「あなたの上司は“理想の上司”ですか?」
こんな質問をされたら、あなたはどう答えますか。
旅行会社に勤務する知り合いのA子さん(28歳)は「理想とは言い切れません。だけど、『なんだかんだとダメだな~』と思う反面、『スゴイな』と思える一面もありますよ」と打ち明けてくれました。
理想はあくまでも理想。目の前の上司が100パーセント、理想の上司なんてありえないのが現実です。自分が期待していた上司像と違うからといって、一方的に“ダメ上司”と決めつけ、尊敬のかけらも持ち合わせないのはフェアではありません。なぜなら、そんな自分だって、上司にとっての“理想の部下”とは言えないからです。
部下からのパワハラ?
読売新聞オンラインに、「部下から罵倒 公務災害」という見出しの記事がありました。
2014年12月に、静岡市の50歳代の男性職員が自殺したのは、長時間労働と、部下から罵倒されてうつ病を発症したことが原因だったとして、地方公務員災害補償基金静岡市支部が公務災害に認定していたことが分かったという内容です。この男性職員は、職場で部下から「お前の言っていることがわからない」「お願いしましたよね。学習してください」などと罵倒されることが常態化しており、同支部は「異常ともいえる職場環境」としています。
「パワハラ」は通常、職場内で権力を持つ上司が部下に対して業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為とされています。ところが、今回のケースは部下が上司に対してハラスメント的な発言を繰り返し、上司の心身の健康をむしばんでいったようです。
上司のメンツをつぶしたら?

上司も人間。完璧な人なんていません。なのに、自分の正論を言い放ち、上司の痛いところをつき、勝ち誇ったような気分に浸ってしまう――。実は、私にもありました。
外銀に勤務していた30代前半の頃のことです。上司は、私と同世代の男性。クラスメートなら絶対に仲良くなれないタイプの人でした。感情の起伏が激しく、公私の区別があやふや、窮屈だと言ってワイシャツの両手首のボタンを留めないだらしない着こなし……。私にとってストレスを感じる要素にあふれた人でした。
ある日、上司が私の同僚に対し、感情的になってキツイ言葉を放ちました。そのせいで、同僚はすっかり萎縮してしまいました。
「上司たるもの、部下の気持ちに寄り添うべきなんじゃないですか!」。私は、まるで学級委員長に意見するみたいに食ってかかりました。すっきりしたのは、ほんの数分間。その後、「ちょっと言い過ぎたかも……」と反省した私を、悪い空気が包んでいきました。
翌朝、上司は出社時間を過ぎても現れません。ほどなく私に電話があり、「昨夜、関下さんに言われた言葉で眠れなかった。これから会社に行くから」と沈んだ様子でした。出社した上司に、私は速攻で頭を下げました。「上司に対して使う言葉ではありませんでした。申し訳ありませんでした」
上司は未来予想図を描くキーパーソン

上司は、あなたの未来予想図を描くキーパーソンであることを忘れてはいけません。
キャリアのドアを開けてくれるのは上司。あなたの仕事の評価をする立場の上司を嫌な気分にさせても、何の得にもなりません。ましてや、上司を傷つけるような発言はNGです。
上司が何に傷つくかは、人によって違います。私のかつての上司のように「昨夜眠れなかった」と正直に心を開いてくれる人はそうはいません。上司には上司なりのプライドがあるからです。「上司なのだから、部下の言うことを何でも受け止めてくれるはず」などと思うのは危険なことだと心得ましょう。
上司は、経験と実績を評価され、今のポジションに就いています。上司の持つ人脈には、あなたの未来を左右する宝が隠れているかもしれません。ウマが合わない、生理的に受け付けない、なんとなくイヤ……そんな上司であっても、常に尊敬の念を持ちましょう。上司を尊敬する気持ちは言葉や態度に直結します。人として忘れてはいけない心がけです。
「上司の嫌いなところ」をかき集め、イヤイヤ接するより、自分にとってプラスになる情報を上司から引き出す力をせっせと磨くことにエネルギーを使ったほうが、自分のためなのです。
上司の心配事やストレスを軽くするのが部下の仕事!