「やっと名前と顔が一致しました」
報告書への承認サインをしながら、財務部長が私に言った言葉です。私はびっくり! だって、財務部長は本社でも名を知らぬ者がいないくらい、優秀な上司だったのです。私は、子会社に出向中の経理担当者でしかありません。
「こんな偉い人が、なぜ、私の名を?」
それには、理由がありました。私が出向した子会社は、ある銀行のクレジットカード会社でした。本社へ定期的に提出する資料や書類がたくさんあり、出向者は私だけだったため、あらゆる資料にサインをしていたのです。そのため、財務部長は私の名前を頻繁に目にして覚えたというわけです。
意図的でなかったとはいえ、私の名前は、私の実力をはるかに上回る影響力を発揮したのです。
チャレンジでつかんだチャンス
子会社出向に当たっては、上司からチーム全員に打診がありました。“子会社に出向”というネガティブな響きに、同僚たちはそろって尻込みしました。その中で、私だけが「やります!」と迷わず手を挙げたのです。
その理由は単純でした。当時、私は経理部門の仕事を通して、やっと借方・貸方の仕訳ができるようになっていました。「出向して一つの小さな会社の経理全体を見ることで、財務諸表などから学ぶことが多いのではないか? これは私にとってチャンスかも!」とワクワクしたからです。
上司はだれも引き受けようとしない仕事を、私が引き受けたことにうれしそうでした。それまで衝突することが時々あり、あまりうまくいっていないと感じていた上司との関係が、少し好転したように感じました。
子会社の書類は、この上司がすべて目を通します。でも、最終的にサインをするのは私でした。一人歩きした私の名前が、財務部長の目に留まったわけです。
目の前の橋はとりあえず渡る!
私は子供の頃から、後先考えずに「面白いかも!」と感じたら、それに飛び込んでしまう無鉄砲さがありました。「石橋を叩いて渡るの」ではなく、「目の前に橋があったら、とりあえず渡ってみる」タイプです。慎重な人から見れば、向こう見ずで時々あきれられますが、これも性分。
渡ってみたら丈夫な橋ではなく、時々落ちてケガをすることがあります。だけど、自ら行動して感じた痛みなら、動かないでウジウジするよりマシだと思います。キズにはやがてカサブタができ、いつの日かきれいに治ってしまうからです。
チャンスは自分でつかみにいくもの。私は、そう思っています。
その後、本社に戻った私は、プロジェクト要員に声がかかるようになりました。経理の仕事に明るいことを認められたようです。英語力不足で、外国人も混じるチームでの仕事にはコミュニケーション上、苦労しましたが、プロジェクトから外されることはありませんでした。
仕事のやる気スイッチは人によって違う
私には、仕事のやる気スイッチが二つあります。一つは、上司や同僚に「よく頑張っているね!」と「認められること」。もう一つは、「失敗から学ぶこと」で「私、以前より少し成長したかも♪」と感じる瞬間です。

皆さんのやる気スイッチはどこにありますか?
仕事の達成感、昇進して仕事の責任範囲が広がること。あるいは、賃金、労働条件、職場の環境など、人によって様々でしょう。
やる気スイッチは、ライフスタイルの変化によっても変わっていくものです。要は、人と比べず、与えられた環境の中、いかに「面白がって」日々を生きていくかだと思います。
目の前の小さなチャンスを生かしていくと、世界はもっと広がるよ!
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