの子だけかな』と思っていたのですが、『わかる!』という声が相次いだんです」

「脱力系育児マンガ 日々白目むいてます」より

火の通りを確かめるために割ったせいで形が崩れたハンバーグ、傷んだミニトマト、芯ばかりのサニーレタス――。家族の食事の時、みさえさんのお皿の上には、いつもそのような“不良品”ばかりがのっています。「自分は不良品で構わないから、家族には見た目もきれいでおいしいお料理を食べてもらいたい。そんな愛情表現の一つで、このエピソードにもたくさんの共感の声をいただきました。一方で、『私だって丸い形をしたハンバーグが食べたい』といった意見もかなりありました。お母さんたちは皆、相反する気持ちを抱えながら生きているんだなと(笑)」

心理士でも子育てはうまくできひん

友人の勧めで始めたインスタのマンガは評判を呼び、今では育児情報サイトなど4媒体で連載を持つまでに。臨床心理士とマンガ家の二足のわらじをはく多忙な毎日を送っています。「書籍化の作業もなかなか時間が取れなくて、出版社の方にはご迷惑をかけてしまいました。最近ようやく、子供たちが夜の8時半か9時ごろには寝てくれるようになったので、夜間にマンガを描く時間をしっかり確保できるようになりました」

作中でみさえさんが白目をむく表情は、国民的少女漫画「ガラスの仮面」の作風を連想させます。「子供の頃からマンガを読むのも描くのも大好きでした。特に『ガラスの仮面』はずっと読み続けていて、マンガを描く時はいつも傍らに置いています」

発達心理学などを学んできたみさえさんですが、実際の子育てでは、学んだことを超えるような予想外の出来事が次々と起こるといいます。「学んだことと、子育ての現場で起きることは全然違うと実感しています。子育てで悩むお母さんたちに『心理士でも子育てはうまくできひんよ。大変なのはあなた一人じゃないよ』というメッセージを伝えたかったのも、マンガを描いた理由の一つです」

「心の広い人間になりたい」と思っていたのに、そんな理想がすべて覆されてしまうのが子育て。「私って、こんなに怒る人間だったっけ?」と自分でも戸惑うほど、よく娘たちを叱りつけてしまうといいます。「それでも娘たちは『ママ、大好き』と言って私を許してくれるんです。すると私も『ママ、言い過ぎたね。ごめんね』と娘たちに言える。人を許すことの大切さを娘たちから学んだ気がします」

現在、長女は小学1年生で、次女は保育園の年中組。「小学校に上がったら、もう描くネタがなくなるんじゃないかと思っていたけれど、まだまだ毎日、ネタはあります(笑)。これからも年代によって白目をむくようなシーンはいろいろあると思うので、娘たちに『もう描かないで!』と怒られるまでは描き続けていきたいです」

(取材/読売新聞メディア局 田中昌義)

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