子育てをしながら働く女性の中には、仕事から帰って晩ご飯を用意するのは大変だからと、「作りおき」のおかずを準備し、そのために休日をつぶしてしまう人も少なくないはず。料理研究家の上田淳子さんは、自身の経験を生かして、事前に仕込んですぐに調理に取りかかれる料理を集めたレシピ本「帰りが遅くても かんたん仕込みですぐごはん」(世界文化社)を出版しました。上田さんに、知っておくと助かる「仕込みごはん」について聞きました。
自分で作る「ミールキット」
双子の大学生の息子の母親でもある上田さん。子供たちが小さかった頃は、保育園に預けることができず、仕事と子育て、家事で忙しい日々を送っていたそうです。
そこで、上田さんが編み出したのが、「仕込みごはん」。前日夜や朝のうちに、野菜を切ったり、肉に下味をつけたりして準備をしておき、帰宅してから調理をする方法です。
「自分で作る『ミールキット』のようなもの。メインのおかずを決めておけば、副菜は買ってきたお総菜で済ませても罪悪感はありません。温かくておいしい出来立てのものをたくさん食べられるので、家族も自分も幸せな気持ちになれるんです」と上田さん。料理を勉強にたとえ、「勉強は予習をしておくと後が楽ですよね。料理も同じ。帰ってから、一から作るのは大変です。準備をしておくことで『今日はアレがある』と心の余裕もできます」とも話します。

仕込みの割合はその日の忙しさで決める
仕込みごはんのコツは、「どこまで仕込んでおくか」を決めること。仕込み時間に余裕のある時は「仕込み8割、仕上げ2割」くらいで、野菜や肉を切って味付けをしておき、後は炒めるだけといったように簡単に。仕込みの時間があまりとれない時は、「煮る」など仕上げに少し時間がかかるメニューにするといいそうです。「仕事が忙しいとか、子供の用事があるなど、その日の予定に合わせて決めるとスムーズにできますよ」

料理の基本も復習
どんなに簡単にできても、せっかくならおいしいものを作りたい。「かんたん仕込みですぐごはん」では、フライパンで鶏肉を焼く際、「皮目を下にしてぴたっと貼り付け、中火にかけてパチパチと音がしたら、ふたをして弱めの中火にして7分を目安に焼く。外側から7割程度白っぽくなるのが目安」といったように、つい適当になりがちな焼き方について、料理家の視点から細かくアドバイスが書き込んであります。「味付けの好みや調理器具との相性もあるので、まずは3回作ってみてください。早く、おいしくできるようになります」と教えてくれました。
仕込みごはんは、冷蔵庫や冷凍庫で保存でき、保存期間の目安も記載されているので、「急な予定変更で外食をしたら、翌日に回せば大丈夫」なのもうれしいポイントです。

自分ばかり頑張らない
毎日の料理は、お母さんにばかり負担がかかりがちですが、仕込みごはんなら、夫や子供に託せるというメリットもあります。「バットに材料や調味料をまとめておけば、『今日は遅くなるから冷蔵庫にあるのを炒めて食べて』とお願いしやすい」と上田さん。
実際、子供たちも今では、上田さんが用意しておいた仕込みごはんで料理をするようになったそうです。
「作りおき」より「仕込み」を頑張る

「作りおきおかず」で検索すると、白い容器に詰められた作りおきの煮物や常備菜などの写真が、インスタグラムなどにたくさんアップされているのが分かります。そうした写真を見ていると、自分も思わず「作りおき」したくなりますが、「どんなに頑張っても、子供にとって作りおきは『冷蔵庫にある残り物』で人気がない。温め直してもなかなか箸が進まないことが多いんです」と上田さん。「作りおきを頑張るよりは、仕込みごはんをササッと作れるように頑張ってみて」と上田さんはアドバイスします。
作りおきは、時間を置くと味がなじんでおいしく食べられるきんぴらなどにするといいそう。
手抜きのコツ

「子供が中学生・高校生になると食べる量も増えるし、晩ご飯と一緒に翌日のお弁当のおかずを作るといったこともある。小さいお子さんがいる方は、その時に備えて、段取りよく作る方法を練習しておくといいですよ」と上田さん。「フルタイムの仕事をしながら、手作りの料理を用意するのは本当に大変。うまく手抜きをしながら、段取り上手になるコツを覚えてもらえたら」と話していました。
(取材・写真/山口千尋)